妻お龍が栗の渋皮煮を作るというので、取材を申し込みました。
【栗を買う】
栗は福知山市の三和町野菜市で買いました。丹波栗ながら500g300円という破格の安さ。厳選を加えられた栗ではないので、なかに虫食いも混じります。
普通は、Lサイズで1kg1200円、2Lサイズで1500円、3Lサイズで1800円といったところです。
三和町野菜市場には、500g200円の栗もあります。お小遣い稼ぎ目的の出品ですと、品質と価格は必ずしも直結しません。
昨秋は、和知の道の駅で、2Lサイズの栗を買いました(下の写真)。こちらはきちんとした商品目的に出荷されていますので、値段も標準的でした。栗の質もよくて、安心して買うことができます。
高い栗と安い栗。渋皮煮の観点からは次のような違いを挙げることができるそうです。
①大きさ・・・高いほうが大きい。大きいほうが全体を通じて作業しやすく、その結果として上手に煮上がる
②均一性・・・安い栗はひとパック中のサイズが不揃い。ひとつ鍋のなか、早く煮上がる栗と遅く煮上がる栗が生まれ、仕上がりのやわらかさも不均一になる
栗をケチらなかった昨年は予想以上にうまく仕上がりました。「今年は安い栗でやってみるよ」とお龍。
【鬼皮をむく】
栗の外側の皮(鬼皮)をむきやすくするために、熱湯で鬼皮をふやかし中。
いつ鬼皮をむき始めるの?
そうねえ、指を入れてみて、ちょっとぬるめのお風呂かなという温度ね。そこまで冷めるのを待ってるだけ。
妻の曖昧な返答に満足せぬ夫。お龍が鬼皮をむき始めたときの湯温は40度でした。
こういう専用器具もあるんだけどね、これでいまやってみたら、渋皮がはがれちゃった。渋皮がはがれるのはダメなの。はげたところから煮くずれるからね。この専用器具を使うときは、ふやかさずにむくってことじゃないかしらね。
下の写真、お龍が包丁でむき終えた栗です。
どうして渋皮煮か、知ってる?渋皮をきちんとつけたままにして煮くずれを起こさせないんだって。だから、むくときにいちばん気を遣うのがそこなのよ。
【重曹で煮る】
鬼皮をむき終えた栗を重曹で煮ます。渋皮の繊維質をやわらかくするため、そして、渋みをとるためだそうです。
栗が頭を出さない水の量にするのよ。ヒタヒタじゃなくって、それよりも高い線まで水を入れるの。
栗を空気にさらさないことがかなり重要な様子です。
お龍が学んだ重曹の量はかなり多め。栗1kgに対して大匙2杯。ところが、インターネットでレシピを調べますと、1kgに対して大匙1杯、あるいはそれよりも少量を推奨する記載ばかりです。
重曹は諸刃の刃。渋皮をツルツルにする効用の反面、栗の風味を殺す不都合もあります。
お龍さん、そのあたりはいかがでしょうか?
さあねえ、どうかしらねえ・・・去年も今日と同じ量でやったよ。おいしかったでしょ?それなら少し少なめにするわ。大匙1杯半でやってみるわ。
湯が沸騰したら火を弱め、アクをとりながら15分間煮ます。お湯はこんな色になります。
【重曹後の水洗い】
火から上げた栗をいったんザルにとり、次に水にさらします。重曹やアクが付着しているからだそうです。
【渋皮をきれいにする】
鬼皮むいたり筋とったり、渋皮煮は面倒くさいの。でも、それが楽しいの。これから硬い筋や厚い渋皮をきれいに取り除くからね。タワシを使うって書いてあったけど、タワシだと渋皮がはがれちゃう。それはやりすぎね。私は、歯ブラシでていねいにやるのが好きよ。
この真剣なまなざしをごらんください。老眼鏡まで持ち出してきました。こすりすぎて渋皮の一部が破れたら失敗だそうです。
それでも失敗します。果肉が顔を見せてしまいました。
栗をなるべく空気にさらさない。歯ブラシ作業の済んだ栗を水のなかに入れておきます。
【再び重曹で煮る】
繊維質を取り除き終えた栗を、また重曹で煮ます。湯は再び黒く変わり、アクもまだまだ出ます。
沸騰後に火を弱めアクをとりながら15分間煮る。これは1回目とかわりありません。
2回目の重曹処理後の栗は、水洗いだけです。歯ブラシ作業がありません。
【下ごしらえの仕上げ】
栗を煮るのはこれが3度目。下ごしらえの仕上げです。重曹なし。水だけで栗を煮ます。洗濯でいえばすすぎです。
沸騰したら火を弱めアクをとりながら、今度は10分間煮ます。
その後にまた水洗いします。
【砂糖で煮る】
いよいよ最後のステップ。砂糖で煮ます。
やはりこのときも、栗全体をしっかりカバーする高さまで水を入れるそうです。
栗1kgに対して砂糖を800gなんだって。私はきび糖ね。甘さがちょうどいいのと、自然の甘さだから。三温糖でやるほうが普通なんだけどね。
800gと言ったくせに、お龍は砂糖の袋をそのまま傾け、目分量で鍋に放り込んでしまいました。
レシピによっては、栗1kgに対して砂糖500gというケースもあります。栗の味も前に出てくるようにと、甘みを抑えるやり方です。
お龍さん、火加減はどんなもんですか?
弱火だよ。これくらい。
15分間を目安に煮ます。その後、火を止めます。
【煮上がった】
終わったよ、ほら。
煮汁にも栗にもツヤが生まれました。さめるのを待ちます。冷えていく間に、煮汁の味が栗にしみこみます。
鍋とふたの間にキッチンペーパーを挟むお龍。
鍋の裏側から水滴がぽたぽたと落ちるじゃない。そしたら煮汁が薄まっちゃうから、もったいないでしょ。
どうなんでしょうか・・・煮汁から上がった水蒸気がふたの裏側で水滴になる。それが煮汁に落ちる。ということは、プラマイゼロやないでしょうか?
そうだね、お父さんのいうとおりだね。水だけでいえばね。でも、ちがうのよ。蒸発して煮汁が濃くなるでしょ。それがしみこんでいくでしょ。煮汁もとろ~んとしてくるでしょ。水がポタポタ落ちたら、思ったとおりに濃くなってくれないから。
【8時間後---去年より不出来か?】
ちょっと味見してみる?
<去年と違う点>
①栗そのものの甘さが強い・・・今年は栗が豊作だから?
②渋皮が柔らかい・・・歯ごたえ不足。重曹の入れすぎ?
③煮汁が甘さだけ・・・渋皮の渋みが煮汁に出ていない
去年は、ほのかなえぐ味がなんともいえず、差し上げた方々にも大好評でした。
今年はクセがなさすぎませんか?お龍さん、自己評価はいかがでしょうか?
ひと晩寝かしてみないとなんともいえないけどね。また栗を買ってきて。もう一度やってみるわ。
1回に作る量が違えばなにかと違うとお龍が言います。去年は2kgを一度にやりましたが、今年は1kgでした。
お龍のトライアル&エラーはまだ続きます。
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