2012-10-23

東尋坊の夕陽(福井県あわら市) 手なずけられた断崖

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 福井県あわら市で夕方の仕事がありました。自殺目的ではなくて、きれいな夕陽を期待して寄ってみました。


夕焼け待ちの人たち

 北陸地方の場合、外海に向かう海岸線ならば、どこからでも夕陽を見ることができます。けれども、人工物が視界に入らないところを見つけるとなりますと、ある程度の不便を覚悟です。
 その点、東尋坊ですと、手軽にたどりつけて、しかも視界には大海原だけという好ロケーションです。
 夕陽を待つ観光客も少なくありません。
 これだけの人数があれだけシャッターを押しますと、なにせ自殺の名所ですから、心霊写真の1枚や2枚、写りますよねえ。


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 お手軽に来られる東尋坊ですが、断崖絶壁は本格派です。
 火曜サスペンスのロケ地のようです。

 60歳まであとひと月を切って、身体能力がうんと低下してきました。自分で自分が信じられません。何かの拍子に足を運び間違えて、「おっとっとっと」です。わずか一尺ほど間違いすぎただけで落ちてしまいます。ブログも命がけですね。

 断崖をのぞきこむカップルがいました。それにつられて隣へ行ってみますと、まっさかさまに落ち込む眺めでした。赤のほうが男に思えるでしょうが、実は白のほう、腰の引けてるほうが男です。


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水平線に雲

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 残念なことに、雲の量が多めで、しかも水平線には雲がかかっています。グラデーション豊かな夕焼けを望むことができませんでした。
 この写真以上には光も色彩も輝きを増すことなく、このまま暗くなってしまいました。

 日本海側を低気圧が進み、明日は全国的に大荒れの天候となるでしょう。天気予報がそう伝えていました。昼間の秋晴れにそぐわないこの夕暮れは、低気圧の影響がすでに現われていたのかもしれません。

 この頃には観光客が次第に去り始めました。近くにはあわら温泉、三国温泉が控えています。ガイドさんに先導された列をみると、旅館の夕ご飯に間に合わせる必要があるのだと思えました。


いわばサーカスの猛獣か


 丹後半島に慣れた感覚ですと、東尋坊の断崖に至るまでの地形がなにやら不思議でなりません。

 丹後半島は山が海に落ち込む断崖絶壁です。
 すぐ前が海、すぐ後が山。極端な言い方をすれば、道というのは、断崖絶壁の地形に巻きつけられた細紐みたいな存在です。居眠り運転をしたら、山側の側溝に脱輪するか、さもなくば海側に転げ落ちるかです。

 ところが、高速インターから東尋坊までの道のりは、きわめて平坦な台地を走り抜ける快適なドライブです。
 道の両側には、果樹園や田んぼ、あるいは農場が広がります。大きな温泉街もあります。そんなのどかな景観のなかを15kmほど、20分~30分走ります。
 カーナビがなければ、どこかで道を間違えたと思うくらいです。

 丹後で言いますと、網野から久美浜にかけての砂丘地帯を走っているような景色です。この眺めの先に長い砂浜があると言われればすぐ納得できます。
 けれども、実際には台地がストンと切れてすぐ海です。ストンと切れるといいながらも、平坦な台地状地形は海のすぐ近くまで保たれれていて、駐車場も土産物店も揃っています。
 天橋立に来たみたいで実は経が岬だったといえばいいでしょうか。

 観光地化できる条件に恵まれていたのだなと思いました。丹後の断崖絶壁と比べたとき、余計にそう思います。

 丹後半島の海岸線は、世界ジオパークに認定されるくらいの希少性と規模を有します。海からのそびえ立ち方が違う。東尋坊で目がくらむ人が丹後に来たら、目がくらむだけでは済みません。オシッコもちびります。

 丹後半島を含む山陰海岸ジオパークは「地形・地質の博物館」と呼ばれ、多彩な海岸地形が日本海誕生以来の地質・地層の変化をよく伝えるといわれています。
 それだけに険しい地形も多く含まれ、人を容易に寄せ付けない海岸線でもあります。
 東尋坊は間違ったら落ちそうですが、丹後は本当に落ちます。

 金沢泊でしたので、東尋坊から加賀インターへ走りました。
 北潟湖に沿った道を走ること約10分。やがて、蓮如が浄土真宗布教の拠点とした吉崎御坊を通過します。そこから先が石川県です。

 屹立する海岸線の鋭さと、その背後に見る暮らしの穏やかさ。
 その食い違いに、帰り道ですらもまだ戸惑い気味でした。
 もう一度、丹後を思い出して、東尋坊はよく手なずけられた猛獣、いわばサーカスみたいなもんだと思いました。

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