2014-02-04

細川・小泉連合は勝てるのか 江戸の戦に近江でヒヤヒヤ

46716b8b8c4d5b63681a36776c541dab画像はIWJ Independent Web Journalから転載しました

 マスコミ各社が細川劣勢を伝えています。自民・公明が応援する舛添要一候補との大きな差を詰められそうにない流れです。
 週刊現代は、小泉・細川連合には脱原発路線の新党(党首に小泉進次郎)を立ち上げる腹づもりがあり、都知事選はその長期戦の始まりにすぎないといいます。
 選挙期間は今週一杯。崖っぷちの細川陣営が新党立ち上げを世間に発表するサプライズがあるかもしれない、と週刊現代は分析しています。そうなると、世間の盛り上がりに遅れまいとする都民心理が一気に細川支持に傾きますし、もうひとりの脱原発候補である宇都宮建児氏との一本化が急遽実現する可能性もあります。
 これが、”軍師純一郎”の腹に秘めた浮動票獲得作戦だというのですが・・・

吉永小百合でも劣勢挽回ならずか

吉永小百合_細川画像は細川さんの公式サイトから転載しました

 細川さんの公式ホームページには、細川支持を表明している有名人の名前と顔写真、そして応援メッセージが掲載されています。
 支持者の共通事項は瀬戸内寂徳さんやドナルド・キーンさんなど文化人、そして、なかにし礼さんや倉本聰さんなど表現畑の人たち。細川さんらしい顔ぶれです。
参考URL=http://tokyo-tonosama.com/

 吉永小百合さんの支持表明を、日刊ゲンダイは自民真っ青! 細川陣営に強力「助っ人」吉永小百合が“参戦”と報じ、「キワモノ芸人ならともかく、スポンサーなどのしがらみが多い正統派が選挙で支持する候補を明確にするのは異例です。裏を返せば、それだけ今の状況に強い危機感を抱いているのでしょう」という放送記者のコメントを紹介しています。しかし、吉永小百合さんが本気になっても、細川さんは依然として劣勢です。

 いっそのこと、吉永小百合さんが出馬したらよかったんですよね。

 細川さんの応援に回った著名人たちは、「いまが天下分け目」という危機感を揃って表明しています。

 3・11福島第一原発事故で原発の安全性神話が崩れ去ったというのに、安倍政権は再び同じ道を歩もうとしています。自民党の一強多弱体制が磐石のものになったいま、国政選挙は2年後までない見通しです。安倍政権にインパクトのある形でノーをつきつける機会は、この都知事選を除いて他にありませんーーーというのは私の思いですが、細川さんを支持する著名人たちが言いたいのもよく似たことだと思います。

 かつて国の最高権力者だった二人ですよ。野に下りたその二人が、いまの最高権力者に戦いを挑んでます。
 小泉純一郎は、自民党を離党しないで自民党に刃向かっています。こういう選挙を見たことがありません。対戦相手は小泉さんを師と仰いできた安倍晋三。これって、弟子に譲ったその道場へ師範が道場破りに乗り込むみたいなことです。

 ただ、海外メディアの小泉評のなかには、政界に復帰する意向もないのに外から声高に訴えて、オッサンどないするつもりや?といぶかしがる声もあります。私もそう思いますし、場が都知事選であるだけに、いまいち実効性の点では迫力に欠けます。

勝てると思ってた

 私は細川さんが勝つと思ってました。対抗馬が舛添要一候補なら、きわどい接戦にはなっても最後は細川と踏んでました。投票率55%なら、細川250万票、舛添230万票という予測がもっぱらでした。
 いや、まだ負けが決まったわけではありません。日曜日の銀座歩行者天国の街頭演説は、舛添、細川ともに空前の人の数だったそうです。その勢いで女性の投票率が上がれば細川有利という見方もされています。舛添さんの場合、女性の敵だと思われてますから。

 ただ、細川さんが、予測以上にオジンくさいのを見たとき、ちょっと不安でした。甘利経済再生相に「殿、ご乱心」というコメントをもらいながら、それを逆手にとれるほど「殿」ではありません。
 街頭演説でも、あんな黒い防寒着はよくないです。整形外科通いの患者さんじゃないんだから。殿なら殿らしく、高いスーツ着てその上にツイードかカシミヤのコートでキメないと。
 都知事選はイメージ選挙ですからね。
 
 宇都宮健児候補が、細川陣営との一本化を受けませんでした。これが痛かった。あの時点で「あかんかな?」と確信めいたものが生まれました。

 宇都宮さんは、前回の選挙でさえもーーー「さえも」というのは、猪瀬直樹前知事が430万票という前代未聞の圧勝だったからですがーーー100万票を獲得しています。つまり、最低でも100万人の支持母体を持っているわけで、もし一本化がすんなりいっていれば、細川さんにこの100万票が流れたことになります。

 とはいえ、この一本化構想は元から絵に描いた餅でした。
 いくら脱原発で一致していても、宇都宮さんと小泉さんは主義主張においてまったく相容れない者どうしです。大きな隔たりがあります。一本化なんて、無理な話でした。

 <一本化 → 宇都宮さんが身を退く → 知事になれない>
 <一本化しない → 宇都宮さんは落選 → 知事になれない>

 そういうことですから、宇都宮さんはどっちにしても知事になれない。それなら宇都宮さん、せめて脱原発の主張だけでも生かすために身を退いてくれないかと、言えないこともありません。けれども、憎き小泉への怒りを押し殺してでも犠牲になってくれという理屈ですから、やっぱりそれは甘すぎました。

 脱原発が二人もいて、都政に直接関わってくる政策面では大同小異。票が割れます。となると、東京の人はさめてますから、「それって、どちらに入れても死に票ってことでしょ。だったらさあ、家で寝てても同じってことじゃないの」とかなんとか言っちゃってさあ。
 都知事選を介した小泉VS安倍の一騎打ちであったほうが無党派層を楽しませる選挙になったはずです。無理だとわかって言うことですが、返す返すも、宇都宮候補との一本化失敗が響きました。
 なんのことない、「小泉純一郎」と書いた無効票がいっぱい生まれたりして。

 マスコミの自主規制も細川陣営には不利にはたらいていると思います。都知事選の応援演説については映像のみにとどめ音声は流さないという自主協定を、テレビ放送各社が結んだそうです。
 私はこちらのテレビしか見てませんから都知事選のニュース自体が少ないのですが、東京ではどうなってるんでしょうね。

 小泉節がニュースで流れないとなると、細川陣営にとっては宝の持ち腐れです。小泉さんがどんな演説をしてるのかなと、応援演説全文掲載の週刊ポストを買ってみたら、たしかにおもしろいし、そうだ!と言いたくなる中味でした。

 今夜、ニュースステーションが、安倍総理と小泉さんの応援演説を音声つきで流していました。比べるまでもなく、言葉の力がぜんぜん違います。今夜みたいに音声つきでサワリだけでも流れたら、票の行方は大いに違ってくると思います。

日本はエネルギー政策でもガラパゴス

 さて、安倍政権は、原発抜きではこれ以上の成長がないぞと国民を脅しています。誰しもカネの力には弱いですから、経済成長のためには原発のリスクもしかたないのかなと納得しがちです。

 この言い分を聞くたび、「アベノミクスの人参追って、いつの間にやら地獄行き」という気がします。もう原発をもたないでおこう、それでも成長していこうという導き方なら、夢があっていいんですけどね。アベノミクスの先にあるのが軍事国家というのでは、みんな揃ってわるい人間になろうと誘われてるみたいで嫌です。

 テレビにもよく出てくる古賀利明さんは、ビジネスとして判断しても原発じゃ成長できないと言っています。

 世界の代表的重電メーカーが将来の本命としているのは、再生可能エネルギーだそうです。というのも、原発はコストが高すぎて商品価値を正当化しにくいという事情がありますし、現時点の世界全体の発電量においても再生可能エネルギーが原発をはるかに上回っているからです。この現実を無視して経営は成り立ちません。

 再生可能エネルギーがこれからの主流とみなされ、世界銀行が原子力への投資は行わないと宣言している。これが世界情勢だというのに、安倍総理は時代遅れになった原発システムを他国に売り込もうとしている。いま舵取りを変えて再生可能エネルギーに投資しないことには永遠にエネルギー産業後進国になってしまう。

 古賀さんは、そのように日本の将来を憂いています。

脱原発とは構造改革の別名だったのか
 城南信用金庫理事長の吉原毅さんが、こんなことを書いていました。

 脱原発という言葉ばかりが独り歩きしていますが、その本質を知るには国鉄や郵政がなぜ民営化されたのかを考えればいい。政財官のトライアングルで腐敗した構造と、責任を取らず保身に凝り固まったエゴイストたちの組織にメスを入れてきたのが、これらの改革です。電力業界が正常なら、危険でコストの高い原発をまた動かそうという発想にはならないと思います。週刊現代2014年2月3日号)

 吉原さんが指摘するように、電力会社が裸一貫の自力本願経営なら、まずは原発のコストやリスクに目がいくはずです。あれだけの事故を目の当たりにして、どれだけ金があっても足りないことが分かったのですから、その損得勘定だけで自ずと原発離れが進むに違いありません。

 しかし、現実の姿はまったく違います。当事者の東電が柏崎刈羽原発再稼動を含む再建計画を出しているくらいで、何も懲りずに済んでしまっています。
 他の電力会社の目にも、あれだけの事故が起きても経営責任や株主責任はうやむやにしてもらえる、税金で助けてもらえる、何かあったら親方日の丸、それがはっきりしたことでしょう。

 つまり、民営化前の国鉄や郵政が利権だらけの腐敗構造であったように、原子力ムラといわれる政財官のトライアングルにもやはり利権が渦巻き、それが脱原発を遅らせている最大の要因だということになります。
 安倍内閣にとって脱原発は郵政改革よりも簡単だ、自民党内にも反原発の議員は多いし、野党がみんな原発に反対してるんだからと小泉さんは言ってましたが、たぶんこういうこと、すなわち原子力ムラをぶっ壊せということだったんですね。

 私は、小泉さんがいちばん伝えたいのは「晋三よ、真の改革を目指せ」だと思っています。いまの議席数なら、誰が総理をやっても、憲法修正みたいな大事案でさえもすんなり通って当たり前の環境です。日本を変えるとか言いながらおまえは数頼みの範囲でやれることしかやってないではないかと、小泉さんはそう投げかけたのでしょう。

 安倍晋三はビビっているのだと思います。原子力ムラの利害に反する行動は党内に多数の敵を生み出すと考えているのでしょう。反安倍勢力が集団的自衛権行使容認や憲法改正(改悪!)の壁になることをおそれているのでしょう。

 だんだんわかってきました。自分が脱原発を訴え続ける意義がますます明確になってきました。孫の聖太郎と理久斗に原発と戦争を好む日本を残したくなければ、やはりまず、原発ゼロからです。

 福島第一原発事故の直接被害を受けた南相馬市の市長選では、反原発の桜井勝延さんが当選しました。私みたいに頭で言ってる脱原発じゃない。かつては原発で町が潤い、いまは生活をズタズタにされた上での脱原発です。何を失うのか目の当たりにした人たちの選択です。重く受け止めなくてはなりません。

マスコミ支配はすでに始まっている
 こんな出来事が報道されていました。ご承知の方も少なくないでしょうが、原発の経済的不合理性を説こうとした教授がNHKから拒否されたという話題です。
 ちょっと長くなりますが、東京新聞の記事を転載します。


 NHKラジオ第一放送で三十日朝に放送する番組で、中北徹東洋大教授(62)が「経済学の視点からリスクをゼロにできるのは原発を止めること」などとコメントする予定だったことにNHK側が難色を示し、中北教授が出演を拒否したことが二十九日、分かった。NHK側は中北教授に「東京都知事選の最中は、原発問題はやめてほしい」と求めたという。

 この番組は平日午前五時から八時までの「ラジオあさいちばん」で、中北教授は「ビジネス展望」のコーナーでコメントする予定だった。

 中北教授の予定原稿はNHK側に二十九日午後に提出。原稿では「安全確保の対策や保険の費用など、原発再稼働コストの世界的上昇や損害が巨額になること、事前に積み上げるべき廃炉費用が、電力会社の貸借対照表に計上されていないこと」を指摘。「廃炉費用が将来の国民が負担する、見えない大きな費用になる可能性がある」として、「即時脱原発か穏やかに原発依存を減らしていくのか」との費用の選択になると総括している。

 中北教授によると、NHKの担当ディレクターは「絶対にやめてほしい」と言い、中北教授は「趣旨を変えることはできない」などと拒否したという。

 中北教授は外務省を経て研究者となり、第一次安倍政権で「アジア・ゲートウェイ戦略会議」の座長代理を務めた。NHKでは「ビジネス展望」だけでなく、二〇一二年三月二十一日の「視点・論点」(総合テレビ)で「電力料金 引き上げの前に改革を」と論じたこともある。

 中北教授は「特定の立場に立っていない内容だ。NHKの対応が誠実でなく、問題意識が感じられない」として、約二十年間出演してきた「ビジネス展望」をこの日から降板することを明らかにした。


 ご存知の通り、籾井NHK会長が、就任会見早々に、「(慰安婦は)戦争地域にはどこでもあった」、「政府が右ということを左というわけにはいかない」と、失言をやらかしました。

 失言ならこちらが本家本元だと、森喜朗さんもやらかしました。負けてません。
 森喜朗さんは、東京五輪大会組織委員会の会長をやってます。東京都知事が空席の間に就任が決まりました。
 
 その会長自らが、言い放ちました。
「五輪のためにはもっと電気が必要だ。今から(原発)ゼロなら、五輪を返上するしかなくなる」 

 センセ、センセ、それダメです。五輪招致委員会はIOCに、原発なしでもオリンピックは大丈夫と報告しています。
 選挙戦を有利に運びたいがために、とんでもない失言をしでかしました。もし細川知事になったら、クビが危ない。

 で、籾井NHK会長。
 籾井氏のNHK会長就任が官邸主導人事だった話は世に知られています。「永遠の0」で知られる百田尚樹さんをはじめ、安倍総理の信条に近い4人がNHK経営委員に送り込まれたことも周知の事実です。前任の松本正之会長を任期終了前に辞任させたかった安倍総理が4人を送り込んで無言の圧力をかけたと解釈されています。松本会長の下では、政府に不都合な番組も制作されていたからです。
 堀潤アナウンサーがNHKを退職しフリーにならざるを得なかったのも、アメリカの原発事故を赤裸々に伝える映画を制作し、それが安倍晋三の逆鱗に触れたからだと噂されています。

 こういうなかで、原発の経済的不合理性を解説する予定だった「ビジネス展望」が封じ込められました。安倍政権による言論統制はすでに始まっていると思って間違いないでしょう。 ニューヨークタイムスは、権力におもねるNHKの変節ぶりを報じています。

何かに取り憑かれたような安倍晋三を止めたい

 天皇陛下、バンザーイ!
 たしか岩波ブックレットの「集団的自衛権」で読んだ話だったと思うのですが、何かの式典で天皇陛下ご夫妻がご退席になるとき、自民党三役が、天皇陛下万歳を三唱したそうです。そのなかに安倍晋三もいました。さすがの天皇陛下もこれにはドン引きだったとは書いてませんでしたが、そこまでやって委員会です。

 安倍総理の目には社会の現実がどう映っているのでしょうか。私みたいな政治の素人がなんのマル秘ナマ情報も持たずにえらそうなことをぬかせば、安倍総理の場合、自分に都合よくものごとを解釈しすぎているように思えてなりません。

 ダボス会議の海外メディアとの懇談会に臨んだ安倍総理は、いまの日中関係を第一次大戦開戦前の英独関係になぞらえ、お互いに経済依存し合う国同士にすら戦争が生じたと話したそうです。
 その場に居合わせた記者たちの間から、各国と中国の経済依存関係を第一次大戦当時の英独と同一視するのは無理があるという声が出たといいます。依存の度合いが質的にも量的にもまったく異なる。歴史をちゃんと知っているのかということですね。
 中国と本気で戦争する腹積もりがあるからそんな曲解になるのだろうという受け取り方まであったそうですから、海外移籍して初めて知る世界の厳しさみたいなもんです。

 靖国神社参拝についても、なんでこんな時期にわざわざいらんことをしてというのが海外メディアの率直な見方だといいます。中国の購買力の高さはそれだけで武器です。わざと中国を怒らせる日本では何かあったときに支持しにくいと書いた海外紙もあるそうで、日本はもっとリアリストになれと世界は考えているようです。

 丁寧に説明すれば納得してもらえるというもんではないんですね。安倍さん、あんたの思いじゃない。事実何がどうなっているかが重要視されます。それが見えてない奴となったら海外の信頼を失います。

 こうは思いたくないけど、安倍総理は胸のすく快感を味わいたくて政治をやっているのではないでしょうか。さっきも言いましたが、いまの一強多弱体制なら、どんな法案もすべて成立します。さぞかし胸のすく思いでしょう。その上キーポジションをイエスマンで固めているのですから、いわば裸の王様です。

 そういう環境で最高権力を手にしたら、安倍総理ならずとも調子こいてしまいます。人ってそういうもんです。ありのままの現実に即して行動を決めるのではなくて、自らの行動を正当化するための現実解釈に陥りがちです。ランニング・ハイみたいなもんで、快感ゆえに走り続けたくなる。

 憲法を変えて国防軍を持つ必要があると安倍総理はことあるごとに言いますが、その前提となる現実解釈が本当に的を得たものかどうか怪しいもんです。あれは軍事オタクだ、起こり得ないケースを想定して戦争ごっこを楽しんでいると小バカにする軍事専門家もいます。

 危なっかしい。小泉さんは、そう言っています。小泉さんが憲法改正までを含めて言ってることなのかどうか真意は想像つきませんが、私は私なりに危なっかしいと思っています。何よりも危なっかしいと思うのは、戦前の「お国のため」に似た発想です。これが安倍政権の随所に現れます。

 とにかく安倍晋三を止めたい。止めなければえらいことになりそう。そうなってからではもう遅い。

 その気持ちで立ち上がった細川・小泉の元老連合を、同じ気持ちで見ています。

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