2014-10-12

3<trois> (大阪市平野区平野本町) 和風の庭、その奥にパン屋さん

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 大阪市内の下町はどこもノスタルジックです。
 平野区平野本町もノスタルジックなんですが、他の下町風景とはちょっと違って、ここのノスタルジーには情緒があります。
 昔ながらの町並みが保たれた小路に、このパン屋がありました。


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 上の写真、角に古い饅頭屋がありました。寛永年間に創業、300年の歴史をもつ福本商店です。亀をかたどった亀乃饅頭で知られています。
 この界隈の医院に来るときは、大通り沿いのコインパーキングに車を置いてあとは歩いてきます。昔の大阪はいまほどゴテゴテしていなかったのだろうと思える光景がこのあたりには残っています。


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 福本商店の交差点を曲がってほどなく、立派な門構えに出会いました。


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 「3 trois」と書いただけの看板。お金持ちの奥さんが趣味で始めたレストランかと思いつつ入ってみますと、正体はパンの店。やっているのは有閑マダムではなくて、若い夫婦でした。

 庭を通り抜け、ガラスの引き戸を開けて中に入ったら、劇的ビフォー・アフターのナレーションと曲が聞こえてきそうでした。

 なんということでしょう、巧の手によって、二人の夢が詰まったこんな素敵な店舗空間に生まれ変わりました。天井の太い梁はそのまま生かされ、訪れる人にこの家の歴史をそれとなく伝えています。三和土(たたき)だったおくどさんは動線を考慮したキッチンに変貌し、オーガニックのパンを焼く香ばしい匂いが漂ってきます・・・

 と、まあ、そういう感じ。エクステリアは純和風、インテリアは和風と南仏風の混在。troisという店名を建築デザインに翻訳したような造りです。庭から光が差し込む窓辺でパンを食べることもできます。


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 パンはほんまに少ない。ちょっとしかない。
 行った時間帯が1時半でした。
 一度に多くの客ではないのですが、一人去れば一人来るといった具合に切れ間がありません。このペースですでに多くが売れてしまったのだと思えました。それに、たった二人の労力しかないなか、本気でこねて本気で焼いたら、そもそも数で勝負はできません。

 10時の開店直後はまだ全種類が焼き上がっていないそうです。とくに惣菜系は正午前に出揃うといいます。順々に焼き上がっていくけれども順々に売れていく。売り切れたらおしまいです。


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 バゲット、レーズン入り食パン、柚子入りの立方体のパン。
 この3種類を家用に買いました。

 アンパン、焼き野菜・マスカルポーネ・ゴルゴンゾーラの惣菜パン、ドライトマトを焼き込んだチーズ入りのパン。
 この3種類を店で食べました。窓辺で。庭を見ながら。

 温めますか?
 ぜひ、お願いします。

 いい味でした。センスがいいと思いました。
 とくに気に入ったのが、焼き野菜・マスカルポーネ・ゴルゴンゾーラを組み合わせた惣菜パンでした。レストランの料理に通じるおいしさです。こんなにおいしいのだったら、食べる前に1個ずつもっと丁寧に写真を撮っておくべきだったと悔やみました。


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 家に持って帰ったパンもおいしくて、パン好きな妻お龍が喜んでくれました。

 あら、重いわ。しっかりしたパンなのね。

 レーズン入り食パンとバゲットは、焼いたときの歯ごたえがサクサクと心地よく、さらに魅力を増しました。今日(10月13日)で買ってから4日目になりますが、食感も香ばしさも衰えていません。お龍は、バターとの相性がとてもいいと言います。



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 柚子入りの立方体のパンは、10cm×10cm×10cmほどの小さなサイズです。これがクセ者。この小さなクセ者を焼くために、あの若い夫婦はどれだけ手間をかけたことでしょうか。
 切った断面からフワーッと柑橘系の香りが立ち上がります。ミントやバジルに朝いちばんの水をやったときのようです。パンの内部に封じ込められた柚子が解放される一瞬を待ちわびていたかのようでした。

 パンの店は大阪市内になんぼでもあります。京都や神戸同様に大阪もパン屋の激戦区だと思いますが、人目につきにい場所でも生き残れるのはこの味が理由なんだと分かりました。

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