大阪でいちばん有名なケーキと言い切っていいでしょう。中村玉緒さんや橋下徹市長も、ここのケーキの大ファンだと公言して止まないそうです。中村玉緒と橋下徹でどれだけイメージをアップできるのか心配ですが、とにかくおいしいケーキだと聞いていました。
大阪市内主体に9店舗を展開するポアール。その帝塚山本店でケーキを買って帰りました。
店は、天王寺と堺市の浜寺を結ぶ阪堺線の姫松駅からすぐのところでした。ひょっとして阪堺線はグルメ路線なのか、これに乗って住吉大社で下りたら玉子コロッケの「やろく」です。
帝塚山といえば閑静なエリアでお金持ちが集まっている印象が先行しますが、なにせ阿倍野区ですから、静かとはいえわさわさしています。この町の風景から格別のスイーツを連想するのはとても難しいことです。周囲が周囲だけに、何も知らずに店を目にしたら、むしろ悪趣味に感じられるかもしれません。
これがポアール帝塚山本店の店構え。
男の客ばかり。えーっ!
午後7時前だったと思いますが、ガラスケースの前に立っていたのは、私を含めて5人の男。 いや、こんなケーキ屋さんが世の中にはあったのかと、これまでに食べたどのケーキともはっきり異なるおいしさに感激しました。既存のおいしさと違いすぎて味や香りをうまく言葉にできず、そこが本当に残念なことです。
有名店であり、おいしさは広く知られるところであり、値段がちょっと高めでありーーーとなってきますと、この時間帯に男性客の需要が集中するのも分かる気がします。なんかこうカッコいいものを誰かに持って行きたいのだろうと思われました。
かくいう私も、聖太郎のところに滞在していた妻お龍が数日ぶりに帰ってくるというので、お疲れ様の趣旨でポアールのケーキに決めた次第です。
いや、そんな6個も買うつもりはなかったんですけどね、順番待っているうちにショーケースごと全部くれの気持ちになってきまして、気が済むところでやめたら6個になっていました。そのかわり値札を見ませんでした。見たら高くて買えませんわ。支払いのとき、6個で3898円(消費税含)だと知りました。あぶなかった。手持ちは5千円しかなかった。
店の女性が、輪になった紙で1個ずつを丁寧にガードしてくれまして、さらに小さな保冷剤をたくさん入れてくれました。遠いとこに帰る田舎者だと、見るだけで分かったんでしょうか。ブティックみたいに、ケーキの入った手提げ袋を出口で渡してくれましたしね。
私に大阪市内を引き継いでくれたグルメ美女から、ポアールのケーキは本当においしいんだと教わっていました。この帝塚山本店の2階はカフェなんですが、彼女はそこでケーキと紅茶を味わったことがないそうです。いつか必ず来たいという未練を残しながら東京に転勤していきました。
ケーキを食べる幸せというのがあると思うんですよね。ポアールのケーキにはこの幸福感が満載です。私は一気に3個も食べてしまいました。いまちょっと胸やけがしてまして、アホやったなあと後悔しているところです。
「おいしいものは脂肪と糖質でできている」というCMがあります。ケーキはその代表格ですよね。
おいしさをずっと科学し続けてきた伏木亨教授(京大農学部)によりますと、脂肪や糖質がおいしく感じられるのは生命を維持するために欠かせない栄養素だからだといいます。脳の仕組みが必須の栄養素をおいしく感じるようにできている。いわば本能に訴えるおいしさ、やみつきになるおいしさだそうです。
この理屈抜きのおいしさが、ジンワリではなくてスパッと表面に出てきてくれたほうがケーキを食べる幸せに直結すると思うのですが、ポアールのケーキはその王道をいってます。
でも、それだけでは終わらないクセ者です。そこから先の味は次から次へと予測を裏切ります。代表取締役でありグランシェフである辻井良樹さんがホームページで「お客様に対して期待以上に『裏切る』」と抱負を述べていますが、実にその通りだと思います。
たとえば、上にポンと載っているマスカットやキウイにしましても、いくら素材を厳選しているからといって、ただカットして載せただけではこうはいかないだろうという風味と甘さです。
ちょっとは酸っぱいかと思ってるのにまったく酸っぱさを感じないといったように、「あれ?」の連続なんですねえ。フィグ(イチジク)にしましても、イチジク嫌いはこういう理由で嫌いになるといった欠点を消してあります。そのくせ、生の果実のよさをちゃんと残しています。
ケーキ本体を底に向かって食べ進めていきますと、いったいこれはどういう味なんだと思わせるおいしさが現れます。それは、食べ進めば食べ進むほど外側と内側が一体になってくるからなんですが、そこから生まれるおいしさが単純ではありません。
砂糖やバターの味が活発に働いて、けっこうやんちゃしているように思うんですけど、やんちゃのしすぎはいけないよと引き留める分別が同居しています。大人の恋といいますか、こういうのはどない言うたらええねん。魅了されるキャラですねえ。
「どうなってるんやろ?」とお龍に語りかけますと、お龍はお龍でビックリしているばかりです。「こんなケーキ食べたことないわね。見かけにしたってそう。見てもどんな味なのか想像できないのよねえ。どれ買っていいかわからなかったでしょ」と、それが精一杯の返答です。
京都高台寺のラ・パティスリー・デ・レーヴ がおいしい、さすがフランスが本店と言って喜んでたこともありますが、言いすぎだったと思いました。甘さ控え目でたしかにおいしかったけれど、ポアールと比べたら単調だったなと思います。
すみませんが、とりあえずのところは写真を見ていただきまして、私が言わんとするところを想像の力で補っていただければ幸いです。
シャインマスカットのデセール(左)とキャフェ・ベイリーズ(右)。
パニエ(左)とシャテーニュ(右)。
タルト・フィグ(左)とデセール・ポティロン(右)。
ポアール帝塚山本店のホームページ。
天王寺と堺を結ぶ阪堺線の姫松駅のすぐ近くにある。
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