お魚天国とはこのこと。めちゃうまかった。おもしろい店でした。
金沢市の繁華街、片町2丁目、川端鮮魚店という居酒屋です。
この岩ガキは、輪島の海女さんが潜って採ったそうです。正真正銘の超特大サイズでした。
雨も上がって少し蒸し蒸しの金沢市中央通り。川端鮮魚店は片町2丁目交差点を見下ろしながら、今夜もおおぜいの飲んべえを迎え撃っていました。
その気にさせる階段を上がると、魚市場や鮮魚店をそのままビルに移転したような店内。雑然とした様相を模してあります。カウンター席の前にトロ箱や秤まで置いてあります。
酒屋に積み上げてある空のビールケースに安っぽい座布団を紐で結びつけて椅子の代わりにしてあります。テーブルはトロ箱を裏返したデザインです。キッチンに目をやれば、ステンレスが多用されていて、海産物加工場そのものです。従業員の愛想なさも実に漁師臭くて、演技なのか地のままなのか見分けがつきません。
きわめつけは、紙と鉛筆でした。
席に座ると、従業員の誰かが、メモ用紙くらいの紙と、芯が減ったままの鉛筆を持ってきます。
「最初の飲み物と注文はこれに書いといてください」
ぶっきらぼうにそう言い残していきます。「お手数かけますが」も、「申しわけありませんが」も、前置きはいっさいなしです。。
そんな粗野な接客が通用するほど安い店ではないことを思うと、荒っぽさも計算づくでしょう。場違いの者が肉体労働者の現場に来てしまったような感覚を煽ろうというのです。
でも、よく客が入っています。観光客や出張族ではなくて、地元の客がほとんどです。大人気の理由を頭で考える必要はまったくありませんでした。運ばれてきた魚を食べた途端、自分がこの店のとりこになっていました。
まずはタコわさです。いやあ、タコがそれはそれはコリコリしています。わさびの茎が入っています。ツンときます。一品よりも逸品とはまさにこのことです。
刺身3種盛り合わせ。1500円。一見高そうに思えますが、厚みをもたせた切り方が半端ではありません。醤油にもぬかりがなくて、魚の旨みと甘みを引き出す醤油です。おそらく金石(かないわ)あたりの醸造元が仕込んでいるのでしょう。
そして、出てきました。能登半島輪島産の岩ガキ。1500円。
言うまでもなく天然です。だって、海女さんが潜ってつかまえてきたのですから。
サイズに驚きました。割り箸の3分の2ほどありました。パクっといけばプリップリと答える。レモンを絞るだけで食べてくださいというのがよく分かります。
これだけの身が入っているのですから貝殻もえぐれたように深い。そこに磯の旨みが溶け込んだレモン汁。最後の一滴まで幸せでした。
ガスエビとオニエビでさんざん迷った末に、今夜はオニエビにしました。1200円。
いくら金沢でも、このエビがスーパーに並ぶことはないと思います。入荷は近江町市場くらいじゃないでしょうか。正式名称はイバラモエビというそうです。
ガスエビほど甘くはないけれど、コリコリっとした感触はこちらが上で、食べごたえがあります。
残った頭を味噌汁にしてくれと頼むつもりだったのですが、これの次に来たおでんで腹がふくれすぎて、忘れてしまいました。
気づいてもらえたかもしれませんが、店も人も粗野に見えて、すべて氷の上に盛り付ける心配りです。魚介のおいしい食べ方を知ってる人たちがやってる店だから、これだけおいしいんですね。
おでんのメニュー名は「金沢おでん」と言います。
金沢市民はなぜかおでん好きです。片町交差点にある昭和2年創業の「赤玉本店」は、周りの移り変わりに関係なく、ずっと同じ場所を占め続けています。それだけ多くの客から支持されている店です。
鍋のまま出てきたこのおでん。からしはS&Bのチューブ入りなのに、それをハンディともせぬおいしさでした。とくに卵の黄身。ああ、うまかった。
金沢の酒飲みがうらやましくなりませんか?
こんな店に仕事帰りに寄って行ける。
ここだけじゃないですからね。魚のうまい店が、他にもまだまだ、いっぱいあります。
片町の外観はなにかと変わりました。変わったけれど、繁華街の通りに面したいい場所には依然として飲食ビルがずらっと連なる。「えらい!」のひとことです。
腹ごなしに片町の裏通りを歩きました。こんな懐かしの光景がまだ残されていました。金持ちでも貧乏でも、片町は酒飲みすべて対してOPEN ARMSです。
今日は♫ ビックリする店の様子と、更に驚くほどの魚介類
返信削除美味しさが見えて?感じていますよ。
こんな大きな生牡蠣頂いて見たいですね。
相子さん
削除こんにちわ。
ほんまにおもしろくておいしい店でした。
私の知り合いが相子さんと同じようなメールを寄越しました。
この翌日、近江町市場からその知り合い宛に、特大牡蠣をクール宅急便しました。
まったく開けられなくて、えらい苦労したそうです。