2015-01-04

いけるぞクサヒガ(草津東高校) 東福岡には勝てなかったけど

ヒガシのクリロナ草津東

ヒガシのクリロナこと東福岡7番増山朝陽君の一発で2-0に:画像クリックで日テレオンデマンドの動画再生

 1月2日の東福岡戦、クサヒガは3-0で負けました(その東福岡は、翌3日、3-0で静岡学園に負けました)。
 2回戦で敗れはしましたが、今大会のクサヒガは2年生が多いチームです。まだまだこれからです。もし次の94回大会にも出場できたら、東福岡クラスの強豪校にも勝てるはずだと信じています。


 このYahooニュースがすごくいいことを言ってくれています。このニュースのなか、監督や3年生の言葉に、東福岡戦のエッセンスと今後の夢が詰まっていると思います。




 いっぽう、ゲキサカは、東福岡中心のニュースばかり。とくに、中島賢星君と増山朝陽君に焦点を当てています。二人はすでにJリーグ入団が内定しているスター選手です。

 増山朝陽君のほうは「ヒガシのクリロナ」と呼ばれています。クリロナとは、ご存知クリスチアーナ・ロナウドのことです。
 自らもすっかりその気になっていて、美容院にクリロナの写真を持って行って同じ髪型にしてくれと頼むくらいだとか。ゴールを決めた後のアクションもクリロナそのままです。

 ただ、クサヒガは、そのなりきりクリロナに崩されたわけではありませんでした。
 いや、たしかに、東福岡の2点めはなりきり君のゴールでした。
 けれども、あれは、フリーキックのとき、なりきり君の立っていた位置がよかっただけでした。誰かと誰かがヘディングで競り合ったこぼれ球が足下に転がってきました。あそこにボールがこぼれる成り行きは、3番末永君の正確なフリーキックあってこそだと思います。

 ということで、決してなりきり君が切り開いたチャンスではないのですが、やっぱりあの局面で確実に入れるのはすごいと思いました。
 あのシュート前、クサヒガの守備はなりきり君をフリーにしていました。クサヒガ選手はすぐ近くにいたんですけどね。なりきり君ほどの実力選手をどうしてプレッシャーなし状態で立たせておいたのでしょうか。

 そういう好都合はありましたが、あの一瞬に利き足ではない左足を軽く振り抜いてファーサイドに突き刺す精度の高さ。悔しいから「なりきり君」なんて馬鹿にした呼び方をしてますが、やはり「ヒガシのクリロナ」と呼ばれるだけのことはあると感心しました。

 これだけに限らず、なりきり君の個人技の高さには何度も驚かされました。けれども、それでクサヒガがかき回されたのかといえば、そこまでの印象はありませんでした。クサヒガ23番の馬場君や2番上林君のマークがしっかりしていたのだと思います。馬場君とのマッチアップを避ける目的か、後半からのなりきり君は逆側の左サイドにポジションを変えました。

 私は、クサヒガは中島賢星君にやられたのだと思っています。しかも目立つプレーでやられたのではなくて、地味な強靭さと意表をつくインサイドワークでした。録画を何回も見直して、中島君が本当の曲者だと思いました。

 後半14分の先制得点は、中島君がクサヒガ5番山本翔太君のボールを奪うところから始まりました。そのちょっと前に、中島君の蹴ったボールが結果的に山本翔太君へのパスになっていました。中島君は、自らのミスでクサヒガにプレゼントしてしまったボールを自らの実力で奪い返しました。

 中島君は、翔太君から奪ったボールを加奈川君にあずけ、すぐさまパスコースを指示します。彼の腕は誰も人がいない場所を指していました。ペナルティーエリア右側の大きなスペースでした。加奈川君は、バックスピンの利いた浮き球をスポンと蹴りました。

 加奈川君のパスが出た途端、FW15番の餅山君はクサヒガの選手をすっとかわしピューッ。全速力でボールに駆け寄りました。投げられたおもちゃに飛んで行く子猫のようでした。そして身体でガードを作りボールをしっかりキープしました。
 加奈川君が、もし地面に落ちてからポンポンポンと跳ねていくボールを蹴っていたなら、餅山君がボールに追いつけなかったかもしれません。あるいは、クサヒガが外に蹴り出せたかもしれません。ゴルフのアプローチのような落ちて止まる球種をあの局面で選択するセンスに感服しました。

 クサヒガは餅山君を慌てて追いかけ、2人がかりで身体を寄せていきます。餅山君は2人を引き連れてゴールラインぎりぎりでボールをキープしつつ、味方の攻撃態勢が整うまでパスのタイミングを待っていました。最悪でもコーナーキックにもっていく意図もあったことでしょう。

 餅山君にクサヒガ2人がいけば、ゴール前に守備人数が足りなくなるのは自明の理です。2人でいったかぎりは絶対にゴール前にパスを出させてはいけない場面でした。解説の奥寺康彦さんによると、ゴール前へのパスコースを塞いでしまえるまで身体を寄せなくてはならないそうです。

 このとき、クサヒガのゴールマウスを守っていたのは、キーパーの吉川君と3番島君、2人だけでした。離れたところから2番上林君が急いで戻ってくるところでした。

 攻める東福岡は、加奈川君がパスを出すや否や、18番中村君と11番赤木君がペナルティーエリア向けて迷うことなく走り出していました。

 クサヒガにすれば絶対に通させたくないパス。
 東福岡にすれば絶対に通したいパス。
 餅山君の正確なパスがゴール前の中村君に向かって転がり、これを中村君がジャストミート。地面すれすれの低い弾道がキーパーの吉川君を襲いました。吉川君は低く身を構えていました。

 それと同時です。必死で戻ってきた上林君がシュートコースに割って入りました。中村君が放ったシュートは横切る上林君のかかとに当たり、コースがそれました。「助かったか!」と一度はそう見えたのですが、ところがこぼれたボールはコロコロと赤木君の足下に転がりました。赤木君はフリー。ゴールネットはすぐそこ。あとは落ち着いて押し込むだけでした。

 加奈川君がパスを出してから赤木君のゴールが決まるまで、わずか10秒間の出来事でした。赤木君のゴールが決まってはじめて、どれだけ危ない状況だったのかがクサヒガに伝わったのではないでしょうか。テレビで見ていた私もめちゃガックリしたくらいですから、クサヒガ選手たちの落胆は想像に余りあります。その2分ほど後に東福岡の2点めが決まりました。2点目を入れたのはヒガシのクリロナ増山朝陽君です。

 録画を何度も見返しましたが、あのとき中村君のシュートが上林君のかかとに当たったのがよかったのかよくなかったのか、分かりません。当たらなければキーパー吉川くんが止めていたようにも見えるし、反応しきれなかったようにも見えるし。

 いずれにせよ、これはゴール前の守備をお留守にさせられて生まれた結果です。そこまでの流れは、クサヒガ陣内で押し込まれ気味だったとはいえ、ゴール前に人数をかけて守らねばならぬほどではありませんでした。ボールの出どころによってはクサヒガの逆襲もありえました。

 その五分五分的状況をたった1本のパスが変えてしまったのです。

 大ドンデン返しを作り出すパスを指示した中島君、指示通りに浮き球のパスを上手に蹴った加奈川君、クサヒガ2人に囲まれながらもボールを失うことなく狭い隙間から正確なパスを通した餅山君、シュートを浮かせなかった中村君と赤木君。
 録画を見返せば見返すほど、東福岡は個人技も組織力も高いチームだと感心しました。まるで詰将棋のように、次に何が起きそうかを常に予測しているんだなあと思いました。


東福岡VSクサヒガ

[選手権]増山&中島アベック弾の東福岡が草津東に完封勝ち(8枚) | ゲキサカ[講談社] 画像クリックで記事にジャンプ。

東福岡VS草津東2

[選手権]東福岡がJ内定 増山&中島アベック弾などで草津東に快勝 | ゲキサカ[講談社] 画像クリックで記事にジャンプ。


 クサヒガだって、やられっぱなしだったわけではありません。
 たしかに、全体としては劣勢でした。しかし、山本悠樹君のファンタジスタぶりは充分以上に通用していましたし、山本翔太君も相手の攻撃の芽をしっかり摘み取っていました。太田君の裏への飛び出し、北川君や上林君のサイド突破のスピードは東福岡のディフェンダーを慌てさせたと思います。
 中島、増山、木藤、坂井、赤木といった実力選手の個人技でやられてしまわなかったのは、前線からプレッシャーをかけていく守備が機能していたからでしょう。
 これはやれるぞ、よしやれるぞ、点も入るぞと思いながら見ていました。

 鎌田君は、鎌田キラーみたいな13番堀君に苦しめられて、ゲーム終盤には体力消耗ばかりか精神面でも追い詰められていたように見えました。今回もアナウンサーは蓬莱山の麓の話を紹介してましたし、麓という名前をつけてもらった理由も伝えてました。

 1点が遠かったですねえ・・・
「うちはうまいとは言われますけど、強いとは言われないので、うまいだけでは終わらないように勝負強さを今後は鍛えていきたい」と雨森監督もYahooニュースの中で述べています。


 東福岡の3番末永巧君のように視野の広さに加えて精度の高いボールを前線に供給できる選手がいればいいのでしょうが、クサヒガの場合、攻撃の意図を託したボールが東福岡に比べて少なかったと思いました。
 東福岡が攻勢に出てくると、跳ね返したボールは相手に渡るわ、自分たちのパスも相手に引っかかるわで、なかなか攻撃を組み立てるところまでいきません。速攻に持ち込めば1点の可能性が一気に高まることを前半29分や後半34分の攻撃が実証していただけに、ほんとに惜しいゲームでした。

 今年の滋賀県はどこが強くなるんでしょうねえ。
 野洲が奮起するのでしょうか。守山北が伸びてくるのでしょうか。綾羽が彗星の如く台頭するのでしょうか。あるいは古豪水口が復活するのでしょうか。
 どこが全国大会に出ても一生懸命に応援しますが、やっぱりご近所のクサヒガに頑張ってもらいたい。次は寄付金千円じゃなくて、ちゃんと3千円払いますからね。




 

 

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