ええっ! 舟屋が火事?! 伊根のどこ? 京都新聞のニュースにビックリしました。
民宿の鍵屋に電話したら、鍵屋の対岸にあたる場所だとのことでした。対岸とはいえ、大きな火の手はおそろしかったそうです。なかなか消えなくて、それも心配だったそうです。
現場は伊根町亀島となっています。舟屋が連なる海沿いには亀島と平田の2地区しかありません。そして、亀島は、平田を真ん中にして、あちら側とこちら側に分かれています。
今回の火事現場は亀島のなかでも高梨と呼ばれる区域です。伊根をご存知の方なら、伊根湾観光の船着場と向井酒造との中間辺りといえば分かっていただけるでしょう。民宿の鍵屋は、同じ亀島でも立石にありますから、高梨とは伊根湾を挟んだ対岸の位置関係にあたります。
火事が起きたとき、鍵屋のテレビ取材が始まろうとしていたそうです。海をバックにして立ち、カメラが回り始めたら、対岸が燃えている。本当に驚いたとのことでした。
伊根の舟屋は国の重要伝統的建造物群ですし、伊根町の大切な観光資源です。そして、舟屋は、町の人にとっては住処であり、日々の暮らしの場です。暮らし方が情景になる。だからこそ伊根がいいんだ、そこが舟屋の観光的価値だと、私は思っています。
火事の発生はとても残念で気の毒な出来事ですが、日々の生活には火事をはじめ様々な事故リスクがつきまといます。たまたま火事が発生したのは、舟屋に人が住んでいるからこそで、舟屋が生きているからだともいえます。
下にあるのは京都新聞1面のカラー写真です。海上から消火に当たる消防船の光景。火事場ですらもこんなに情緒あふれる写真になってしまいます。報道写真までが美しい。さすが伊根だと思いました。美しさが消失のもったいなさを雄弁に語ります。この記者さんは、伊根の美しさを知っている人なんでしょうねえ。
写真で分かるように、舟屋は古い木造建築ですから、燃えれば一気です。そして、伊根湾に面してぎっしりと家が立ち並ぶ町並みが伊根独特の魅力でもあり、それと同時に、類焼を免れ得ない弱点でもあります。
ニュースによれば火元の小谷脩さんは80歳です。報道されている限りでは幸いにも命に別状なくて、軽い火傷で済んでなによりです。ただ、やはりお年寄りの世帯だったかと、そこが気にかかりました。
舟屋とお年寄りの組み合わせはごく普通のことです。したがって、お年寄りの命を守ることと舟屋の命を守ることがほぼ同義になってきます。
平成22年の国勢調査結果を見ますと、伊根町の総人口数は2410人。
・14歳以下:200人
・15~64歳:1,182人
・65歳以上:1,028人
となっていて、高齢化率は42.6%です。
また、一人暮らし・二人暮らしの世帯が圧倒的に多くて、おそらくこれらは独居か夫婦だけの高齢者世帯だと思われます。
もちろん、ご本人たちはまだまだお元気なつもりで、自信をもって世帯を構えておられることでしょうが、生活習慣病、身体能力低下、認知症などに煩わされて当たり前の年齢層です。歳をとったら仏壇のロウソクすら要注意。今回のような火事はーーー決して伊根のみではないのですがーーー町の高齢化と無縁ではない気がします。
私が見た国立社会保障・人口問題研究所のサイトは、全国市町村の人口推移を2040年まで推計しています。伊根町の2040年は、人口が1284人と半減するかたわら65歳以上の人口が670人を占めるという推計結果です。なんと2人に1人がお年寄り。しかも75歳以上が600人。たいへんです。
今回のような火事の再発率は予測不可能ですが、住む人を失った舟屋がいくつも生まれるであろうことは容易に予測できます。本当の観光資源損失リスクはそちらにあります。
伊根湾を望む。名前を知らないお寺から。過疎の地ならではの物静かな情景。それが観光的価値であると同時に、人口減少と高齢化は町の課題。
このブログで、伊根は本当にいところだと、何度も何度も書いてきました。何もできないのに、伊根の将来がどうなるのか心配だけが膨らみ続けます。
よし、来年は伊根町にふるさと納税するぞ!
火事のニュースを読みながらそう決めました。
ふるさと納税の使途指定が以下の4項目になっています。私の心配とちょうど重なる項目ですから、ぜひ実行したいといまから意気込んでいます。
・舟屋の維持、保全及び整備に係る事業
・まち並みの美化、景観の形成等に係る事業
・少子・高齢化対策に係る事業
・特に指定しない
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