福井県坂井市三国町の「バードランド」でおいしいピッツアを食べてきました。何か月ぶりかのことで、3回目になります。
美女よ、今日は真のナポリピッツアを食いに行くぞ。
前の記事でもお伝えしましたように、今週の私は美女と行動を共にしています。この美女は、真のナポリピッツアが初めてでして、バードランドの小田原さんの職人技から大きなインパクトを受けた様子でした。炎のアートともいうべきナポリピッツアの奥深さにただ感嘆しておりました。
VERA PIZZA NAPOLETANAーーー真のナポリピッツア。バードランドはその認定店です。
どのピザがおいしいんですか?
吉田牧場のチーズを使ったナントカとからしいけどなあ。
あ、それ知ってます。青森県出身の芸能人がやってますよね。
それは、花畑牧場やろ。
ランチセットもありますよ。
あかん、あかん。単品で食うぞ、単品で。
ランチセットは2回目からでいいと思います。初来店のときこそ本気のピッツアで真髄を知らなくては、来た値打ちがありません。単品で食べますとピッツア1枚でランチセットの値段をはるかに上回りますが、なんのこれしき、食後の幸福感で充分にお釣りがきます。
トマトソース味として「D.O.C」、そして美女の好みであるアンチョビ味として「ポパイ」を注文しました。
「ポパイ」という名前からも連想できますように、ソースがホウレンソウになっています。
我々は、石窯にもっとも近いカウンター席に位置取りました。
マスターの小田原さんがさっそく生地を広げ始めます。広げた生地にホウレンソウソースをさっと塗り広げ、パンチェッタかなベーコンかな、さいの目切りにしたのをぱらぱらと振り分けます。こうして準備が整ったピッツアをパーレの上に移す。最終的な成形を施す。それを石窯のなかへ置く。ぱぱっとパーレを抜き去る。
そこまで観察し終えた美女は、椅子にきちんと座り直し、好奇心のかたまりから素の自分に戻りました。あとから分かったのですが、石窯に入ってから5分くらいかかると思っていたようです。家で焼くときはたしかにそうですよね。
ところが、1分か1分半ほどで焼き上がってきました。
えーっ、もう焼けたんですかあ。どうしてですかあ。
美女にしてみたら、素に戻るひまもない。美女の「どうしてですかあ」に答えてるひまもない。問答無用。さっさと食わなければせっかくのピッツアが冷めてしまいます。
あれ、切ってないですよ?クルクルと回すので切らないんですか?
自分で切るねん、ナイフとフォークで。このほうが自分の好きな大きさに切れてええねん。
いま焼き上がったばかりのポパイ(写真上)を切り分けているうちに、2枚目のD.O.C(写真下)が焼き上がってきました。これも早く食わなければ冷めてしまいます。ちょっとしたパニック状態。パニック状態のなか、美女は言葉を失い、おいしいさを顔で表現するのみです。
次から次へと生まれる小さな感動を隠そうともしない美女。その美女の素直な反応をいちばん楽しんでいるのは、石窯の前に立つマスターの小田原さん。美女が感激の言葉を発するたびに、「ククク」、「ククク」と、笑い声を抑えつつも嬉しさを隠しきれません。「ククク」のたびにパーレを支える両肩が小刻みに震えています。
いっぽう、今日の美女にとって、ピッツアは驚嘆。小田原さんが若く見えすぎることですらナポリピッツアの神秘です。
小田原さんは、自店のホームページに以下のように書いています。
バードランドは1989年に三国町(現坂井市三国町)に喫茶店としてオープン致しました。
当時は軽食と珈琲を提供するお店でしたが、ある時とあるピッツエリアにてイタリアナポリの本場ピッツアを食べ、一瞬でその美味しさに魅了されてしまい、自分でもこの美味しいピッツアの調理人(ピッツアヨーロ)になりたいと強く思うようになりました。
「どうしてピザをやろうと思ったんですか?」と美女が尋ねます。
「こういう石窯で、なにもかも自分の技術でやるのがおもしろいと思ったし、なんでも手作業でやることが好きなんです」と小田原さんが答えます。
「たったそれだけのことですか」と美女。
「おまえなあ」といさめつつも大笑いしました。小田原さんも、むっとするどころか破顔一笑です。この一件を見ても分かるように、この美女、めちゃええキャラしてます。好かれるんですねえ。計算なしで自分丸出しのまま好かれてしまう。そこがうらやましい。自分を殺したことのないこの私がうらやましがるんですから、ホンモノです。
もし、彼女がライバル会社なら私は勝てません。これからこの美女が私の後を継いで北陸三県を回りますが、きっと売り上げが一気に上がり、私の力不足が自ずと証明されます。よかった。その頃、俺はこの会社にいない。私の労働契約は3月24日で切れます。
クルクル回すのできますか?
ピザ生地を指の先で回す技のことです。この美女の場合、知りたいと思ったときにはもう口に出てます。いっぺん自分のなかで考えてみてからということがありません。
あれは曲芸を見せるためであって生地が特殊、食べてもゴムみたいでおいしくないとか、ナポリピッツアは麺棒を使わない、指先をうまく使って辺縁部に空気を移動させるとか、小田原さんはひとしきり説明した後、生地を150gほどに切り分け、つきたてのお餅みたいな形のまま彼女に手渡しました。食べるための生地とはどのようなものか、直に触れて肌身で感じてみてくれという意味です。
自らの両手に生地を載せてみた美女。
うわー、見て、見て、見てください。私でも楕円になってきますよ。ほら、私、ちゃんと延ばせますよ。あら、いけるかもしれない。ほら、延ばせてるでしょう。というか、重力だけで勝手に延びてるんですけど。うそみたい。重力だけでこんなに。これ、ブログにしてくださいね、絶対ですよ。でも、この生地、もうお客さんに出せませんよね。
そうなのです。ハンガーにかけ損ねたズボンがスルスルと滑り落ちるように、美女の掌のへりから生地が勝手に下に向かって自重で延びていきます。左右の掌が忙しい。放っておいたら床まで延びていきそうな生地を、すぐにもう片方の掌で受け止めなくてはなりません。
ほんまに、ピッツアをやったらどうや?
え、私がですか?無理です、無理。窯に入れるあの棒が持てません。
小田原さんが言うには、近頃はピッツア職人の世界にも女性の進出が見られるそうで、世界コンテストで日本女性が優勝しているそうです。男はピッツアィヨーロ、女の場合はピッツアィヨーラと呼ばれるそうです。
それ、焼いてみましょうか。
美女の両手でそれなりに広がった生地を受け取った小田原さんは、台の上でもう一度成形しなおして、何も具材をのせずに生地だけを石窯に入れました。そりゃそうでしょう。具材をのせてくれるほど甘くはない。
石窯は生き物です。
内部を炎にさらすうちに底面の熱さが変わってくるそうです。火を入れたばかりの昼頃は奥のほうが適温でも、午後の遅い時間帯になれば入り口近くが適温になってくるといいます。その1枚をどこに置くべきかは、それこそ1枚ごとに違います。
「ここに置いてくれと窯が言うんですよ」と小田原さん。
「私には聞こえません」と美女。
そういう話やないっちゅうねん。
しかし、美女、仕事のときには決して見せない真剣な視線を窯の中に注ぎ続けたまま、何がどうなるのかを少しでもつかもうとしています。わずかなりとも疑問があるとそれが質問に変わる。窯と熱への興味関心が尽きない様子です。しかも、あるがままの疑問をあるがままにぶつけていく彼女の場合、質問3個に1個くらいの確率で小田原さんのツボにハマるんですねえ。
いっそのこと、窯に入れてもろうたらどうや。どうなっとるのか分かるやろ。顔にトマトソース塗ってもろうて。
窯から出てきたのは、風船のように大きく膨らんだピッツアでした。「それみろ、やっぱりこんなんしかでけへん」と私は言ったのですが、小田原さんによると、具を何も載せなければパンパンに膨らむのだそうです。
気をつけてくださいね。膨らんでるのは水蒸気ですから、ゆっくり穴をあけないと、ボンといきますよ。その焼き方はボンバーというんです。穴をあけるとボンっといきますでしょ、だから、イタリア人はそれをボンバーといって、そこの上に生ハムをのせたらそのままボンバーというレシピになるんですよ。
え!生地だけでも普通においしい。
わ!おいしいですよ、普通に。
美女はまたもや感心しています。この記事のなか私は、美女の反応を表現するのにこの種の熟語をいくつ使ったでしょうか。感動、感激、感嘆、感心、驚嘆、驚愕・・・もうそろそろ書くのをやめないと語彙が不足してきます。それくらいに美女は感無量なのです。
生地だけで食べさせてもらいますと、塩味がしっかりしていることが分かります。まずはこの生地のおいしさがあって、そこに具材の旨みが加わり、炎の熱が何もかもをまとめ上げる。きわめてシンプルな食材の組み合わせが美味という名の円盤に変身を遂げる。炎の力に任せたアートという点では陶芸と同じです。
小田原さんが死ぬまでに焼く枚数は数十万枚に達することでしょうが、ふたつと同じ焼き上がりは決してない。それがピッツアなんだと、美女はしっかり感じ取ってくれたようです。宅配ピザとは似てまったく非なるものだと、そこもよく承知してくれたようです。
写真はピッツア生地を延ばす小田原さんです。撮影用にゆっくり両手を動かしてくれましたが、それでもブレています。
1枚目はなんというピッツアやったかな?
ポパイです。ホウレンソウでポパイと覚えておいてください。
さっきからの耳学で、すでに彼女はピッツアに詳しい。いつのまにやら私との立場が逆転したようです。
今日、私は、目が輝くというときの目とはこういう目のことをいうのかと知った気がしました。おまえは歓喜を表現するためのコンタクトレンズを持ってるのかというくらいに、美女は目を輝かせていました。
「知ってます?こういう幸せを、金沢では、ありがた~いっていうんですよ」と美女。いやあ、そういう気持ちになってもらえたのならば、バードランドに案内した値打ちがあります。
さて、美女との北陸引き継ぎも、残すところ明日金曜日一日だけとなりました。しかし、明日はなしでもいい。美女のこのキャラをもってすれば、引き継ぎなんかまったく無用だと、初日の1軒目から分かりましたから。
バラエティー番組でいちばん好かれるキャラの出演者にいちばんたいへんな下積み時代があったように、なにごとも明るく笑い飛ばす彼女のスーツの背には、見えない錦糸で「生活力」の三文字が刺しゅうされています。製薬メーカーの歯車で終わる女ではないと、ものすごく楽しみにしています。
そばといい、pizzaといい、オサチュンさんのこの数日は至福に満ちた日々に見えてきます。ほんとに仕事をしているのか、疑いたくなります。
返信削除特に、後任者の長身の美女。頻繁に踊る美女という単語と、オサチュンさんを通して語られるこの美女。このブログを読んだ人はすべて、一度会ってみたいと思うに違いありません。
以前からこの種の美人の乱発には、閉口している一人なんですが。テレビの番組や雑誌ではやれ美人女将だの美人姉妹だの、美人人妻だの、この世にあふれる美人報道はなんやねん。
しかし、私も中年オヤジのはしくれ、美人に食いつかないわけはありません。pizza生地をのせた手のひら写真に目が貼りついてしまんです。pizzaよりも美女に惹かれてしまうのは、私だけではないはず。
しかし、この三国のpizzaは食べてみたい、一品のようですね。
金沢に住む北陸人(生まれは甲賀)としては、今後オサチュンさんの北陸記行が読めないのは残念です。(実は最近読み始めたばかりなんですけどね。)
体に気をつけて、たとえ北陸に縁が遠くなっても、是非美味しい北陸の味覚を探求しにやってきてくださいね。
仕事してるのかとか、そんなん疑わんといてください。
削除してないもんだと信じてくださいね。
美女ですか?
美女と書いた限りは絶対に写真を載せたらダメ、あのブログはウソだらけと思われてしまうぞと、本人からきつく言われております。
彼女は甲賀市のことをよく知ってますよ。甲南も分かりますし、貴生川も分かります。
三国のバードランドは金沢からの客が多いそうです。
金沢も窪に真のナポリピッツア認定店「Salina」がありますが、ピザ好きの人は両店ともに常連のようです。
北陸はこれからもお邪魔しようと思っています。こちらこそよろしくお願いします。
そうですか、美女は美女のままで、私の妄想の中にしまっておくべきなんですね。
削除でも甲賀も貴生川も甲南も知ってる美女?やっぱり、一度見てみたい!
そうですか、金沢にも認定店あるんですね。まずは、金沢の認定店から行ってみましょう。