490kmのドライブで孫の聖太郎を訪問。新名神高速の草津田上ICから首都高速湾岸線の湾岸習志野ICまでを走りぬけました。
静岡県の三ヶ日JCTから御殿場JCTまで新東名高速道路を走ってみたら、見晴らしはいいし、車は少ないし、とばせるし、楽しめるSAばかりだし、かつてトヨタのキャッチフレーズだったFun To Driveという言葉を思い出しました。
東へ行くなら新東名だ!というレポートです。
昼行灯の高速を行く昼行灯夫婦
写真上:富士山。駿河湾沼津SA~御殿場JCTの区間
写真下:富士山。新清水IC出口
富士山がよく見えました。
よく見え始める頃から空が曇り始めて、すっきりとした姿を望めず、ちょっとおサムい光景にとどまったのが心残りですが、それでも裾野から頂上まで全容を現してくれました。
富士山は、静岡SAを過ぎて新清水ICに差しかかるあたりから見え始めました。「お、富士山だ」と喜んでいましたが、新清水ICから向こうでは防音パネルに妨げられる区間も長く、絶景とまではいきませんでした。やっと全体像を眺望できたのは、駿河湾沼津SAから御殿場JCTまでの間です。地名でいえば、富士宮市と裾野市になります。
妻お龍にカメラを任せ、60kmくらいまで速度を落としました。そんなに遅い速度で走っていても追いついてくる後続車は皆無でした。どれほど空いているのかよく分かります。
新東名は三ヶ日JCTで東名から分岐し、東名にほぼ平行する形で10kmほど内陸側の山間部を通過しています。このルートどりなら東海、南海、南東海の3地震連動発生時にも津波に飲み込まれる心配がないとNEXCO中日本は説明しています。
東海地方のヒト・モノ・カネは海側に集中しています。旧来の東名で結ばれるゾーンが社会活動の主要地です。大地震発生時には存在価値を発揮するであろう新東名も、平時の社会貢献度はイマイチで、いわば昼行灯です。東名の忙しさとは好対照です。
私たちが走ったのは平日の日中でしたから、新東名の昼行灯的性格がとくに目立ちました。昼行灯みたいな道を行く昼行灯みたいな夫婦。なのにこれほどまでに富士山が見えるだなんて、過分のご褒美です。
私って、富士山が大好きなんだよねえ。何度でも見ているくせに、いつも「あ、富士山だ!」と感激するの。どうしてかしら?
妻お龍がそう言います。富士山は本当に魅力的な山です。見始めるとずっと見てしまいます。東京出張でのぞみ号に乗っているときも、私は富士山の誘惑に打ち勝てません。
周りのサラリーマンが富士山に無関心でいるのは、あれはやせ我慢だと私は思ってきました。ここで富士山に心奪われているような男は負け組だ。企業に勤める人種は、そういう自己コントロールをなぜか好むからです。
新東名からの富士は車窓からの眺望に限られていました。東名ですと由比PAや富士川SAが好ポイントです。
絶景を誇るSAやPAがないのか・・・
いやあ、惜しいことです。富士の絶景スポットが待っているにもかかわらず交通量が少ないとか、おかげで絶景を独り占めできたとか、そういう事実があれば、至高の昼行灯体験でした。
NEOPASAには快適性の増幅効果がある
新東名のSA、PAは中味に凝っています。とくに、浜松、静岡、清水、駿河湾沼津の4箇所はNEOPASAと名付けられ、これまでに経験したことのないタイプのSAでした。
高速道路の休憩所に欠かせないものは、まずトイレ。その他には、フードコート、自販機、分煙設備といったところです。そして、不可欠というよりも利用者の需要に応える目的で、土産物や記念品を販売しています。犬と一緒の長距離ドライブ客も増えましたから、次第にドッグ・ランも充実してきました。
利用客数が見込めるロケーションであればあるほど、SAやPAが大型化し、多様化し、その典型としてEXPASAと称される多目的型休憩エリアが各地に生まれてきました。テナント形式の出店で多様性を演出するEXPASAは、イオンショッピングモールのフードコート階を高速道路に持ち込んだような商業施設です。
NEOPASAは、2012年4月の新東名開通と共に誕生した新しいタイプの休憩エリアですから、今回が初めてでした。EXPASAの進化系というばかりではなくて、商業主体のEXPASAでは為し得ない狙いがこめられているなと感じました。それは、休憩所に求められる基本機能を高いレベルで満たすことによって集客力をアップしようという発想のようにも見えました。
私が思ったのは次のような事柄でした。
★EXPASAが陥りがちなやりすぎを削ぎ落とし、にぎやかさの割には安っぽいEXPASAのニセモノ臭さを消し去ろうとしている
★1台でも多くという発想を駐車場からなくし、1人でも多くという発想をトイレからなくし、利便性とゆとりに重きを置いている
★県全域に共通する特産品を押し出すのではなくて、その地域に見合った持ち味をセレクトショップ的に伝えようとしている
★障害者、老人への気配りばかりか、エリア内の歩行者にも安全な設計が施され、車のための施設よりも人のための施設を目指している
★高速道路の休憩所なのにここまでやるのといった本格的店舗もあり、EXPASAには見られない大胆さを発揮している
その結果、本当に気分転換のできる休憩施設が出来上がったと思います。それぞれのNEOPASAから与えられた心地よさのおかげで、長距離ドライブの疲れをそれほど感じなくて済みました。とくに、車の動線をよく考慮したユーザーフレンドリーな駐車場と、オシッコやウンコってこんなにオシャレなもんだったのかと思わせるトイレが秀逸です。
風光明媚なハイウェイを走る快適な心理がSAやPAの俗っぽさで途切れる不満を何度も経験してきましたが、新東名にかぎってはそれがありませんでした。むしろ、快適なドライブをさらに快適にするブースト効果を有していました。
NEOPASA浜松。ヤマハをはじめ大手楽器メーカーがひしめきあう浜松では、建物の壁にまでピアノの鍵盤が描かれていました。浜松だからといって名物のウナギに依存しきるのではなくて、新たな切り口による地域の売り込みです。
NEOPASA浜松。静岡県産の高級メロンであるクラウンメロンが、2160円という破格の値段で販売されていました。説明書きを読むと、外見に難があるけれど味の点ではなんら遜色のない「わけあり品」だとかで、レストランやホテルではこういう格安品が多用されているそうです。
NEOPASA浜松。ヤマハが設けた常設ブースには、ピアノコンサート映像に合わせて自動演奏を聞かせるピアノが置いてありました。浜松という地域には、サービスエリア内にこういう非実用的空間を作ろうかという企業があるわけで、これも地域特性のアピールです。
NEOPASA浜松。表示がそのままいいデザインになったトイレ入り口です。直感的に把握できる分かりやすさに加えて色使いも美しく、オシッコやウンコのイメージが変わります。
NEOPASA浜松。とても小さな子供用がキッズルームにありました。大人用の便座に子供を座らせるには補助具が必要ですが。子供専用に作られたこのサイズなら要りません。ウォッシュレットではないことに注目。ウォッシュレットの発する音に怯える子供がけっこういます。
NEOPASA浜松。各NEOPASAの駐車スペースは大型と小型に必ず分かれています。挙動や視界が大いに異なる大型車と小型車が同じ駐車場内で行き交うこともなく、お互いにとってフラストレーションの少ない環境です。それぞれの駐車スペースごとにトイレと喫煙所が用意されています。
遠州森町PA。駐車枠の区切り方を見れば分かるように、斜め方向から入ります。手前側の枠は前進で入りやすく、奥側の枠は後進で入りやすくなっています。前後に連なる駐め方だとバックしすぎて他人の車にぶつけるおそれもありますが、このような駐車枠の並び方だとその心配がありません。駐車枠の片側は必ず歩道につながっていて、車を降りてから駐車場内を歩いて施設に向かう危なさが排除されています。ゆとりをもった設計が駐車時のストレスを減らしてくれます。
遠州森町PA。Mappleで紹介されていたとろろそば。自然薯と遠州蕎麦の組み合わせです。高速道路のPAで食べる蕎麦と侮るなかれ。町中でも通用する味です。袋井市に本店をもつ「仙の坊」という蕎麦屋がこのPAに出店しています。
NEOPASA静岡。conciergeと表示された案内カウンター。狭いカウンターに近寄っていって地図だけもらうというイメージはもはやありません。新東名のNEOPASAにはすべてconciergeがあって、
NEOPASA静岡。静岡市にはTAMIYAの本社、BANDAIの工場があり、世界でも有数の模型産業都市です。市内には静岡ホビースクエアがあります。その地域特性をアピールすべく、ガンダムグッズやプラモが展示販売されていました。
NEOPASA駿河湾沼津。駿河湾の展望をウリにするこのSAには多くの利用客の姿がありました。凝った建物の内部には、駿河湾の深海魚を飼育する水槽やGaspard et lisaのカフェなどがあります。
NEOPASA駿河湾沼津。沼津港深海水族館がミニ水族館を常設していて、オウムガイをはじめ数種類の深海生物を見ることができます。駿河湾の最深部は2500mもあって、湾としては日本一の深さです。深海生物の宝庫だとされています。
NEOPASA駿河湾沼津。ドッグ・ランにとどまらず、ドッグ・カフェ併設のペット用品店までSA内にこしらえてしまいました。ここでわざわざペット用品を買う人がいるのかなと思いましたら、想像以上に混み合ってました。
NEOPASA駿河湾沼津。駿河湾を一望できるはずでしたが、あいにくの曇り空と夕刻の光量不足が重なり、この程度の眺望でした。よくいえば墨絵、わるくいえば安物の携帯写真です。山影は伊豆半島の付け根です。
NEOPASA清水。帰り道に寄りました。下り線、午前0時過ぎの光景です。建築美はむしろ夜の照明で際立ちます。この写真でぐっと前に張り出している部分、メタリカルな建材で覆われた部分はトイレです。
NEOPASA清水:浜松市に本社を置くバイク用品メーカーのKUSHITANI JAPANが店舗を展開。ライディングのレッスンも行われています。SA外からも入店可能なこの店舗ではレンタルバイクも貸し出しています。
NEOPASA清水。トイレの洗面台。粗チンをちょっと触っただけなのにここまでしていただくなんてと恐縮するほどのデザイン性でした。
新名神と新東名のおかげでスイスイ
聖太郎のところまでHow much?
お龍の計算によりますと、JR新幹線を使った場合、ふたりの往復運賃が6万円くらいになります。車で往復した場合、ガソリン代+高速料金で3.7万円です。深夜割引の時間帯に走れば3.0万円です。
おとうさん、いま仕事ないし、クルマで決まりだネということになりました。渋滞が皆無、休憩も必要最小限だとすれば、5時間以上6時間未満のドライブで聖太郎に会えます。
滋賀県の草津田上ICと三重県の亀山JCT間に新名神が通って以来、愛知県豊田JCTまでの距離と時間が一気に短縮されました。新名神→東名阪→伊勢湾岸→豊田JCTを結ぶこのルートは、名神を走って岐阜県を通るよりも50km短く、30~60分早いというメリットがあります。豊田JCTまで行ってしまえば、新東名への分岐点である三ヶ日JCTまではあと50km、30分程度です。
名神や東名は交通量がハンパではないだけに、渋滞や事故が生まれるリスクも高く、それに加えて、坂道やカーブといった道路設計自体が古いこともあり、決して楽に走れる道ではありません。今回、新名神と新東名を走ってみて、やはり新しい高速道路は何かにつけ運転しやすいと実感しました。
新東名は御殿場JCTで終わり、再び東名と合流します。そこから東京まで90km足らず、1時間弱です。都心の首都高で混雑に巻き込まれたくなかった私たちは、横浜町田ICで東名を下り、保土ヶ谷バイパス→横浜新道→首都高速湾岸線のルートで海方向から習志野市を目指しました。
おとうさん、あれがディズニー・リゾートだよとお龍に聞かされたのが浦安でした。聖太郎の待つ(待っとらへんかもしれんけど)習志野はもうすぐそこでした。
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