と、うちの妻お龍から感謝されました。
こんなこと滅多にありません。
何もしないことを楽しめる場所
私もローザンベリー多和田は初めてでした。
広い洋風庭園があることだけは国道筋の広告板を見て分かっていました。お龍は花好きですし、ベランダで花を育てていますから、新緑のこの時期に本格的な洋風庭園を見るのもいいなと、そんな動機で出かけました。
体験型観光農園ーーーローザンベリーは自らをそう位置づけています。ホームページとパンフレットには、野菜の栽培や収穫、果物の摘み取り、羊とのふれあい、木工やフェルトなどのクラフト講習、パン・ピザの手作り、ガーデニングの技術指導などが掲載されています。バーベキューまでが農業体験に位置づけられていますが、これは、その日に焼く野菜を畑で収穫するところから始まるからです。
この日、私たちは午後3時頃に到着しました。閉園は5時です。平日でしたので、体験型イベントは開催されていませんでした。2時間という短い滞在時間のほとんどを庭園散策に費やしました。
ここは、ただ歩いているだけでも心が満たされる場所でした。「小さな恋のメロディ」の挿入歌だった「若葉の頃」がどこかで流れているようで、浮き浮きしながらも落ち着ける空間でした。何もしないことを楽しめる場所だと思いました。体験型イベント参加者を集めたいローザンベリーのビジネスとは逆指向になりますが、よくできた場所では何もしないほうがかえって心地いいものです。
では、百聞は一見に如かずと言いますし、どんなところなのかまずは写真でお伝えしたいと思います。見ていただければ幸いです。
ローザンベリー多和田で写した写真のスライドショー
池をめぐりつつ趣の異なる庭の姿を楽しむ
ここの庭園は、大きな池をぐるりと取り囲む配置になっています。ガーデンの全体図がホームページには掲載されていませんので現地でもらう園内ガイドの図を転載しました。
池の周囲のヒマラヤ杉や桜並木は、ガーデン化以前からすでにあったそうです。その魅力をそのまま生かしつつ、池をめぐる遊歩道沿いに趣の異なる7種類の庭を配してあります。
背の低い山野草に気づくたびに足を止めていると、その繰り返しだけで時間は過ぎて、池一周は次回の宿題となりました。
ローザンドベリーを経営するメリーデイズ株式会社の大沢恵理子社長が大の山野草ファンだそうです。新緑だけが季節じゃないと控えめな声で主張するけなげさに私たちも心惹かれました。
私たちは、下図の①②⑥を歩きました。
ベニシアさんやターシャさんの庭のカレンダーがうちにありますが、あのように誰の目にも明らかなイングリッシュガーデンというのでもなく、入場料600円だからといってひと目で金のかけ方が伝わるわけでもなく、歩くうちによさがジワジワときます。いわば噛みしめるほどに味のあるスルメ型です。
日本庭園のような精神性重視型ではありませんが、たたずまいのよさを見つけながら歩く庭だと思います。季節の花々が咲き乱れてあなたをお迎えしますといった公園の花壇的光景を想定していると期待外れに終わる可能性が高いと思いました。
あれ、ま、社長さんでしたか
ローザンベリー多和田はとても広いところです。敷地は13000平方メートル。体験型観光農園というくくりならばまだ広い施設もあるのでしょうが、ガーデン施設としてみれば西日本一の広さだそうです。
ここを経営するのは、前述した通り、メリーデイズ株式会社で、社長は大沢恵理子さんです。この広大な土地はご主人から譲り受けたものだそうです。
恵理子社長は根っからの農業好きなのか、スタッフと何ひとつ変わらない野良着姿で園内を歩いておられました。あまりにも気軽に声をかけてこられたので、この人がオーナーだとはまったく気づかないままに話していました。(「野良着だなんて、おとうさん、何を言ってるの。あんなオシャレなかっこうでガーデニングやる人はいないよ」とお龍。「革のエプロンだよ、分からなかったの?白いシャツも素敵だったじゃない」とのことでした)
この場所が本当に気に入ったと伝える私たち。綿毛のような白い花を咲かせた木はアオダモの仲間でなんとかトネリコだと教えてくれる社長。「こんなにすばらしい庭園は滋賀県の誇りだ」とまでお龍が言うもんですから、社長は身分を隠したまま大喜びでした。
閉園間近の園芸コーナー。あの人が社長ですとスタッフから聞かされてはじめて分かりました。「そういえば、ええ長靴履いてはったなあ」と思った次第です。社長がそのようなお人柄だからなのか、これみよがしな庭造りではなくて、肩の力が抜けたような親しみやすさがありました。
ただ、そのスタッフは、まだまだ作り込まなければならない、目の肥えたお客さんを満足させるまでには至っていないと、謙虚な姿勢を示していました。
ご夫妻で農業事業を展開
恵理子社長にこの地を任せたご主人というのは、大沢ホールディングス株式会社代表取締役の大沢泰造さんです。大沢ホールディングスのホームページを見ると、不動産と農業が事業展開の二本柱だと分かります。メリーデイズは農業事業の子会社として大沢ホールディングス傘下にあります。
そのご主人から広大な土地を任されたといっても、その当時は採掘現場の跡地だったそうで、いわば荒れ放題の空き地でした。ローザンベリー多和田のホームページは次のように述べています。
初めて見た多和田の地は見渡す限り雑草に覆われ、どこに何があるかもわからない状態でした。(中略)背丈ほどもある雑草やコンクリートのように固い土に悩まされ、たくさんの失敗や自然の脅威を体感し、自然からたくさんのことを学び共存する意味を知りました。
ご主人の大沢泰造さんご自身は、2006年から、ニュージーランド北島で「大沢ワインズ」というワイナリーを経営しています。よそから買い付けたワインを商品化するネゴシエーターではなくて、43ヘクタールのブドウ農園を有する自家栽培ワイナリーです。つまり、ご夫妻揃って農業事業を展開していることになります。
泰造社長はワイン生産を「Agricultural adventure」と表現されています。その表現を真似れば、奥さんの恵理子社長が追い求めるのは「Agricultural dream」かもしれません。恵理子社長は、ホームページで以下のようにおっしゃっています。
当たり前のように食べているもの全てが安全なわけではないこと、だからこそ多くの人に安全なものを食べる幸せを感じてほしい。また農業の尊さや人と自然とのつながりを多くの人に伝えたい。
ローザンベリー内には大沢ワインズの直営店が併設されています。運転だったので試飲できないのがとても残念でした。2008年にファーストヴィンテージを出荷してからわずか数年のうちに、ニュージーランド北島をはじめ、その他世界の様々なワイン品評会で受賞実績を挙げてきたそうです。
長浜市の黒壁スクエアで見かける「黒壁ワイン」も大沢ワインズが手掛けています。大沢ワインズのホームページが自社のリザーブクラスに相当するワインだと紹介しています。ひょっとしたら黒壁ワインのコスパは高いのではないでしょうか。
ARATAKI HONEYを買う
このワインショップにはARATAKI HONEYも売られていました。ARATAKI HONEYはニュージーランド北島のHawke’s Bayを本拠地とする会社で、大沢ワインズとはわずか33kmの近さです。そのアドバンテージか、ここのARATAKI HONEYは大沢ホールディングスが輸入元になっています。
大沢恵理子社長から直々に奨められたのは、マヌカハニーでした。社長自身、ピロリ菌抑制の目的で毎日ひと匙飲んでいるそうです。
マヌカは「薬の木」とも呼ばれるハーブですから、ちょっと薬臭いというのか、蜂蜜としてはクセのある味がします。健康のためにはマヌカだけれど使い道の広さでは他の蜂蜜とのアドバイスに従って、マヌカとクローバーブレンドを買いました。
試食してみても、たしかに社長の言葉通り、マヌカは普段使いには無理のある蜂蜜でした(価格の点からも。250g2268円)。
ARATAKI HONEYの試食コーナー
左がマヌカハニー、右がクローバーブレンド。マヌカハニー250g2268円はどのインターネット通販店でも共通
お龍は恵理子社長の実技指導会に参加
明日(5月4日)、お龍は、「オーナーErikoのギャザリング教室」という実技指導に参加します。ギャザリングというのは寄せ植えのことだそうで、小型ポットに5株も6株もの花を植え付けるコツを学ぶそうです。花の成長過程で起きてくる型崩れを栽培土の工夫で防ぐなど、寄せ植え成功には何かと裏技があるようです。
園芸コーナーに掲示されたオーナーErikoのギャザリング教室お知らせ
といったことで、私はお龍に13000平方メートルもの土地を譲渡することはできないけれど、もし譲渡できたらこんな夢のあるビジネスが広がるんだぞという実例を示すことはできました。
1970年代のアウトドアー・ブームが過ぎてからずっと私のなかで死語になっていた言葉、Low Impact。環境へのダメージが小さいことを言い表したものですが、造園以前から存在した大地の力を敬うローザンベリーのポリシーに触れて、久しぶりにこの言い方を思い出しました。
園内の雑貨店で見つけたホーロー製カップ(320円)
ご来園ありがとうございました。今日の黄色い帽子、オシャレでしたね。奥様のギャザリングもステキなのが出来てよかったです。それにしてもローザンベリーを、こんなにもほめて頂き恐縮です。お二人にずっと愛されるローザンベリーでいられるよう精進いたします。これからもよろしく。
返信削除コメントありがとうございます。
返信削除教えていただいて、おかげさまで雰囲気のある寄せ植えが自分にもできたと、妻お龍が喜んでいます。ありがとうございました。
恵理子さんこそ、ガーデニング時のファッションにさりげなく凝っておられるそうで、妻お龍からどういうアイテムを身につけておられるのか聞きました。
あの黄色い帽子は、近江八幡市の高木美奈子さんに作ってもらいました。
八幡堀沿いの「アトリエキーメン」という店で、毎月オーダー会をやっています。
ひとつ8千円程度ですので、恵理子さんのガーデニング・アイテムのひとつにしてもらえたら、美奈ちゃん大喜びだと思います。
バラの時期が5月中旬から下旬と聞きました。ぜひ行きたいと思っております。
こちらこそよろしくお願いします。
夏の帽子を作りたいので、また紹介してください。
返信削除恵理子社長、美奈ちゃんに連絡とります。
返信削除オーダー会は土曜・日曜ばかりですので、恵理子さんが忙しいと思うんですよ。
どうしていただくのがいいか聞いてみます。
なお、帽子のことは、http://osachun.blogspot.jp/2014/04/blog-post_27.htmlの記事を見ていただいても、アクセス先が分かります。
恵理子社長、美奈ちゃんがすごく喜んでました。
返信削除美奈ちゃんと連絡をとった結果を、ローザンベリーのお問い合わせメールに送りました(ここは誰もが見られる場所ですので)。