5000円程度でおいしい昼食。
15時まで居続けられる。
7人~8人が同席できる。
地域は左京区。
この条件を満たす店はいずこに。
候補店を探して回る仕事が生じたことを、平八茶屋の記事でも書きました。
その探索第2弾として、北山モノリスにやってきました。
北山モノリスのホームページは http://www.novarese.co.jp/kym/restaurant/です。
余裕の空間
北山モノリスは、小さな結婚式場です。
婚礼のない平日は、披露宴会場をレストランとして活用し、ランチ営業を展開しています。
北山モノリスのランチを実際に経験してみまして、さすが結婚式場だけあってもてなし術に長けている、いい気分にしてもらったなあと、その点がもっとも印象に残りました。
結婚式場のランチ営業といえば福知山のサンプラザ万助しか知りませんでした。サンプラザ万助に何回行ってもこんな気分になったことがありません。
小さいとはいっても結婚式場ですから、人が集まるための設備です。ランチのための場所として見たときには充分すぎるほどの空間があります。この余裕が魅力です。
いや、たしかに、ホテルならもっと広いわけですが、ホテルに入れば雑多な客が雑多に集まってきています。私のための空間という感覚に浸りにくい。
その点において、ここはランチの客以外には誰も入りませんから、スペシャル感がホテルより上ではないかと思います。
ランチ時間帯の場合は、結婚式場というよりもゲストハウスと言ったほうが空間の質を想像しやすいかもしれません。
もてなしに特化された組織の強み
おかけになってお待ちください。ただいま係の者がご案内に伺います。
この人いつも散髪したてやないかというくらいにきちんとしたスタッフからそう告げられました。
ロビーの椅子に腰かけていましたら、レストラン方向から女性スタッフが迎えに来てくれました。あんた頭に本のせてないかというくらいに姿勢のいい歩き方でした。
接客の丁重さがスタッフの立ち居振る舞いからすでに始まっています。ランチ向けに人の質を下げてこないところがありがたい。
レストランは --- というよりも披露宴会場ですから --- テーブルのレイアウトがゆったりしています。
外の景色は、どのようにシャッターを切ろうがいい記念撮影になってしまう庭です。
設備、人材、手順。来客に心地よい時間を提供するための方策を組織として実行していくわけです。ランチ客にもその組織全体で接するのですから、個人経営の飲食店と一線を画すのは当たり前です。
大袈裟すぎるほどの丁寧さを少しくすぐったく感じながらも、持ち上げてもらったらやっぱりわるい気はしません。
4200円でもけっこう豪華
ランチは、紅葉4200円、山茶花6300円、長月8400円の3コースでした。9月のメニューだと説明を受けました。ひと月単位で内容を変えるそうです。
高いコースを注文したテーブルには、前菜を盛り合わせた篭にススキの穂が飾られていました。
各コースに500円プラスしますと、スイーツのワゴンから好きなものを選べるというサービスがあります。遠いテーブルの女性二人組が何種類も皿に載せていました。
スイーツ20個くらいペロリと平らげる母娘を知ってますが、教えてあげたいくらいです。
私には予算5000円という制限がありますから、紅葉4200円を選びました。内容は下記の通りです。
食前酒
パッションフルーツ
先付
名残り鱧玉地蒸し
前菜 初秋の前菜盛り合わせ
・菊花浸し 酢橘絞り 菊菜 榎木茸
・秋鯖焼き目寿司
・新栗旨煮
・石川芋衣かつぎ
・柿白和え 丁子茄子
・枝豆(紫頭巾)掻き揚げ
・落花生豆腐 旨出汁 山葵
・秋茄子翡翠煮 糸賀喜
椀物
南京摺り流し
南瓜の種 青柚子
お造り
戻り鰹焼霜造り
~特製トリュフポン酢と彩り野菜と一緒に~
主菜
秋刀魚肝醤油杉焼き 半熟たまご添え 酢橘
炎の残る杉板を秋刀魚にかぶせて香りを移すという演出
食事
【モノリス名物 釜炊き御飯】
天然琵琶鱒とイクラの釜炊き御飯
琵琶鱒はいまが旬です。御飯の量はお茶碗3杯分。腹いっぱい
甘味
無花果のロース ト
~ 巨峰の香りと共に~
たとえば、お造りですと、「戻り鰹でございます。鰹は初鰹がおいしいとよく言われますが、この時期の鰹は戻り鰹と呼ばれ、脂もよくのっております。おいしく召し上がっていただけるかと存じます」といった風に話してくれます。
結婚式場ですから、ランチにすらサプライズが用意されていました。一度は客をびっくりさせないと仕事をした気になれないのかもしれません。
女性スタッフが、銀色に輝く大きなボウルをうやうやしく運んできました。ボウルの縁から噴き出たドライアイスの白いスモークが床へと落ちていきます。
ボウルの中は生まれたての雲のような白いベールに包まれています。その雲の上にスカイツリーの如く頭を出すのはエビカボチャのすり流しでした。
京都のどこかから「あほくさ」という声も聞こえてきそうです。けど、私はこういうの大好きですねえ。
ドライアイスの雲からそびえるエビスカボチャのスカイツリー。ドライアイスは不思議です。派手に気化させれば結婚式用、なるべく気化させないように新聞紙でくるめば葬式用
食べ終えてレストランを見渡せば、調理場と披露宴会場が大きなガラス窓で仕切られていました。料理を受け持つスタッフが披露宴の進行状況を目でしっかり把握できる仕組みです。
NON STYLEの井上に似たスタッフが、「お客様のほうからも調理場の様子が見えますから、ウソはつけません。作りおきなどしておけません」と誇らしげに語ります。
料理に自信がなければできないことです。
あんたが先にそれを言うてしもたらあかんやないか。それを客に言わせんと。
けれども、「料理に自信あり」でいいと思います。
直球勝負とか、職人技とか、そういう重厚な形容が似合う和食ではありません。感心させて平伏させる和食ではなくて、心を浮き浮きさせる和食です。
手間もかけてあります。それぞれの品がそれぞれのおいしさです。
華やかさと楽しさを演出する披露宴向けのノウハウがランチにも生かされているのだと思いました。
NON STYLE。井上は右のほうです
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