石川県の特筆事項がいくつもあるなか、忘れてならないのが、大の風呂好きを自負して止まぬ県民性です。老いも若きもお嬢もぼんも、風呂をレジャーとして楽しむ積極性は日本一といっていいでしょう。
テルメ金沢は大駐車場がいっぱい
この日は、富山まで日帰りの仕事でした。高速だけでも往復でおよそ600km。背中や腰が疲れすぎています。テルメ金沢でリラックスしてから帰りたいと思いました。大型スーパー銭湯にはこと欠かない金沢市ですが、テルメ金沢は別格の大規模施設です。
ところが、テルメ金沢に来てみたら、広大な駐車場に空きスペースが1台も見当たりません。枠のない場所にまで車が置いてあります。私と同じように、空いている駐車枠を求める車が数台、何回もグルグルと巡回しています。金曜日の夜に混むのは片町の飲み屋街だけではなかったのか。
テルメ金沢の公式ホームページをご覧いただければ分かってもらえますが、それはそれは、大きなスーパー銭湯です。下の画像をクリックしてもらえば公式ホームページにジャンプします。
とにもかくにも、この大型施設が満杯になってしまう。石川県民がどれだけ風呂好きかを目の当たりにする気分でした。12月27日までキャンペーン価格実施中(大人1050円→600円)ということもあるのでしょう。
しかたない。あきらめました。小松インターを下りて地道を加賀市まで走り、「ゆめのゆ」に寄って帰ることにしました。
サッカー日本代表を風呂から応援
小松インターから国道8号線バイパスまでは、小松の市街地を通りぬけていきます。気になる飲食店を何軒も置き去りにしながら、バイパスに入りますと、ラーメン屋と焼肉屋の反復路線。ラーメン屋→焼肉屋→ラーメン屋→焼肉屋と、一定の規則正しいリズムで現われては消え、現われては消え。ときとして彩りを添えるのが、うどん屋と中華料理です。
小松市から加賀市にかけては、加賀温泉郷と称されるエリア。片山津、山代、山中、粟津の加賀四湯を擁しています。その四湯に対していずれも等距離といった加賀市箱宮に「ゆめのゆ」があります。テルメ金沢とは比較にならないほど小さな規模ですが、加賀温泉郷エリア内に位置するところが私には魅力です。貧乏人の名湯というべきでしょう。
ゆめのゆ公式ホームページは、http://www.yumenoyu.net/kaga/です。
おりしも、サッカー日本代表が、グアテマラ代表と親善試合をやっていました。前・後半を通して浴槽のなかで見たのは初めてです。風呂の壁にテレビがあるんですね。ハーフタイムに身体と頭を洗って、前半は室内、後半は露天で観戦しました。
数値指標だけなら風呂好き日本一は青森県
NTTタウンページが、「日本一、お風呂好きの都道府県はどこ?~温泉・銭湯から入浴文化をたどる~」と題されたデータを、提供しています。NTTの独自調査ではなくて、総務省の「都道府県庁所在地および政令指定都市1世帯(総世帯)の『温泉・銭湯入浴料』年間支出金額(2011年)」をアレンジしたものです。それによりますと、1世帯あたりの「温泉・銭湯入浴料」支出年間金額(2011年)は、全国平均2,426円に対して、
1位 青森市(7,604円)
2位 富山市(5,478円)
3位 松山市(4,980円)
となっています。金沢市は4位につけています。以下、5位大阪市、6位甲府市、7位鹿児島市・・・と続いていきます。
タウンページデータベースから転載
青森県は、銭湯に恵まれた県です。3年間ほど暮らしたなかで、天然温泉の公衆浴場がどこにもあるのには驚きました。ほとんどの風呂が天然の湯だったと思います。公衆浴場料金ですから、当時はたしか250円くらいで入れたはずです。どこの風呂も地元の人たちによく利用されていて、それも印象的でした。
ただ、青森県の人たちが日本一のお風呂好きかといえば、ちょっと違う気がします。好きというよりも、公衆浴場を地域とのつきあいに活用するなど、実用的にうまく温泉と付き合っているように見えます。少なくともレジャー的ではありませんでした。
青森県では、天然湯の公衆浴場に恵まれた環境に加えて、それに、農閑期を湯冶に充てる習慣も古くから根付いています。温泉と暮らしの距離が日本一短い県だといえます。その短さが、利用度の高さを生み出し、その結果としての日本一ではないか。私はそう考えています。
2位の富山県は、日本第2位の持ち家率を誇ります(2005年の統計では79.8%と日本一でしたが、2008年に秋田県に首位の座を明け渡しました)。にもかかわらず、温泉・銭湯に使うお金が日本で2番目に多額というのですから、ちょっと不思議な事実です。
この不思議さについて、私は、1世帯あたりの自動車保有台数から説明がつかないものかと考えています。実は、富山県と福井県は、1世帯あたりの自動車保有台数が1.69台で、ともに全国一なのです。
この数値の裏側には、女性ドライバーの多さがあります。女性が実によく働くんです。公共交通機関は不便ですし、冬は雪国ですから、働く女性は通勤の車を必要とします。富山県では30歳前後の女性の持ち家率が50%を超えているといいますから、かなり女性が頑張っている証です。
そのような事実から想像できるのは、温泉・銭湯で心身のリフレッシュを図ろうとする女性たちの姿です。
平日の夜に、あるいは、休日に、せめてお風呂くらいゆっくりと望んで健康ランドやスーパー銭湯に軽自動車で乗り付ける。週に1回くらいは行く。そんな女性像が目に浮かびませんでしょうか。
そして、富山県の共稼ぎ率の高さがあります。余談になりますが、かつて魚津では、とうちゃんYKK・かあちゃん労災病院の看護婦さんというコンビネーションが、もっとも収入の多い共稼ぎパターンといわれたものです。
共稼ぎ率の高い富山では、結婚してからの女性が、今度は働き者のかあちゃんとして、家族を温泉・銭湯に引っ張っていく。その傾向も充分に想定できます。
その受け皿としてのスーパー銭湯や健康ランドは、富山県も石川県も、ほんとによく揃っています。家族で出かけますと、子供はアイスクリームを欲しがりますし、お父ちゃんはビールでしょうし、お母ちゃんもたまにはマッサージしたいでしょうし、思ったよりも出費はかさむものです。いきおい、1世帯あたりの温泉・銭湯入浴料は跳ね上がる。
富山県の第2位には、いま述べてきたような複合的な背景があるように思えてなりません。
3位の松山市は、あの有名な道後温泉の存在で説明できそうな気もしますが、眉唾ではないかという気もします。道後温泉の銭湯は観光客にも人気です。観光客の入浴料までが上乗せされた数字を地元の世帯数で割れば、実像以上の数字が生まれる可能性もあります。
数値では語れない石川県民のお風呂好き
ところが、4位の石川県となりますと、私はどうにも理屈で説明できません。1位から3位までは、中味は間違っているかもしれないけれど、一応理屈をつけることができました。
しかし、石川県民のお風呂好きは、あかごの魂百まで的なものに思えてならないのです。
「nanapi」というサイトが、「相手が石川県民なのか見分ける方法」を紹介しています。見分け方のなかに、<家族風呂に入ったことがある>との1項目があります。
「『家族風呂』とは、貸切風呂のようなものです。旅館などではなく普通の銭湯に併設されていて、一人1000円未満程度で入浴できる、手軽な家族/カップルのためのレジャー施設です。全国的な状況はわかりませんでしたが、石川県は家族風呂の発祥の地といわれ、家族風呂のある銭湯が多いので、きっと入ったことがあるはずです」と、そのサイトは解説を加えています。
数値による指標よりも家族風呂の普及度のほうが、よほど石川県民の風呂好きを雄弁に物語るのではないかと、私は思います。
金沢市の場合、有名観光地として、北陸3県の中心地として、ヒト・モノ・カネが集中し、人口がたった46.5万人とは思えないほどの消費型都市が発達しています。話は少しズレますが、歴史から消費まで、自己完結的に揃っているところが金沢の魅力だと思っています。
そんな金沢ですから、お風呂以外にも金の使い道や時間の使い方がいくらでもあります。にもかかわらず、それでも温泉・銭湯にかける金額で全国第4位につけてくる。これを生活エンジョイ型の風呂好きと言わずしてなんと言えばいいのでしょうか。
金沢のスーパー銭湯へ行けば、大学生から30歳くらいまでの若者グループも多くて、「あんたら、風呂でええのん?」と尋ねたくなるくらいです。めちゃ美人の女医さんまで、「私もよく行きますよ」と言ってました。
駐車場が満杯に膨れ上がったテルメ金沢を後にしつつ、石川県民こそ日本一の風呂好きだと確信した次第です。もちろん、その日本一は、数字に現われる日本一ではなくて、心の浮かれ方を尺度にした日本一です。
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