2013-07-02

ロ・スプレンドーレ(滋賀県草津市) 手もみ屋となりのナポリピッツア!

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 友達夫妻に誘われて、地元滋賀県草津市の「Lo Splendore(ロ・スプレンドーレ)」へ行ってきました。
 友達夫妻は、実際に行った人から「おいしいよ」と聞いたそうです。薪窯で焼き上げるナポリピッツアを売りにしている店です。
 6月、夏至から1週間を過ぎた薄暮の時間帯、花が咲き揃ったオレガノに水をやってから、気の合った友人夫婦とぷらりと出かける。目指す先にナポリピッツア。これはなかなかのハッピーアワーズです。

 

シェフ個人技のミドルシュート


 シェフはイケメン。友達夫妻はそう聞かされていました。

 キッチンに立つシェフの横顔は、サイドに流した髪に彫りの深い顔立ち。サッカーイタリア代表のロッシにどこか似ています。フリーにさせたらミドルシュートをどんどん撃ってくるヤバい奴。そういう積極果敢さも隠し持っているようでした。

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 店は「ほっかほか亭」と「てもみ屋らくだ」に挟まれています。両方とも黄色の看板で、カナリヤ軍団の異名をとるブラジルチームのようです。この二人のディフェンダーにここまで身体を寄せられては、名手ロッシもそうたやすくミドルシュートを放てません。

 いかがですか、セルジオさん。
 いや、撃たないことには入りませんから。ここはシェフの個人技に期待するしかないでしょう。

Lo Splendore URL=http://www.lo-splendore.com/index.html

リコッタの甘みが魅力的 クアットロ・フロマッジ


 私たちは2種類のピッツアを注文しました。ピッツアの他にもいろいろ食べたかったので、おひとり様1枚はやめました。

 友達夫妻はクアットロ・フロマッジを選びました。1800円、下の写真です


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 このピッツアがブログに登場するたび、私はチーズの4輪駆動と言っています。具材がクアットロ(4種類の)フロマッジ(チーズ)だからです。ロ・スプレンドールでは、モッツァレラ、ゴルゴンゾーラ、タレッジョ、リコッタの4種類を使っています。

 意図的にゴルゴンゾーラを少なくしてあるのか、マイルド感に支配されるクアットロ・フロマッジでした。ゴルゴンゾーラの塩っ気と刺激的風味を好むチーズ通にはもの足りないかもしれませんが、誰が食べてもおいしいと言える点ではこちらです。

 アクセントは、リコッタのミルキーな甘さでした。加熱によって生クリームのようにとろけたリコッタが、舌のどこかにぽろりと落ちます。モッツアレラのほんのりとした甘さが朝の牧草のように広がるなか、草についた水滴のようにきらりと光るのがリコッタの甘さです。

わずかにミスがあったか? マルゲリータ DOC ビアンカ


 私たち夫婦は、マルゲリータ DOC ビアンカを選びました。
 1500円、下の写真です。

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 具材はセミドライトマト、モッツァレラ、バジリコ、リコッタです。トマトソースを使ってありませんから、モッツアレラとリコッタの白い色がそのまま表面を飾ります。

 妻お龍は大満足していました。

 いっぽう私は、ほんのわずかながらですが、もの足りなさを感じました。あれ・・・表面乾きすぎかな?
 感じ方ひとつのことです。現にお龍は大満足。私がうるさすぎるのだと思います。

 焼くときに小さなミスがあって具材の加熱がいきすぎてしまったのかもしれないと思いました。コルニチョーネ(額縁のような外周部)の一部に火ぶくれめいた膨れ方。セミドライトマトの位置的な偏り(写真はレンズの関係で大袈裟に写っていますからあまり参考にはなりません)。
 実物を見たときの感じ方として、これまでに食べたピッツアに比べるとちょっと出来損ないの気がしました。

 コルニチョーネは、ナポリピッツアに不可欠とされる要素です。職人の指先は外周部に空気を追いやるように生地を延ばしていきます。外周部にはおのずと縁が生まれ、それがふっくらとしたコルニチョーネにつながります。Pizza Napoletanaで画像検索しますとピッツアの写真が際限なく出てきますが、コルニチョーネはまさに職人ごとの個性だなと思います。

 ここのシェフは、両手の指先で生地全体を持ち上げ、クラゲのような形にしながら丁寧に成形していました。にもかかわらず、外周の一部だけがここまで膨れ上がってしまったのは、なにか焼くときの手違いのようにも思えます。

3人で切り盛りする忙しさ


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 窓ガラスにキッチンが映ります。シェフの他には未来の巨匠クンがいるだけです。たった二人で調理を進めています。
 この未来の巨匠クンは、アンガールズくらいに身長が高くて足の長い男で、キッチン台が低すぎるのか身をかがめっぱなしで作業しています。

 フロアー担当は笑顔のかわいい女性です。ひとりでやっています。私はあの笑顔がすっかり好きになって、「この店にとってあのコの存在は大きい」と主張するのですが、他の3人はあまり同調してくれません。なんの、私が若い女性に甘いのではない。彼らの眼力不足です。

 たった3人で切り盛りする店内は忙しそうでした。
 キッチン内を二人が動き回っています。シェフはしきりに注文メモを確かめて調理の順序に無駄が生まれないように注意を払っています。未来の巨匠クンは長身をかがめたまま盛り付けを続けています。
 フロアー担当の女性も何かと気配り、目配りの多いなか、顔を上げたら必ず笑顔。こりゃやっぱりたいしたもんだと思います。
 料理が出てくるのに時間はかかるのですが、あれだけ一生懸命な姿を目の当たりにしたら文句言えません。

 私たちの他には、あとふた組がいました。うちひと組は5歳くらいの男の子を持つ家族連れでした。店に聞いたら子供同伴でいっこうにかまわないそうです。

 その人たちの乗ってきた赤い車と黄色い車が、国産車ながらも店の前をイタリアンな雰囲気に変えています。

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4人で10品を食べた もうおなかいっぱいです


 けっこうあれこれ食べました。ピッツアを含めて10品です。4人いたら品数を頼んでシェアーできます。楽しいものです。
 全体を通してとても満足させてもらったので、「おいしかったわあ」とシェフにも伝えました。細かいことを言えば、トマトにいま一歩のこだわりを持っていただいて、もうちょっと味の濃いやつだったらもっと嬉しいとお願いしたいところです。

20130629-_DSC8975 カプレーゼです。900円。
 モッツアレラ・ブッファラのボッコンチーニ(ピンポン玉大の大きさ)を使っています。カプレーゼの葉野菜にはバジリコが定番ですが、あえて別の種類を用いています。
 マイバジルを持ってくればよかったなあ。
 いまの季節、友人の畑にはバジルが生い茂っています。雨の少なさが幸いしたのか、今年のバジルは例年にも増していい香りです。
 露地物のバジルがいちばん元気な季節だけに、それをいま使わないのはもったいない気がしました。


20130629-_DSC8979  じゃがいものスープ Lo Splendore風。900円です。
 私は飲みませんでした。注文した友達は、「これはおいしい」を繰り返していました。
 あの薪窯で焼いたのでしょうか、ひねりを入れたパイ生地がついてきます。細かく折ってスープに入れてくださいとのことでした。
 

20130629-_DSC8983 65℃卵のカルボナーラ Lo splendore風です。900円。
 このお皿の中で、卵とチーズを自分で混ぜ合わせてカルボナーラにします。65℃卵ですから、温められた黄身に粘り気が出てきます。それとチーズを混ぜ合わせます。このプロセスが楽しくて、喜んでかき混ぜました。
 すりおろしたチーズに隠れて見えませんが、実は厚切りグランチャーレが中から顔を現します。「うわっ」と思わず声が出ます。
 私はいつも、自分の好みに合わせてやりすぎのカルボナーラをこしらえています。パルミジャーノとペコリーノを存分にきかせて濃厚にしています。それに比べたらはるかに淡白でしたが、充分に満足しました。


20130629-_DSC8989 色々お野菜のバーニャカウダ(特製アンチョビソース)。1200円です。
 奥さん二人がアンチョビソースに興味津々でした。家でも真似しようと思っている様子です。でも、なにせ主婦ですので、1200円のくせに野菜が少なすぎるという不満は当然ながら出てきます。いくら美しく切ってあっても、量の点で彼女たちをごまかすことはできません。主婦は、自分にもできそうな料理だと思った途端、急に倹約精神を発揮し始めます。
 私もオリーブオイルたっぷりのアンチョビソースが勉強になりました。オイルにアンチョビの旨味を移すというよりも、生に近いアンチョビをオイルに泳がせる感じにしておけばいいんだなと思いました。


20130629-_DSC9004 色々野菜の薪窯グリル 香草オイル。600円です。
 メニュー名にもあるように、薪窯を使ったひと品です。パプリカの仕上がり加減から推測するに、ほとんど時間をかけない焼き方のようです。高い温度が野菜を突き抜けただけかなと思いました。シャキシャキした歯ごたえがしっかり残っています。
 薪窯で野菜を焼くなんて家ではできませんし、焼いた野菜の味付けに香草オイルまでこしらえるのも手間ですから、これはやはりレストランでしか食べられない料理です。


20130629-_DSC9007 ピッツァ生地を使ったパニーニ。900円です。
 具材は、プチトマト、サラミ、サニーレタス、モッツァレラ、パルミジャーノ。
 みんなに大好評でした。友達は、薄い皮膜のように溶けたチーズからにじみ出るおいしさが気に入ったらしくて、「これはいったいどうなってるのかなあ?」と生地の表面を見つめていました。
 この店には20種類のピッツアメニューが用意されているなか、このパニーニだけにパルミジャーノが使ってあります。友達はチーズが大好きですから、パルミジャーノならではのコクとにおいに感激したのでしょう。


20130629-_DSC9013 平目のムニエルと蕪のエチュベ 生ウニソース。1400円。
 生ウニソースなんてのを奮発してしまいました。NHKの朝ドラ「あまちゃん」の影響大です。じゃあ、おらあ、ウニ!
 エチュベ。蒸し煮です。大満足でした。いまこの写真にフォークとナイフを近づけたいくらいです。
 ここまで他人が注文した品にも遠慮なく手を出してきた私ですが、このエチュベを他人とシェアーするのはいかにも勿体無いと思いました。だから、他のみんなには分け与えず、ひとりで全部食べました。

*いくつかの品はホームページ掲載価格よりも100円値上がりしています。

草津を見くびっていた


 私はいつの間にか草津市を見くびってました。

 草津市の人口は現在13万人。国勢調査のたびに8%ずつ増えている自治体なんて、日本全国を見渡しても数えるくらいです。私が滋賀県を離れた43年前にはわずか4万5千人くらいでした。

 人口増加の大半はベッドタウンを求めて草津を選んだ人たちです。言ってみれば、草津市全体を使って数万人規模の新興住宅地を生み出したみたいなものです。
 新興住宅地ですから、その最たるニーズは利便性向上です。
 大型量販店、ファミレス、ファスト・フード、コンビニがそのニーズをしっかり吸い上げ、年を追って利便性の高い町になっていきました。

 そのかわり、町に出るとは実用的ニーズを満たすこと、町に出ても実用的ニーズしか満たせない、便利なところは増えても繁華街は生まれない、そういう機能性中心の没個性的な町になってしまいました。おいしそうでユニークで気にかかる店であればあるほど、見えないところに追いやられています。

 草津市の年齢別人口ピラミッドは、20歳~40歳の突出が顕著です。日本全国とは明らかに異なる形をしています。20歳前後が多いのは立命、龍谷のキャンバスがあるからです。それ以降40歳までの人口は、京阪神への通勤圏として草津に移り住んだ人、あるいは通勤に便利だから生まれ育った草津を離れない人でしょう。

 商売は、まずこの年代層を狙ってきます。学生たちの指向性や行動パターン、それ以上40歳までの家族構成や消費傾向を考えれば、手っ取り早い店、大人数で利用しやすい店、子供連れでも行きやすい店、みんなで食べても安い店が好まれて当然です。大手チェーンの独壇場です。

 だからでしょう、ピザはあってもピッツアのない町だと思い込んでいました。こんな利便性尊重型の町に誰がナポリピッツアの店を出したりするもんか、カプリチョーザやピザハットやピソリーノどまりだと、勝手に思い込んでいました。

 なにせナポリピッツアといえば、EU(欧州連合)から重要な伝統的食品として認められ、そのノウハウすべてが保護対象とされているくらいです。ナポリピッツアで商売するのは、誇りとこだわりと窮屈さをすべて引き受けるに等しい決断です。草津を相手にそこまで質を追い求める値打ちがあるのか?

 でも、知らなかっただけなんですね。実はロ・スプレンドーレという店があった。それでも頑張ろうとしているシェフがいた。その存在を知らされなければ、ピン・ポイントでこの場所に来る用件はまずありません。

 ロッシに似たシェフにはこれからもガンガンいってほしいですねえ。さっきセルジオ・越後さんが言ったように(言うてへん、言うてへん)、撃たなければゴールは生まれません。ひとりでも多くの人の耳に評判が届くことを祈っています。

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