2014-03-08

千束そば(福井県敦賀市) 商売衰退の敦賀でもここだけは人がいる

_DSC0910 (1) 蕎麦の「蕎」という字には漢方の香りが漂います。
 事実、苦蕎麦とも呼ばれる韃靼蕎麦(だったんそば)の生活習慣病予防効果が話題になったこともあります。「菌藤蕎湯」という漢方薬もあります。
 日本にこれだけ蕎麦屋があるのは健康の元をおいしく食べるためなのかと想像力を膨らませつつ、敦賀市の「千束そば(ちぐさそば)」にやってきました。


 敦賀は、金沢市から北陸自動車道で139km。
 ーーー遠いですねえ。
 雪混じりの景色に目をやりながら、助手席の美女が言います。
 前回、前々回の記事でもお伝えしたように、私に代わって北陸三県を担当することになった美女です。美女、美女と書きすぎた余り経済再生担当大臣、実物写真を掲載することができなくなってしまいました。美女じゃないという人が続出したら、このブログ全体の信憑性に関わってきます。

 ーーー車も、人も少ないですねえ。
 敦賀市内をしばらく走ってから、美女が第一印象を述べました。この美女に限らず、だいたいの人がそう言います。
 昨日から読み始めた「神社の起源と古代朝鮮」という新書の著者岡谷公二さんは、敦賀市の気比神宮を訪ねたとき、町の淋しさに堪え切れず、こんな風に書いています。

” 観光客はおろか、町の人々の姿も稀で、車もほとんど通らず、まるで禁令でも敷かれた町を歩いているようだった。”

 いや、たしかに、その通り。
 気比神宮の周辺には、道路工事のオッサン以外、誰も立っていませんでした。信号が青に変わっても、横断歩道を渡る人はいません。渡る用事もなさそうです。こちら側もシャッター下ろしたまま、あちら側もシャッターを下ろしたまま。アベノミクスは異国の出来事。この街にも届く政策は原発再稼動だけです。

 じゃあ、人気の蕎麦店「千束そば」のあの客は、いったいどこから集まってくるのでしょうか。本当にいい店の客足は遠のかないことを「千束そば」が実証しているようです。
 商店主の高齢化、後継者不足、郊外型店舗の進出と、敦賀旧市街の衰退要因はいくつもあることを承知の上で、どうか負けないでいただきたいと心から願っています。

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 朝から鼻水をすすっていた美女は、温かいおろし蕎麦を注文しました。美女の鼻水。そういえば、最近、「お嬢様、その鼻水に、大変見苦しゅうございます。パブロンを早くお飲みくださいませ」というテレビCMがあります。この美女は、あのお嬢様に似ています。下の画像です。松本若菜さん、30歳。鳥取県米子市出身。

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 私は、鼻水たれてても、冷たいおろし蕎麦ばかり。蕎麦とつゆと薬味がそれぞれ別個になったこの店のスタイルが気に入っています。

 越前おろし蕎麦といいますと、薄いお皿に全部入りのぶっかけタイプを基本形としています。私はそのぶっかけスタイルがいまいち好きになれません。削り節まで入ってるなんて、ごちそう度を演出しすぎだと思います。その結果、箸の先に削り節がまとわりつく。ペター。とても、いまいましい。
 皿を連想させる器に盛るのも、元をただせば、ごちそう度を増大させる目的だったといいます。
 蕎麦がごちそうになったのは、食い物が他になかったからってことじゃないですか。そういう昔を思うと、急にわびしくなります。自分の時代は大根おろしとの組み合わせを大いに楽しめればそれでいいと思っています。

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 美女はすでに何社かの製薬メーカーを経験しています。過去の会社で先輩に一緒について回ったことも数多くあるそうですが、「すきや」などそのあたりの店でちゃっちゃと昼ごはんを済ませるケースが多かったそうです。どうして私がおいしい昼飯にこだわるのかと、美女が尋ねます。

 あらためて考えますと、おいしい昼飯にこだわる理由が浮かんできません。昔はそれが当たり前でした。昼飯のあり方が大切でした。他に時間つぶしの手段もなく、昼飯にもっと集中できました。
 自分の担当エリアで昼飯のレパートリーを広げておくのも実力のうちでした。部下に同行した日の上司が、昼飯にわざと難しい注文をつけてくることもありました。
 そのタイプの上司は、自分のリクエストにどれくらい手際よく応じることができる奴か。そんな切り口で人間の幅を観察していました。好奇心と人付き合いが豊かであれば自然と担当地区のあれこれに詳しくなるはずだという理屈でした。
 パソコンもスマホもない時代ですから、たしかに人脈と口コミが情報をもたらしました。昭和の終わりがまだ先の話だった頃。牧歌的な時代です。

 ところが、そんな昼飯重視時代の平社員は、みんなとっくにエラくなって、この年齢でカバンを持って外回りなんかしていません。いまだに外回りなんて私くらいのもんです。シーラカンスかガラパゴスか。
 だから、美女も、昼飯にこだわる先輩に出会う体験を持てなかっただけのことです。好奇心と人付き合いの豊かさとはいっても、私を見ればよく分かる。過ぎたるはなお及ばざるが如しで、なにごとにも節度が大切です。

 ということで、美女よ、引き継ぎグルメ旅も残すところ富山だけや。ラ・ベットラ富山店でランチ食うか。

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