2012-06-07

おばあちゃんを竜宮城へ 調略編④ Super Dad!!

生き返りやがった
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 生き返りよったぞ。

 父の日ネタとでもいうのでしょうか。
 危篤状態から抜け出たおじいちゃんです。
 しぶといわ~。

 おばあちゃんビックリ。
 病室に行きましたらおじいちゃんの姿がない。
 あわててナースステーションに行ってみたら、ナースのみなさんに囲まれて、おじいちゃんが車椅子に座っていました。

 あの危篤状態はいったいなんだったのでしょうか。

 でも、ちょっとボケてしまいました。5月31日から6月3日まで、高度の徐脈で頭の酸素が不足していたからでしょうかねえ。
 私の妻お龍が誰だかわからなくなっています。

 「おじいさん、この人、わかるか?」とおばあちゃんが尋ねます。 「さあ、誰やろ?こんなきれいな人、どこのどなたさんやろ?」とおじいちゃんが答えます。

 お龍がわからないこともさながら、きれいに見えてしまうほうがボケ症状としては深刻です。
 いまくらいボケてくれたほうがしょうもない自己主張が消えて扱いやすいと、妻お龍は歓迎しています。


【リリカカプセルの副作用か?】

 大腿骨骨折後の脚が痛んでしかたないおじいちゃんに、リリカカプセルという鎮痛薬が処方されました。5月30日のことです。

 リリカカプセルを5月31日から飲み始めたおじいちゃん。
 意識レベルが一気に落ちました。
 朝から晩までずっと寝てばかりの状態になりました。
 おばあちゃんがいくら携帯に電話をかけても、おじいちゃんは出ません。たまに出てもロレツの回らない短い会話ですぐに切れます。

 食事や服薬の時間帯には起こされて、その間だけは起きていたようです。けれども、すぐまた寝てしまう。
 そんな日が、5月31日、6月1日、6月2日と続きました。
 おじいちゃんは、日記のようなメモを毎日残していました。それが5月30日の夜で途絶えています。

 リリカカプセルという鎮痛薬は、内服型神経ブロックとでも言えばいいと思うのですが、身体から上がってきた痛みの信号を脳の延髄でブロックする作用をもっています。中枢性の鎮痛作用という点では、麻薬そのものではないけれども麻薬的だといえます。

 使用上の注意には、ありとあらゆる副作用がずらりと顔をそろえています。37年間にわたって医薬品の仕事をしてきた私ですが、こんなに多様な副作用の薬を扱った経験はありません。

 その多彩な副作用のなか、重大な副作用として、次のような記載があります。

意識消失(0.3%未満):意識消失があらわれるとの報告があるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。

 「Ris Fax」という医薬品業界向けの情報によりますと、2010年10月~2012年1月までの間に、リリカカプセルの副作用によると思われる自動車運転事故が7件発生しています。いずれも眠気や意識消失によるものです。

 そして、リリカカプセルを慎重に投与すべき患者について、以下のように記載されています。医薬品の使用上の注意では、とくに副作用が出やすい患者像を、慎重投与の対象として記載します。

⑴腎機能障害のある患者
⑵重度のうっ血性心不全の患者
⑶高齢者
⑷血管浮腫の既往がある患者

 おじいちゃんには、腎機能障害と高齢者の2項目が当てはまります。リリカカプセルを服用し始めたのと機を一にして意識レベルが低下した事実を使用上の注意に照らし合わせてみると、副作用によるケースを想定できないこともありません。

 ただ、おじいちゃんの場合は、救急外来受診時の血清カリウム値が9.1、心拍数が30~40/分でした。救急担当医は、この点を最重要視して治療にとりかかりました。これがおじいちゃんの生命を左右するいちばんのポイントでした。この致命的状態とリリカカプセルを結び付けていいのかどうかは、私にはわかりません。

 老人ホームでは、これは尋常な眠り方ではないと、スタッフたちが心配していたそうです。薬の副作用かもしれないと考えていた人もいたようです。
 6月3日、これ以上放置してはいけないという線まで、おじいちゃんの意識が落ちました。そこで、樹の郷は、甲賀病院の救急外来受診に踏み切りました。

 おじいちゃんのケースを医師に必ず報告して欲しいと、私は樹の郷のケアマネさんに言いました。

 老人ホームですから、リリカカプセルの慎重投与対象患者ばかりです。おじいちゃんのケースがリリカカプセルの副作用だったとしたら、別の患者さんにも同じケースが生じる可能性を否定できません。

 処方医師が今後リリカカプセルを選択するときに、今回のケースを知っているか知らないままか、そこが大きな違いです。

 おじいちゃんが死んでしまわなくて、周りがみな救われたというべきでしょう。91歳のおじいちゃんは、いずれすぐ死ぬ年齢に達してはいますが、死に方というものがあります。もし、今回死んでいたら、寝覚めの悪い人もいたはずです。

 「ほんまになあ、ママカリちゅうような薬、のまさへんたらよかったのになあ」とおばあちゃん。
 おばあちゃん、ママカリやないって。リリカや。


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