2013-12-14

ふじよし(滋賀県甲賀市水口町) 天麩羅とお寿司は持って帰るのが甲賀流

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 父親の一周忌をやってきました。
 お墓のある「心光寺」。無縁仏さんの隣にそびえる木は、どの季節の青空を背景にしても絵になります。


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 よく晴れてはいますが、西高東低で、気温の低い日でした。
 家なら「寒い、寒い」と言いまくる年寄りたちなのに、お寺の寒さにはえらい我慢強い。

 「ねがはくは花のもとにて春死なむそのきさらぎの望月の頃」という西行の歌は超がつくほど有名ですが、自分もそうありたいもんです。12月に死ぬのは、みんなに寒い目をさせます。


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 流れでいきますと、遺影みたいですけど、これは母親。生存中。一周忌は父親のほうです。
 うちのおばあちゃん、このブログには、久しぶりの登場ですねえ。「おばあちゃんを竜宮城へ」シリーズから2年を経て、92歳になりました。
 一周忌の会食で皆さんにご挨拶。主人がいなくなって淋しいを繰り返していましたが、かといって、早く自分もあの人のそばに行きたいとは言いません。
 日本人の平均寿命は女性が86.41歳、男性が79.94歳(2012年)。男性と女性の差は7年ほどありますから、おおまかに言いまして、七周忌が終わるまで妻は死なないことになっています。


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 さて、この日も、「ふじよし」での会食でした。
 ふじよしでは、いまの季節がどんな風にディスプレイされているかを見るのが楽しみです。
 座敷までの通路の壁側、作り付けの飾り棚には小さな花器が並び、それぞれの花器に、ちょこっと草花が挿してあります。


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 予算5000円のコースをお願いしました。
 席について、あらかじめ用意されていたのが、この3品です。
 四角い小鉢の中は、鮟肝です。魚ダシの旨みと香りがはっきり伝わる味つけが施してあって、私の大好きな味でした。鮟肝そのもの自体は、おいしさというよりも季節限定の珍重さです。そこを読んでか、素材への過度な依存を避けてきちんした味つけ。これはいいなと思いました。
 

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 先付の平盆の右側が紙だけで淋しいなと思っていましたら、そこは茶碗蒸し用のスペースでした。茶碗蒸しは熱さが命ですので、うちの母親の挨拶が終わるのを待って運ばれてきました。

 ゆずを利かせ、そして、具材に鱈の白子が使ってありました。先付4品にここまで季節感を盛り込まれると、父親の一周忌なんて趣旨がどうでもよくなってきます。坊さんに酒を注ぐのも忘れて、舌とカメラに集中してしまいます。


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 鮮魚の輸送手段、冷蔵手段が発達した現在でも、やっぱり刺身は海との距離で味が違ってくるなと思います。丹後で水揚げされる魚を食べていただけに、余計にそう思うのかもしれません。
 
 でも、滋賀県甲賀市水口町という内陸部のハンデを考慮すれば、鯛の刺身はうんとおいしかったし、少しばかり炙った紋甲いかは濃厚な味ともちもちとした食べ心地がよかったし、満足度充分でした。


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 これは、ふじよしの人気メニューなのでしょう。とくに女性客には必須アイテムらしくて、必ず出てくる朴葉焼きです。

 今回は、永源寺の赤こんにゃくが加わっていました。この赤こんにゃくにはほんのりと甘みがあって、朴葉味噌との相性が際立ちました。熱々を食べる朴葉焼きは、寒い日にぴったりのひと品でした。


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 しんじょのあんかけには、やはり季節の食材である蟹が入っていました。

 ほんと、ここ数日、急に冷え込んでしまって、温かい食べ物でほっこりします。このしんじょあんかけも、まさにほっこりを絵に描いたようなひと品でした。このほっこり感は、ていねいに引かれたダシに根差すんだろうなあと思いました。


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 天麩羅とお寿司です。

 この2品でふじよしのコースが一気に平凡化する。
 大将のウデを考えたら、残念でなりません。
 工夫が楽しめるのは、先付だけじゃないですか。

 けれども、妻お龍は、天麩羅と寿司なしに、このへんの法事は成り立たないと言います。だいたいどのおばちゃんも、天麩羅と寿司をパックに詰めて持って帰るではないかと、その点を指摘します。

 たしかに。

 美代子おばちゃんは、パックがひとつでは詰め切れないことまで心得ていて、ちゃんと2個もらいます。天麩羅もお寿司も、運ばれてくるが早いかパックのなかに移されています。美代子おばちゃんだけはパック詰めで出てきたのではないかと思うほどです。

 ことほどさように、甲賀市の法事においては、「お・も・て・な・し」もさながら、「お・も・ち・か・え・り」も欠くことのできない要素。
 そうなんです。これもまた、甲賀流なんです。

 会食に同席していただいたご住職によりますと、料理屋での法事は、ここ十年くらいで一気に増えたそうです。それまでは、たいてい、それぞれの家庭でやっていました。
 外食の法事という新しい流れが田舎に訪れ、それに連れて客たちの舌が肥え始めました。そのニーズをしっかり捕捉したのが、ふじよしです。若大将が、京都木乃婦の修業から十年ほど前に戻ってきて、この町のグルメ型法事を可能にしました。

 私は、若大将のウデが「法事ならふじよし」の評判を定着させたのかとばかり思っていました。けれども、先代の築いた「天麩羅と寿司ならふじよし」の定評も、田舎のしきたりが死なない限り生き続けるわけですね。


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 デザートに出されたリンゴのコンポーネント(赤ワイン煮)が実においしくて、みんなに大人気でした。ふじよしのデザートは、いつも何気なくて、決して奇をてらったものではないのですが、味が充実しています。

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