間人蟹2ハイを手にして笑顔が止まりません。ここは伊根、舟屋の宿・鍵屋。舟屋を改造した民宿に1日1組だけの予約。蟹だけではなくて、伊根名物の鰤しゃぶまで食べようとしております。
泊まることを考えて今年は鍵屋
私たちのグループは、去年まで、弥栄町の縄屋で蟹を食べていました。今年はそれを鍵屋にしたのですが、そのいちばんの理由は宿泊です。
縄屋の蟹コースは、食べログでもきわめて高い評価を得ています。「備長炭で炙った焼き蟹、昆布出汁の鍋、日本酒を加えた蟹味噌等が供されたが、いずれも、目から鱗のお味だった」と、吉岡さんの蟹料理をほめたたえる人もいるほどです。(写真は縄屋。吉岡さん。2010年11月)。
ところが、縄屋で蟹を食べた後、宿泊するのにちょうど適した宿がありません。吉岡さんの料理を楽しむために縄屋へ行くのですから、宿泊は素泊まりで充分です。私たちはセントラーレ・ホテル京丹後に泊まっていました。縄屋で大満足してリッチな気分になれたというのに、セントラーレ・ホテル京丹後の部屋で一気に平素の生活に引き戻される。そこがどうにも悔しいところでした。
そこで、今年は、宿泊の充実に重点を置いてみようということになりました。となれば、伊根の鍵屋です。蟹が高い理由は見えにくいだけに、蟹にお金を払ったというよりは人にお金を払った気持ちになりたい。その思いで丹後半島を見渡したとき、料理重視ならば縄屋の吉岡さんですし、宿泊重視ならば鍵屋の鍵さん夫妻でした。鍵夫妻の写真も出そうと思いましたが、これだけ行っていながらなんで撮影してないのでしょうか。
鍵屋はひとり3万円
丹後の蟹は高いです。名のある旅館に泊まって地場の蟹を食べるのなら、安くてもひとり3万円にはなります。
間人の炭平、天橋立の文殊荘松露亭や玄妙庵などブランド力のある旅館ならば、ひとり5万円~7万円といった値段ですら予約が埋まっていきます。贅沢のきわみですね。網野、久美浜などの民宿ならば、ひとり1万5千円~2万円でカニのフルコースが用意されています。この場合、地場の蟹ではなくて、北洋産のズワイガニのほうが多いように見受けられます。しかし、北洋産の蟹を食べるためにわざわざ丹後の民宿まで来る必然性は低いといえます。地場産の活カニを食べてこそ丹後まで来る値打ちがあります。そのかわり、地場産を使った場合には、民宿ですらひとり2万5千円くらいに値段がハネ上がります。
縄屋でカニを食べてホテルセントラーレ京丹後に泊まった場合、タクシー代を入れてひとり2万5千円~2万7千円になります。そのなかの2万円前後が縄屋への支払いです。
今回、鍵屋には5人のグループで泊まりました。鍵屋は”1日1組限定”ですから、私たち5人で貸切です。ひとりあたりの値段は、宿泊代18000円(1泊2食)+蟹料理8000円+鰤しゃぶ4000円=合計30000円でした(鍵屋の場合、曜日や人数で値段が変わります。詳しくはこちら(クリック)をごらんください。)
蟹の値段は、時価(最低7000円~)です。幸いにも、宿泊前2~3日間の海が穏やかでしたので、蟹が入手しやすい状態にありました。海が荒れて漁が休みですと、蟹が品不足状態に陥り、時価の部分がもっと高くなります。
この日の蟹は、もっともブランド価値の高い間人産。間人の蟹ですというだけで、普通は値段がポンと跳ね上がります。大型蟹2ハイにおまけの小型蟹3ハイもついて、合計5ハイでした。京都府産を意味する緑色のタグの表と裏に、間人産である旨が記されています。
ストレス・フリーの魚たち
鍵屋の特筆事項は、運搬ストレスが最小限に抑えられた魚です。漁港がきわめて近い。運んだうちに入らない。これが伊根の強みです。
鍵屋には、大阪・京都・神戸などのイタリアンやフレンチのシェフが泊まりに来ることもあります。こうしたプロの目当てはおいしい魚介類の仕入れルートです。運搬ストレスのかかっていない魚ですから、正味のおいしさを確認することができます。食べてみて「なるほど」と納得できたら、鍵屋に身分を明かして仕入れルートを紹介してもらう。鍵屋の賢吾さんによりますと、「身分を明かしてもらうまでもない、食卓の会話でだいたい想像がつく」ということでした。
この夜のお刺身は、マトウダイ、スズキ、サワラがひとつのお皿に。そして、別皿でヒラメの薄づくり、ブリのトロ。新鮮すぎて、魚ごとの味わいの違いを感じ取るのに苦労するほどです。その魚に特有のものが出る前に食べてしまってるのかなあ・・・?いや、タバコをやめたらこの微妙な違いがわかるのかもなあ・・・?と思います。
この日は、こんな焼酎も持っていきました。
Do it yourselfの楽しさ
さて、蟹が出てまいりました。身がぎっしり詰まっています。いい蟹が揚がってくれてほっとしたと、賢吾さんが言っていました。こればかりは客の運次第です。
特注の七輪で焼いてもらってもいいし、そのまま生でもいいし、しゃぶしゃぶでもいいし、好きに召し上がってください、と奥さん。ついさっきまで動いていた蟹を生の状態から自分自身で好きに食べるというのは、なかなか楽しいものでした。焼きガニがいちばん好きな私は、あれこれ焼き加減を試してみました。甘みがきわだつ焼き加減は、早くてもだめ、遅くてもだめ。上手に焼けたなあといえるのは1本か2本だけでした。
橋本水産の寒鰤で鰤しゃぶ
柵取りした鰤を、賢吾さんが薄く切り始めました。一片ずつ大皿に並べていきます。
伊根は、氷見、五島列島と並んで日本三大鰤漁場に数えられています。
けれども、この時期、天然の鰤は、産卵期を前に餌を摂る量が減っていくそうです。いきおい痩せてきます。真に寒鰤と呼べる時期は、12月~1月。意外と短いんですね。身が痩せ始めた天然はちょっと使えないということで、今回は養殖ブリになりました。
養殖とはいっても、伊根には橋本水産があります。橋本弘(ひろむ)さんが父親と一緒に鰤の養殖をやっています。賢吾さんによりますと、天然物よりもアミノ酸値が高い鰤だそうです。
福知山市のランチハウスリリーのマコちゃん夫妻は、橋本弘君を中学生の頃から知っている気がすると言います。伊根の赤灯台の下で釣りをしていたら必ず家から出てきたあの男の子、釣りが大好きだったあの子じゃないのかというのです。弘くんらしき中学生は橋本水産の3階建てから出てきたそうです。
昨年の秋、弘さんに話を聞く機会がありました。
弘さんの方針は、量より質です。3000尾のキャパをもつ生簀に1000尾ほどの魚。充分に運動をさせながら育てます。餌に魚油を用いて成長速度を稼ぐことはせず、サバやアジやソーダガツオなど天然の餌だけを与えるそうです。もともと水温の低い伊根湾での養殖ですから、8~9kgに育つまでに3年を要するそうです。それでも、時間がかかる分だけ身の締まった天然物に近い魚になってくれるのだといいます。
下の画像をクリックしてもらえば、橋本水産のサイトにジャンプします。
鰤しゃぶを動画にしました。おいしそうに見えたらいいのですが。
鰤は、この煮付けもおいしかったですよ~。賢吾さんは、着実に料理の腕を進化させてますね。宮津市栗田にある京都府海洋センターが養殖アカアマダイの商品化プロジェクトを進めていますが、料理の部分は賢吾さんが受け持っています。
伊根という土地柄、客の求めは、鮮度の高い魚を鮮度の高さそのままに食べたいといったものになってきます。それに応える賢吾さんの料理はどうしても刺身や塩焼きになってしまいます。いい食材に恵まれながら料理のバリエーションが広がらないといったジレンマも生まれ始めているのではないかと思います。私も、賢吾さんのちがう一面を見たいと思っています。
献上米を釜炊きで
天皇陛下は、こんなにおいしい米を食べながらあんな病気になってしまったんですね。まあ、歳が歳ですから。
鍵屋の朝食は、筒川産の献上米です。テーブルの上で、小さな釜からおいしい匂いの水蒸気が上がります。
おかずは、これまた定番のレンコダイ。レンコダイは、夏よりも冬のほうがおいしくなるんですね。
まだ会社やめへんぞ
鍵夫妻が私のためにチーズケーキを用意しておいてくれました。私がこの4月で定年退職だと思っていたそうで、おめでとうのメッセージでした。けれども、私の場合、誕生日までは退職しなくていいので、ちょっとタイミングがズレてしまいました。
しかし、手作りのチーズケーキ、感無量です。
そういえば、鍵屋はカフェも始めようとしているそうです。シーカヤックのグループが歓談のための場所を求めているなど、カフェの需要はあるそうです。それに、鍵夫妻は、伊根湾をシーカヤックの名所に育て上げたいという夢も持っています。
ひとり息子の海人(かいと)君も、期末試験期間だというのにありがとう(どうやった?、テストは)。
鍵屋以外の伊根の話題を次の記事で紹介したいと思います。
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