京都新聞掲載の図を横並びに改変
(先日掲載分を長い文章に書き直しました)。
「高浜原発(福井県)で福島第一原発級の事故が起きたら」という想定の下、京都府が放射性物質(ヨウ素とセシウム)の拡散予測を行いました、それが3月23日に公表されました。
全国紙やテレビのニュースでは、上記の左図、3月の拡散予測が注目されていました。
けれども、LAST TANGOな視点では右の図、5月の拡散予測のほうがインパクト大です。
生データはここに
各新聞に掲載された拡散予測地図は、いずれもわかりやすく作りなおされています。
その元になった京都府の生データ(上のような図)は京都府防災会議のサイトで閲覧・ダウンロードすることができます。生データには、3月と5月以外の予測図も含まれています。Click to 京都府防災会議
「相川哲弥のブログ」によりますと、
<東京電力福島第一原発の事故と同じ量の放射性物質が10時間にわたって放出されたとしていう想定で、事故から24時間後までの積算の被ばく量を予測しています。過去の気象データからそれぞれの月であらわれる頻度の高い風向きと平均の風速から、放射性ヨウ素と放射性セシウムがどう拡散するかシミュレーションしました>
という予測条件だそうです。Click to 相川哲也のブログ
これだけは読んでみて!
私のこの記事を読んでいただかなくとも、毎日新聞福井版に連載されたこのすばらしい報道だけは読んでみてください!
イケイケの高浜町長
高浜町の町長さんは野瀬豊さん(写真)。51歳。再稼動イケイケ派です。パティシエの側面もあるとかで、そういえば甘いマスク。ひょっとして草食系?
新聞報道を見ますと、福井県知事の西川一誠さん、おおい町長の時岡忍さんは、ストレステストだけでは安全性評価が不十分だという見解です。
大阪府、京都府、滋賀県といった関西広域連合の知事たちも、ストレステスト一次評価だけで再稼動を了承するわけにはいかないと主張しています。関西広域連合は、再稼動を待てと国に申し入れました。
いっぽう、やはり新聞報道ですが、高浜町長野瀬さんは、「国が原発をどうしたいか意思表示し、安全基準が示されれば、いたずらに先延ばしせず、再稼働していくべきだ」と町議会で発言しています。
関西広域連合に対しては、「原発を再稼働しない場合、夏場や来年以降をどう乗り切るのか」と疑問を投げかけています。
野瀬さんは、福島第一原発の事故をまったく意に介していないのでしょうか?福島第一原発以前に構築された安全神話からいまだに抜け出ていないように見えます。あるいは、福島第一原発事故を見てしまった野瀬さんのなかで、思考を停止しリスクを不問にする必要性がより高まったようにも見えます。
高浜町では、4月17日に町長選挙が告示され、22日に投票が行われます。立候補者は現職の野瀬さんだけだと報道されています。高浜町以外、他県の原発立地自治体でも、2011年4月以降の首長選挙において、原発擁護派・容認派が勝利しています。
福島第一原発の事故を目の当たりにした現在もなお、高浜町民は野瀬さんについていこうとしています。
ただし、野瀬さんは正直者だとも思います。原発依存姿勢を如実に反映した発言。その意味で、二枚舌ではありません。決して褒め言葉ではないのですが、野瀬さんは正直者です。
原発立地自治体は原発Rich自治体
野瀬体質、いいかますと原発依存体質の端的な一例が、福井県内原発立地自治体の2012年新年度予算です。
たとえば、おおい町は、人口9325人2973世帯と、福井県内最小自治体です。その一般会計予算額が108億円。すぐ隣の小浜市は人口32859人11077世帯ですが、一般会計予算額は137億9253万円にすぎません。
原発立地自治体は一見豊かですが、原発関連歳入で進めてきた町づくりを原発関連歳入なしには維持できないという実態があります。交付金に助けてもらわないと町がもたない。原発立地自治体にとっては、まさに「鉄腕アトム」ともいうべきお金なんですねえ。
野瀬町長の場合、原発はあと40年~50年は必要だと主張しています。まだまだいきます宣言だと受け取っていいでしょう。
一般会計予算 原発関連歳入
敦賀市 262億8980万 50億9650万(19%)
美浜町 65億5459万 29億3600万(44%)
おおい町 108億6800万 63億1500万(58%)
高浜町 70億7990万 42億6490万(60%)
詳細は、Click to 毎日.jp
美浜町 65億5459万 29億3600万(44%)
おおい町 108億6800万 63億1500万(58%)
高浜町 70億7990万 42億6490万(60%)
詳細は、Click to 毎日.jp
地場産業は原子力の電気
そして、もうひとつ。「福島原発事故独立検証委員会 調査・検証報告書(Discover刊)」が指摘するような側面が、高浜町のみならず原発立地自治体にはあります。
その側面とは、以下のような記述です。
<住民のレベルでは、それまで第一次産業を中心に成立していた地域に巨大であり安定もした雇用先ができることになり、住民の収入や人口の流出を抑える効果をもつ。それのみならず、13ヶ月に1回行われるプラントの定期検査は一時的に作業員の数を増やすことになるため、民宿などの関連産業を潤す。>
たしかに、Wikipedia掲載の国勢調査結果をみますと、1970年~2010年の40年間、1万人を割ることなく安定しています。高浜も下落傾向にはあるのでしょうが、丹後の各市町村なんてもっと減りまくりですからねえ。
下記の数字はchireki.comに掲載された高浜市の仕事の状況です。町の就労人口5802人を産業別に分けてあります。ここにも原発効果を見ることができます。
農業 6.7% (全国4.40%)
漁業 2.3% (全国0.35%)
建設業 16.1% (全国8.77%)
電気・ガス・熱供給・水道業 7.9% (全国0.46%)
飲食店,宿泊業 8.0% (全国5.24%)
複合サービス業 2.2% (全国1.11%)
公務(他に分類されないもの) 3.6% (全国3.41%)
ハイリスク・ハイリターン
chireki.comは、高浜町と産業構造が似通った市町村も掲載しています。高浜町のソックリさんには、美浜町(福井県)、大熊町・富岡町・双葉町・楢葉町・浪江町・広野町(いずれも福島県)が並びます。
福島県の各町名は、福島第一原発事故の報道で、避難区域として何度も登場します。いまとなれば、いかにハイリスク・ハイリターンな自治体だったかがよくわかります。いざとなれば、高浜町も同じ目に遭うわけですね。Click to chireki.com
http://www.asahicom.jp/politics/update/0424/images/TKY201104230520.jpgから転載
福島第一原発事故で避難生活を体験した北村俊郎さん(日本原子力産業協会参事:元日本原子力発電株式会社理事 富岡町民)は、「福島原発事故独立検証委員会 調査・検証報告書」のなかで次のように書いています。
<今回、私たちは生活する場所、生活手段を選択する自由を奪われた。まるで、地域戦争で国を追われた難民である。このことが一番大きいものではないか。生まれ育った土地の消失、自分が築いてきた財産の滅失、帰還しても元どおりの田舎の生活ではなくなること、避難中に家族が離れ離れになることなど。先祖から受け継ぎ子孫に渡すべき地域の歴史が変えられてしまった。>
あのひな祭りは何だったのか
2月26日、私は「若狭高浜ひな祭り」に出かけました。旧丹後街道沿いの商店や民家が揃って雛人形を飾るというイベントです。
高浜町は心惹かれる町でした。原発があるからという理由だけで嫌いになれるような、そんな薄っぺらい町ではありませんでした。
Click to 原発タウンのひな祭り
あのとき、イベントの発起人的存在である男性が、「すたれるいっぽうの商店街をなんとか活性化したくて始めたこと」とおっしゃっていました。
それを聞いた私は、「この町も丹後といっしょや」と思いました。原発の有無にかかわらず、止められないものは止められない。生活・歴史・文化に根ざした活力と原発がもたらす活力とはまったく別もんだということになります。原発がなければ、日本全国の田舎町と同じように、過疎化と高齢化に直面するばかりです。
町長の野瀬さんは、原発では解決できない地道な町づくりにも積極的に関わっています。高浜町白クラブというのが、町づくりの活動母体です。
けれども、脱原発を模索する町づくりではありません。原発立地自治体が原発依存体質から離脱するのは、麻薬中毒患者の更正よりもまだ難しい。原発の問題というよりも、日本の社会構造のなかで地方の小さな町がどう生き残るかという課題です。
高浜町白クラブはその困難にあえて挑む活動かと思っていました。原発依存を白紙に戻すの「白」かと期待しました。ところが、「白」という命名には、原発をエコでクリーンなエネルギーと位置づける価値観も含まれています。
私はそれに共感することができません。本当に安全ならば、エコでクリーンです。しかし、福島第一原発事故がもたらした深刻な環境汚染を目の当たりにしているいまもなお、原発をそこまで持ち上げていいのか?、です。
そんな白クラブの推進メンバーと若狭高浜ひな祭りの推進メンバーが重複しています。あのひな祭りのよさが色あせてきました。Click to 高浜町白クラブ
私たちにもストレステストを
関電は、大飯3・4号機の1次評価を経済産業省原子力安全・保安院に提出しました。
地震は想定の最大の揺れ(基準地震動)の1.8倍(1260ガル)、津波は想定の4倍(11.4メートル)まで耐えられるとし、保安院は「妥当」と判断しました。
私は、「あれ?」と思いました。原子力安全・保安院がいまもまだ経済産業省にくっついているからです。
福島第一原発の事故後、保安院が経産省にくっついているのはよくないという話になっていたはずです。原発を推進しようとする経産省のなかでは保安院が中立公正な判断を下しにくく、電力会社の言い分を追認するにとどまりやすい。そう言われていたはずです。
ところが、今回もまた、関電のやった耐性評価を経産省の保安院が判断するという図式です。
菅元総理大臣がストレステストの実施を言い出したとき、経産省のほうからはその必要がないという反対意見が出ました。ストレステストに反対した経産省です。そこと一体になった保安院ですから、関電の耐性評価にダメ出しするはずありません。
にもかかわらず、政府は、これを受けて、ストレステスト一次評価だけで再稼動にGoサインを出そうとしています。
いっぽう、内閣府原子力安全委員会は、「一次評価だけでは不十分、二次評価を実施すべきだ」と慎重な判断姿勢です。
福島第一原発事故以前と何も変わっていない。私はそう思います。安全なことにしておこう。このスタンスでいってしまった結果、福島第一原発の事故が起きました。
いまもまた同じ流れが始まろうとしています。
大飯原発を再稼動させても夏場のピークに電力は5.4%不足すると関電は言います。
もっとわかりやすい表現にしてくれと言いたい。
停電が2日ほどありますとか、どれくらい我慢強くあれば大飯原発なしで過ごせるのかを示してもらいたい。そうすれば、そんなもんかとか、それは困るとか、誰もが声を上げやすくなります。いまは声を上げる材料がないのです。
原発のストレステストもいいけれど、世間もストレステストにかけてみたらどうでしょうか。私たちはそんなに弱くありませんぞ。
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