露天風呂で記念撮影。
メタボのおなかとたるんだお尻が見苦しかったので、下のほうを切り取りました。
でも、どうですか、この笑顔。嬉しそうでしょ。
【雨もまたよし おっさんも詩人】
天候は雨。大正ロマンが持ち味の温泉街をのんびり散策というわけにはいきません。
けれども、灯りがともり始めた古い街並みは、部屋から眺めるだけでも郷愁の光景です。
枯れるには早すぎる、張り切るには遅すぎる。己のそんな心境を雨の温泉街に重ね合わせてか、窓の外を眺めては感じ入った顔を部屋に向ける。
ええなあ。ここはええなあ。
おっさんも感涙の銀山温泉です。
宿のなかにも大正の風景が残されています。
外から見上げて素敵な窓は、中から外を見下ろすにも素敵な窓です。
おっさんも詩人の銀山温泉です。
夜8時頃になって雨が上がりました。宴会を抜け出して、ブログ用の撮影に出てみました。
別の宿からも、雨足が止まるのを待ちかねた宿泊客たちが出ていました。
誰もが、自分の泊まっている宿の風情を外から確かめたい。そんなことをしたくなる場所だから銀山温泉に来た。そういうことかもしれません。
【地元の味に忠実な宴会料理】
立石寺の石段は1015段。みんなそこを往復してきました。
無理した身体を温泉で温めたら、あとは早くビールが飲みたい、料理を食べたい。6時半の宴会開始に遅れた奴はひとりもいませんでした。
銀山温泉が位置するのは、内陸部の盆地である尾花沢。その山間部です。鯉、岩魚、鮎、山菜など、地元ではさほど珍しくない食材でしょうが、客のほうは普段あまり口にすることがありません。
山の宿へ来たんだなあの感慨が盛り上がります。
よく考え抜かれた献立だなと思いました。
地元の味を忠実に伝えて銀山温泉の魅力を表現しながらも、高級食材を無理して使うこともなくコストを抑える。
いま写真を眺めていますと、食器がいいですねえ。田舎料理を単なる田舎料理で終わらせない華やかさです。
みんなの人気は鯉の甘辛煮に集中しました。
蓋を開けると筒切りの鯉。煮汁を吸ってきゅっと締まった身は、つまみやすい固さ、食べやすい柔らかさ。
酒飲みですらも白いご飯が欲しくなります。
みんなをさらに喜ばせたのは、幹事のD君が用意した日本酒でした。写真の男が幹事のD君です。
彼が用意してくれたのは、山形県高木酒造の十四代と福島県廣木酒造の飛露喜。
「この二本がよう手に入ったなあ」と、日本酒をよく知ってる者かが驚いていました。
人気が出すぎて品切ればかり。なかなか買えないそうです。
東北勤務の長いD君は大の日本酒党。ここぞとばかりにどこかにカオをきかせたのでしょう。
【女将さん登場 銀山温泉の歴史を語る】
宴たけなわの頃、女将さんが挨拶に見えました。
銀山川のほとりに
女将さんによりますと、この能登屋の創業は明治時代。創業者が石川県七尾市出身だったことから能登屋と命名したそうです。当時の銀山温泉は山の湯治場でした。
大正2年、温泉街を流れる銀山川の大きな洪水。川沿いに建つ旅館はすべて流されました。洪水後には各旅館が再建築され、いまの能登屋は大正10年の完成です。
それ以降、昭和前半の銀山温泉には新築・改築ラッシュの時期があり、いくつかの旅館が姿を変えてきました。昔もいまも変わらないのは、銀山川を挟んで旅館が建ち並ぶ風情です。
この土地を離れまいと、狭い谷筋にへばりつくような旅館街。狭小な場所に精一杯大きな建物を並べた凝縮感が、銀山温泉の旅情の根幹的特色です。この凝縮感が絵になります。
写真は銀山川を泳ぐニジマスやヤマメ。清冽な水を好む魚です。
おしんを境に戦略固め
昭和61年、銀山温泉の家並み保存条例が定められました。現在の旅館は13軒。うち1軒の小関館は老朽化しすぎたために宿泊客をとらず、旅館経営者の住居になっています。
NHKの朝ドラ「おしん」を通じて銀山温泉が有名になったのが、昭和58年のことです。「おしん」を境にしてノスタルジックな景観を生かす戦略が本格化したと考えてもよさそうです。
写真は小関館の玄関先、テッセンの花。雨上がりの朝、ひときわ目立つ風景でした。
古さと心地よさが同居
平成11年、山形新幹線の大石田駅開業に伴って、銀山温泉の客が増えました。宿泊客の6割までが新幹線を使ってやってくるそうです。大石田駅までの送迎をやってますのでまた来てくださいと女将さんが言っていました。
能登屋の内部は決して昔そのままではありません。耐震設計の見直しなども必要になって大がかりな改装を施したからです。
過去にはなかった別館も生まれました。写真はフロントです。
能登屋が昔ながらの古臭さではなかったことに期待を裏切られ、不平不満を述べているブログもあります。でも、そんなに古臭さいのがお好みならば、Back to the futureみたいに時間を旅行すればいいのです。
秘湯だとか、昔ながらだとかいっても、それはひと夜の虚構にすぎません。虚構を心おきなく楽しむためには、安全性も快適性も利便性も必要です。接客業ですから、古さをウリにしながらも、心地よさと合理性をうまく同居させなくてはなりません。
いくらノスタルジックの銀山温泉でも、ウンコはウォッシュレットがいいじゃないですか。
そのウォッシュレットのトイレには、こんなかれんな花の心遣いがありました。
【一夜が明けて 雨上がりの朝】
朝風呂は、旅館裏手の傾斜地に設けられた露天風呂です。急な階段を80段も昇ります。
野外にあるというだけで眺望のない露天風呂ですが、仲間で入れば楽しいもんです。
湯はかすかに硫黄臭。光の加減によって透明に見えたり少し濁って見えたり。湯の華が舞うような泉質ではありません。
源泉温度はけっこう高くて、湯が出てくる近くですと肩のあたりに熱さを感じます。
それが浴槽全体に広がることで温度はむしろぬるめに変わりますが、風呂を上がってからも長続きするホカホカ感はさすが天然温泉です。
朝ごはんもなかなかの品数でした。昼の牛タンに備えてあまり食べるなよとか声を掛け合いながらも、実はみんな腹いっぱいまで食べています。
銀山温泉から先は、銀山川が流れくる山だけ。温泉街の外れ、川は滝になって流れ落ちています。
昨日来の雨でも川はべつに水嵩を増すこともなく濁ることもありません。これが東北の自然の実力です。丹後半島は海の自然が豊かですが、川の自然がだめ。少しの雨ですぐに濁ります。
滝のさらに奥にも散策路が続いています。旅館の下駄のままで歩けるくらいに整備された散策路です。目で釣りをしながら歩いてみました。
さらに先を進めば江戸時代の銀山抗を見物できます。そこまでを望むなら旅館の下駄では無理だと思いました。
さて、気になるお値段です。おっさんが9人。宴会だけでは飲み足らず、部屋でビールも酒も飲みました。
誰かが言いました。
時間がえらくゆっくりしてないか?
気の合った仲間と久しぶりに出会って、充実した時間を過ごして、ひとり2万円弱。私は安いと思います。
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