今日の京都は、気温34度までいきました。
引き継ぎで行動を共にしているKさんから、「うなぎ食べるか?」の提案。
Kさんのことですし、どこかおいしいうなぎ屋さんを知っているにちがいありません。
うなぎ!いきましょう!おいしいとこ教えて下さい!
【アメリカの鰻はあじない】
Kさんの言うとおりに、四条と五条の間の狭い路地を車で進みました。「こっちは一方通行やなあ、そしたら高辻から回るしかないのか」というようなことで、やっと着きましたのが「鰻・江戸正」でした。
Kさんが入るなり、「おや、お久しぶりで」と女将さんのほうから声がかかります。
Kさんは、ここ江戸正の古い客。定年まで勤め上げた会社のオフィスが江戸正の近所だったそうで、ことあるごとに昼ごはんを食べにきたそうです。
Kさんと女将さんの間で、鰻が高騰の会話がしばし続きます。
値段を上げさせていただかないことにはどうしようもなくなったと女将さん。
安い鰻を求めて、アメリカ産を試しに家庭で食べてみたそうですが、どう調理してもパサパサとして大味だったそうです。
アメリカの鰻はあじないと女将さん。「あじない」という言葉を久々に耳にした気がします。
「あじない」は、京言葉というよりも、関西一園で使われています。「私が期待したのに比べて」という含みを持たせた表現。だから、あなたにはおいしいかもしれない。
標準語の「まずい」は、同じ食べ物をおいしいと感じる誰かに対して喧嘩腰だと、関西人の私は感じます。
それに加えて、「あじない」には、「食べていてつまらない」という気分が含まれます。
鰻の老舗の女将さんが、アメリカ鰻を「あじない」と評した。
試行錯誤の様子がにじみ出る言い方だと思いました。
Kさんも、私も、鰻丼の中(2400円)にしました。これが定年退職前の私なら、迷うことなく特上を食べたと思います。
鰻高騰の折、気になるお値段です。
○養殖のブランド鰻である坂東太郎を使った場合
鰻丼 中 3000円 上 4300円 特上 5500円
蒲焼 並 2500円 中 3800円 上 5000円
○坂東太郎ではない場合
鰻丼 並 1800円 中 2400円 上 3300円 特上 4300円
蒲焼 並 1900円 中 2800円 上 3800円
他に天然物というのがありました。これは高い。安くても5000円以上、特上は10000円を超えていました。
【門上武司さんの記事が】
あ、門上武司さんの記事や!
店のなかの一角に、平成18年11月8日付毎日新聞の切り抜きが貼ってありました。「おいしさ求めて」という門上武司さんの連載コラムです。ここ江戸正を紹介しています。
門上武司さんの記事は、大将の西畑利雄さんから息子の裕光さんへの代替わりの時期に書かれていました。
「串打ち三年、割き八年、焼きは一生」といわれる蒲焼きの奥の深さを挙げて、伝統を継ぐことの重さにふれていました。
門上さんによりますと、江戸正のタレは濃い口醤油、たまり醤油、味噌のブレンドだそうでして、店創業以来の秘伝の割合で受け継がれてきたといいます。
江戸正では、坂東太郎というブランド名の養殖鰻を売りにしています。脂があっさりしていて限りなく天然に近いクオリティーだそうです。
坂東太郎といえば利根川。バス釣りに出かけた茨城県の景色を思い出すと同時に、天然にかぎりなく近いブリを伊根湾で育てる橋本さんのことも思い出しました。
蒸してから焼く。江戸正というだけあって、焼き方が関東流です。
おいしかった。どれだけ鰻が高騰しても、こんなにおいしいのならやっぱり食べたい。タレの色に染められたご飯を最後のひと粒まで食べつくしました。肝吸いも、入っているのはシメジなのに、あたかもマツタケのような香りがしました。
【今日は五花街の日】
江戸正へ向かう道、川端四条の南座周辺で、何人もの舞妓さんや芸妓さんを見かけました。
いずれの芸妓さんも舞妓さんも、楽屋への入り口から南座へ入っていきます。
「いまのはあっちから来たな。宮川町の芸妓やろ。今日は五花街(ごかがい)かもしれんな」とKさんがつぶやきました。
「五花街? 何ですか、それ?」と私。
「五花街いうたらな」とKさん。
五花街とは、京都市内の5箇所の花街。祇園甲部、上七軒、先斗町、祇園東部、宮川町のことだそうです。
その五つの花街の舞妓さん・芸妓さんたちが一堂に介して踊りや長唄などの芸事を発表しあう。それを「五花街」というそうです。
いまインターネットを調べましたら、Kさんの推察どおり、五花街が南座で開催される日でした。南座での開催は初めてだといいます。
Click to 五花街
【お茶屋にハマったKさん】
「花街にも格の上下があるんやで」とKさん。「祇園甲部がいちばん上で、宮川町がいちばん下や。そやけど、きれいな女は宮川町におるわ。宮川町の芸妓は続かへんなあ。やめてしもうて店やることが多いな」とKさんのレクチャーが続きます。
なんか花街に詳しそう。このおっさん、インターネットにつないで検索かけたろか。
芸妓さんたちはお客さんと飲みに出かけることも少なくありません。格下の花街の芸妓さんと格上の花街の芸妓さんがたまたま同じ店で居合わせてしまったら、格下のほうから格上のほうに挨拶に行くのだそうです。それがしきたりだそうです。
「そやから、挨拶に来てもらうほうの芸妓と飲みにいかんとあかんわけや。自分のとこにおる芸妓のほうが挨拶に行くほうでは、話にならんわな」とKさん。ほんまに遊んではりましたんやなあ。
Kさんの花街談義は、鰻屋の路地まで続きました。
お茶屋にはハマったなあと、Kさんが昔をなつかしみます。
お茶屋ですか。私もハマってましたよ。伊藤園のおーいお茶とか、福寿園の伊右衛門さんとか。
大手製薬メーカーのあり余る接待経費に支えられていたとはいえ、仕事だけではそこまでいけるはずもない。
Kというこのおっさんはめちゃ遊び人だったにちがいありません。最高潮の頃は、祇園のあちこち合計55箇所にボトルをキープしていたそうです。
舞鶴や福知山のフィリピーナからDaddyと呼ばれていたくらいでは太刀打ちできません。Kさんは祇園のどこへ行ってもKちゃんと呼ばれていました。
それだけボトルを置いてみ。そら、たいへんやで。ボトルの期限を覚えとくだけでもたいへんや。店の順番を決めるのがたいへんや。
そんなKさんですから、引き継ぎで一緒に回っていましても、ときどき言い間違えます。
次の店、ちょっとナビに入れといてもらえるか。
Kさん、店やないて。私らが行くのは医院ですわ。
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