梅雨の日曜日、7月1日、おばあちゃんが自宅へ戻りました。
今年1月から、京都市の高齢者向け賃貸マンション「Cアミーユ西大路八条」で暮らしてきたおばあちゃん。
私たち子供の慰留も空しく、どうしても自宅に戻りたいの意思を、おばあちゃんは曲げませんでした。
ただし、自宅でのひとり暮らしが本当にできるのかどうか、不確かな面も多々あります。
今回は「お試し帰宅」ということで、自宅に戻ってみました。
Cアミーユのみなさんにお見送りをしてもらいました。おばあちゃんの食堂仲間です。
「京都にそのままいてもらいたいんですけど」と私が言ったら、「あんた、息子が何を言うてるのや」と、青出無理子さんに説教されました。
青出無理子さんをご存じない方もおられますね。嵐山から入居された88歳。信号が青のうちに向こう側へ渡れないことから、青出無理子さんと私が呼んでいます。
ほら、私らも淋しいで。あんたのおかあちゃんがいはらへんようになったら、私らみんな淋しいねんで。
ここにいたら病気にはならへん。病気にならへんなあて、みんなで言うてるくらいや。
そやけどな、あんたのおとうちゃん、いま身体が弱ってしもうて、たいへんやないか。
おとうちゃんがまだいはるうちは、おかあちゃんがここにいはったらあかんねん。
ちゃんと近くにいてあげはるのがいちばんよろしいんやで。
おとうちゃんがいはらへんようになったら、またここに帰ってきはるのか、きはらへんのか、おかあちゃんが決めはったらよろしいのや。
みんな、あんたのおかあちゃんにそう言うた。いっぺん帰ってあげたほうがええ。することしてから、またここへ来はったらよろしいやんか。
私も、うちの人をちゃんと世話して、ちゃんと見送ってからここに入ったんやで。それまではちゃんとしてきた。
それが夫婦というもんや。私らみな、あんたのおかあちゃんの気持ちをわかって送り出すのやで。
あんたも、夫婦をわかってあげなはれ。
【起きるのは隣のおっさん】
おじいちゃんが入院している甲賀病院はどしゃ降りでした。
夫婦が顔を合わせるのは、6月9日以来のこと。3週間の空白期間がありました。
そのわずか3週間に、おじいちゃんはさらに衰えていました。
どこかに大きな疾病を抱えているわけではありません。けれども、全身がどうしようもなく衰えていく。
体力の無駄遣いを防ごうとする生体の仕組みなのか、居眠りばかりしています。
おじいちゃんの変わり方を目の当たりにしたおばあちゃんは気が動転してしまいました。
あんた、起きて。起きたらどうやの。なんで寝てばっかりいるのん。私やで。私が来たで。あれが誰かわかるか?長男の忠やで。
と、私のほうを指差して、おじいちゃんになんとか答えさせようとします。答えさせようとするのなら、「長男の忠やで」なんて、先に自分で答を言うたらあきません。
おばあちゃんの顔色が黄色いのは、コンシーラーを顔面全体に塗りたくるからです。
幸いなことに、これほどまでに衰えながらも、おじいちゃんの脳細胞は決してボケていません。おばあちゃんとの間に会話が成り立っています。といっても、おじいちゃんの話し声は空気の音程度。
何かを短く答えて、おばあちゃんが目を離した途端にまたすぐに居眠りを始めます。それをおばあちゃんがまた起こします。
あんた、また寝てるやんか。なんでそんなに寝るの。私がここにいる間は起きといたらどうやの。
おばあちゃんがあんまり一生懸命に大きな声を出すもんですから、隣のベッドのおっさんのほうが起きてしまいました。おじいちゃんを起こすつもりが隣のおっさん起こしてしもて。
私も、おじいちゃんを3週間ぶりに見ました。この変わり方を他人さんにどう伝えていいものか、表現に困ります。
「カスの落花生みたいやな」と、妻お龍に話しかけました。
カスの落花生。ひと袋のなかに必ずそういうのが混じっています。
お龍は、私の言わんとすることが一発で分かった様子でした。
【女子会も法事も湖南飯店】
夜のご飯は、美代子おばちゃんたちも一緒に、湖南飯店でした。
美代子おばちゃんは、つい先日、83歳の誕生日を迎えました。
そのお祝いも兼ねまして、おばちゃんがオススメの湖南飯店へ行くことになりました。
「おいしいやろ。うちら、女子会でもよう来るで。兄さんが死なはったらな、精進落としはここでしたらええわ」と美代子おばちゃんが言います。
味がいいので、うちの姉も含めて、美代子おばちゃんの提案に依存ありません。
「心光寺のご住職さんも、ここが好きやねん。うちの法事もここでしたけど、心光寺さんに喜んでもろたで」と、美代子おばちゃんがさらに推薦理由を追加。精進落としは湖南飯店が磐石のものとなりました。
料理写真は、この日食べた3150円のコースです(デザート以外はいずれも4人前の盛り付け)。
もし精進落としや一周忌ですと、年寄り客には量が多すぎます。
予算を5000円くらいに上げて量より質でやってもらう必要がありそうです。
【使いすぎで携帯を取り上げられる】
私の姉がいくら注意しても、おばあちゃんの携帯は毎月こんな支払い額。
家に帰ったら家の電話使えばいいと、ついにおばあちゃんは携帯を取り上げられてしまいました。
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