2013-08-31

チチを撮りに(京都シネマ) 父親のない家族の日常を、なにげなく、そして深く描いた一作

_DSC1218

 京都シネマで映画を観てきました。
 「チチを撮りに」という1時間ちょっとの作品です。
 監督は、中野量太。1973年7月27日生まれ、京都育ち。いまちょうど40歳で、ブラックマヨネーズの吉田とは高校の同級生です。


 ナカッチョの甥っ子が映画監督になってなあ、いま京都シネマで上映中や。見に行ったってくれ。中野量太という名前の監督で、「チチを撮りに」ちゅうねん。片仮名でチチや。

 高校の同級生から、その話が入ってきました。ナカッチョというのも、やはり同級生で、中野量太監督と同じ苗字です。
 監督は、ナカッチョからいえば、お兄さんの息子に当たります。そのお兄さんは、監督がまだ6歳の頃に病死しました。それもあって、家族をテーマに作品を撮ってきたとのことでした。

 京都シネマは、四条烏丸の「Cocon烏丸」3階にあるミニシアターです。あそこの映画は、ひと味違う、地味ながらも見る価値があると、だいたいそのようなイメージで受け取られています。

京都シネマ 公式サイト 画像クリックでジャンプ

 たとえば、現在公開中でいうなら、「クロワッサンで朝食を」がいい実例だと思います。フランスの大女優ジャンヌ・モロー主演で、見たい人はめちゃ見たい映画ですが、このへんですと、大阪の梅田ガーデンシネマか京都シネマでしか上映されていません。

クロワッサンで朝食をクロワッサンで朝食を 公式サイト 画像クリックでジャンプ

 公式サイトの映画紹介から抜粋すると、「エストニアが生んだ新しい才能が、ヨーロッパ各国で熱い注目を集めている。長編映画監督デビュー作で、ロカルノ国際映画祭のエキュメニカル賞に輝いた、イルマル・ラーグ監督だ。受賞作『クロワッサンで朝食を』は、ル・モンドを始めとするフランスの名立たるマスコミからも絶賛された」といった作品です。

 「クロワッサンで朝食を」は、京都シネマでは日に3回の上映スケジュールですが、女性客中心にすぐ満席になっています。

 そうか、京都シネマに選ばれるくらいなら、「チチを撮りに」もけっこう心にきそうな映画やな。ナカッチョの甥っ子も頑張ってるんやなあと、同級生たちは受け止めました。

チチを撮りに チチを撮りに 公式サイト 画像クリックでジャンプ

 私は、幸いにも、子供の頃に、父親も母親もなくしていません。でも、世の中にはごく普通にある話です。私の親友は、幼いときに、父親を亡くしています。つい先日も、前の会社で仲のよかった男性社員の妹さんが、40歳ちょっとでこの世を去りました。もちろん、残された子供さんがいます。ひょっとしたら、私の孫だって、いつ親をなくすかわかりません。死なずとも離婚だってあり得るわけです。

 中野量太監督は、そういう家族環境で生じる出来事を淡々と、作り物感を感じさせないナチュラルさで描きながらも、日常的に見える感情のどこが映画になるのかを見過ごしません。
 じわじわと話を進めていくのは決して簡単なやり方ではなくて、メリハリつけてお涙ちょうだいにもっていくほうがうんと楽だと思うのですが、独自の感性に基づいて、淡々と人の力を見せていきます。
 観ているこっちが感情移入しかける瞬間を読んでいるかのように、「あれま!」の笑いが入ります。悲しいにしろ、嬉しいにしろ、感慨なんてもんはけっこう幻なんだよと言っているようです。

 観ているときには、「なんや、この、とってつけたような筋書き設定は」と感じる部分もありました。家に帰ってきてからじっくり振り返り、「なるほど、そういうことを言いたかったのか」と思い始めています。こなれ方がイマイチゆえに、とってつけた感じがするのだと思います。このあたりは監督自身の感性だということもできますし、たとえ監督が満足しきっていなくても、出来栄えは俳優の力量とか制作予算に縛られます。

 京都シネマでの上映は、8月30日迄ですので、すでに終わっています。渡辺真紀子、柳英理沙、松原菜野花の3人が演じる母子家族がとても印象に残る映画でしたので、機会がありましたら、みなさんも中野量太作品をぜひよろしくお願いします。
 男性よりも、女性のほうが、この映画の価値をより感じるかもしれません。男の映画監督なのに女心がよく分かっているなあと感心されることでしょう。

0 件のコメント:

コメントを投稿