2014-12-08

長命寺(滋賀県近江八幡市) まさに初冬、雲間の光は愛想なし

20141207-IMG_4507 妻お龍は、寒いから外に出たくないと言います。情けない奴っちゃなあ。あかんやないか、そこまで老けこんだら。
 夫インフレ、妻デフレ。ひとりで行くぞ~。
 そういえば、生まれて62年、長命寺に行ったことがない。行ってみました。


20141207-IMG_4547カメラを構える間にも両脚がプルプル震える。808段をナメていた。

屋根の美しさに魅せられた

 808段といわれる石段を登りきった先に、やっと長命寺の本堂が見えてきます。天台宗のお寺では、こういう修行的要素を併せ持った参拝形式が珍しくありません。

 意外だったのは、拝観料がまったく要らないことでした。見回しましても、入山料とか受付といった掲示板が見当たりません。入山料に代えて、本堂で手を合わせるときに500円を賽銭箱に入れました。

 屋根が美しい寺だ。これが第一印象でした。
 鐘楼から境内を見下ろしますと、護法権現社、三仏堂、本堂、三重塔の屋根が縦方向に並んでいます。
 均整のとれた反り具合。
 屋根を葺く檜皮の色合い。
 調和の極致みたいな屋根の景観。
 その感じで見下ろすためのデザインだと語りかけてきます。
 切れ味のいい刃物で、屋根の反り具合と同じ形に、自分の邪心をスパッといかれたような陶酔感。これが寺を見る魅力ですね。その邪心をまた持って帰ってきたんか、なんにもならへんと妻お龍が言っております。

 寺の創建は1200年以前のある時点、現存する堂宇は1500~1600年の建造です。昔の人のセンスのよさに恐れ入りました。

20141207-IMG_4475長命寺の鐘楼から。護法権現、三仏堂、本堂、三重塔の屋根の調和が美しかった。


20141207-IMG_4464三重塔(重要文化財)。1597年建立。

20141207-IMG_4519本堂(重要文化財)。1524年建立。

20141207-IMG_4490同じく本堂。

20141207-IMG_4509鐘楼(重要文化財):奥の建物。1608年建立。

20141207-IMG_4494三仏堂。1793年に改装。建立自体は1560年前後とみなされている。

20141207-IMG_4489下から808段の労苦を思うとこの境内では変哲なさすぎる。

20141207-IMG_4492琵琶湖の眺望はそれほどよくない。

20141207-IMG_4533808段を登り切ったら、この水場がある。みんな立ち寄っていた。

20141207-IMG_4538マンリョウとナンテンの区別がいまだにわからない。

信長の景色を見てみたい


img_5長命寺一帯は島だった。安土城資料館の古い絵図=湖上フォーラム(まとめ) ( 滋賀県 ) - 江州日誌 - Yahoo!ブログから転載に自分で図形を追加。赤丸のなかが長命寺の島、青枠のなかに長命寺の記載。

 長命寺は、いまでこそバスや車でも行ける寺ですが、かつては船だけが交通手段でした。姨綺耶(いきや)山系と称される長命寺一帯は、海抜400mの奥島山が琵琶湖にとんがる島だったのです。
 陸続きになったのは、戦時中から米の増産目的に始められた干拓事業の結果です。内湖の水面を干上がらせ、新たな農地を生み出したことにより、それまでの島が消えました。

 信長の時代、安土城と長命寺の間には湖面が広がっていました。
 大中湖、小中湖、伊庭内湖、津田内湖、西湖といった内湖の向こうに、沖島、竹生島、長命寺の島(なんという名前だったのでしょうか)がぽっかり浮かんで見えたはずです。
 ああ、信長の景色を見てみたい。かなわぬ夢ですけど。

 このあたり一帯は、長命寺のみならず、姨綺耶(いきや)山系突端の伊崎寺あり、弁天島の福島弁財天あり、沖島の奥津島神社ありと、水の風景に様々な宗教的価値が見出された土地でした。

 滋賀県の土木中心行政が、歴史や文化の価値よりも干拓による開発の価値を優先させました。その土建屋県政は武村正義知事が当選するまで止まりませんでした。

 あの当時、うちの両親も、大中湖干拓をえらくいいことのように話していました。その二人共が小学校の教員だったのですから、教えられる児童たちだって、大中湖干拓のデメリットを知らずに育ちますよね。

 陸続きになったら近江八幡の国民休暇村が誕生し、新しい水泳場も登場しました。すんません、私も喜んでキャンプしたり泳いだりしてました。いまから思えば、守るべき琵琶湖の原風景だったのです。


055532513365088L長命寺が位置する姨綺耶(いきや)山系は島だった。大中の湖:写真で見る滋賀の20世紀の写真に自分で文字や図を追加。

堀切港も沖島も冬の入口

 元は島だった姨綺耶(いきや)山系の先端に、堀切港という小さな漁港があります。1.5キロの沖合いに、沖島(おきのしま、あるいは、おきしま)が見えます。

 沖島は、淡水域に浮かぶ島としては日本で唯一の有人島です。そう聞くと、琵琶湖というのはやはり大きいと実感します。

 約300人の住民は買い物などデイリーニーズを近江八幡市内に依存していますから、堀切港から1日12本(10分500円:日曜は10本)の船が出ています。

 沖島自治会の美しいホームページはできたばかり。どうぞおいで下さいと言われるまでもなく、行きたい気持ちでいっぱいです。


沖島自治会ホームページ

 ほとんどが雲に覆われた空から、ほんのときたま陽が射します。
 その光り方は寒いだけや。やめとけ。
 初冬のこういう天候は、本当に愛想なし。感じの悪い人に出会ったときのいまいましさがあります。

 雪をかぶり始めた比良山系が寒さをひときわ言い表すようでした。あの山から吹き降ろす強風のために、ここしばらく何度かサンダーバード号が運休になっています。

 師走だ。
 晴れた朝を逃さず、年賀状用に琵琶湖の写真を撮らなくては。


20141207-IMG_4603堀切港のバス停。

20141207-IMG_4617堀切港。沖島が見える。その向こうに比良山系が見える。

20141207-IMG_4618堀切港の漁船。初冬に典型的な雲間の光。

20141207-IMG_4575沖島は淡水域では日本唯一の有人島。湖畔に暮らしが見える。

20141207-IMG_4583水鳥を見るたびに、なんで寒ないねん、君たちはと問いたくなる。

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