いと井(JR大津駅前)に高校の同窓生が集まりました。
卒業後45周年の同窓会が来年開催されます。
45周年!? わ、もうそんなになるのか。
でも、打ち合わせに集まったみんな、自分たちがそこまで老いたとは思えない様子。そりゃそうです。こうして集まれば、気持ちがあの当時に還ってしまうのですからね。
同窓生のひとりで、この春に紫綬褒章をもらった京大農学部教授の伏木亨君。おいしさの正体解明に取り組み、栄養学・脳科学の両面からユニークな研究活動を続けてきました。
この春の紫綬褒章といいますと、金メダリスト羽生結弦選手も一緒です。「羽生くん、見た?」と尋ねたら、試合で授賞式に来なかったそうです。伏木君のほうは一緒に写真撮るのを楽しみにしていたんですけどね。女優の宮本信子さんがいたから一緒に写真撮らせてもらったそうです。
今夜はその伏木亨くんにも来てもらいました。
紫綬褒章なんて誰もがもらえるもんではない。来年の45周年同窓会にはぜひ伏木君に講演をやってもらおうと私が言い出しました。
というのも、伏木君とは小学校のときからずっと一緒で、高校時代はともに新聞部でした。だから、彼の紫綬褒章が誇らしくてたまりません。
伏木君はダシ博士だと私は思っています。その話が聞きたい。伏木君は、ダシの優秀性を、栄養学と食文化の両面から発信し続けてきました。その主張の裏側には、おいしさとは何かを追い求めてきた研究成果がギッシリと詰まっています。
ダシの文化を次世代にも伝えるべきだとの信念から、ダシのおいしさを子供や母親に伝える活動も展開してきました。でも、おいしいダシでなければ目的が果たせない。そこで、京都老舗料亭の和食料理人たちの協力を仰ぎました。名立たる料亭のダシがその場で味わえる。参加した人たちは、あまりのおいしさに出会って、驚嘆の声を上げているといいます。
最近では、ダシのおいしさを生かした離乳食を、明治乳業との共同研究で開発しました。「明治プレミアムベビーフード みかくのはじまり」といいます。
脂肪をおいしいと感じるのは生き物の本能ですが、ダシの旨味や風味を好もしく感じるには経験が必要です。その経験が欠如すると、本能が喜ぶ食品ばかりを好む食習慣になってしまいます。それは健康に決していいことではない。離乳が始まる頃にダシのおいしさを経験させるのが食育のポイントだそうです。
この離乳食をおいしくするために、味付けには京都木乃婦の三代目・高橋託児さんが腕をふるいました。高橋さん自身にもおいしいと思える味を目標にして、試行錯誤を繰り返したそうです。あの離乳食は酒のつまみになると、伏木君が言ってました。
どこで買えるのかと、もうじきおばあちゃんになる仲間から聞かれた伏木君が、アカチャンホンポとか言っていたように思います。一度食べてみたいものです。
和食が世界無形文化遺産に登録されたことでもありますし、いまこそダシのきいた伏木節に耳を傾けるべきタイミングだと、私は同窓会幹事に話しました。幹事たちは無類の日本酒好きばかりですから、反対するはずもありません。
京都の料理人たちが世界遺産登録に打って出た自負と自信、それと伏木君の研究成果は決して無縁ではなかろうと私は読んでいます。菊乃井の村田さんとも交流が長いですしね。そういうとこも、日本酒党の幹事たちへの訴求力となってプラス方向にはたらきます。
近頃は日本酒ブームだそうで、とくに東京の居酒屋や割烹では大ブームだといいます。しかも、滋賀県の酒がけっこうもてはやされているそうです。日本酒といえばまず和食ですし、歳をとって日本酒がいちばん飲みやすくなってきたという同窓生も少なくありません。老後の暮らしを充実させるためにも和食の科学的本質を知っておきたいものです。
そして、伏木君から知識を授かるというだけではなくて、いい食のためにはいい社会が必須だと、みんながそういうとこまで考えてくれたらいいなと、ちょっとした高望みもしています。
伏木君は、根が文系の男ですから、いい食を可能にする社会とはどういう社会なのかまで深く考えているはずです。そういう青臭い話はなかなかよそではできないでしょうけど、高校の仲間の前なら、科学研究の延長線上に生まれた伏木哲学を見せてくれるのではないかと期待してます。
45周年の同窓会は9月19日に決まりました。9月19日は食育の日です。同窓会幹事を長く引き受けてきた水谷正君が、食育の日とも知らずに9月19日と言い出して、みんなで食育の日だからちょうどいいと意義づけました。
もっと詳しいところまで打ち合わせするつもりだったのですが、伏木君に来てもらっての話題が食と酒ばかりですから、みんな飲むほうに夢中になってしまいました。めちゃ寒い日。日本酒がとてもおいしい夜でした。
今日のいと井は、たら鍋を中心に据えたコースです。
0 件のコメント:
コメントを投稿