草津東高校のMF10番山本悠樹君。写真は[MOM1049]草津東FW山本悠樹(2年)_圧巻ゴールも!2年生エースが大勝もたらす - エキサイトニュースから転載
ピンポ~ン。チャイムの音。
出てみましたら、草津東高校サッカー部のお母さん3人でした。
草津東高校、このへんではもっぱらクサヒガは、第93回全国高等学校サッカー選手権大会に滋賀県代表として出場が決まっています。お母さんたちは、その寄付金集めに、この寒空の下、学校周辺の家庭を回っておられました。
草津東高校はめちゃ広い敷地です。すぐ隣が西渋川小学校。JR草津駅まで高校生なら歩いて10分もかからないでしょう。
野洲との決勝戦をスーパーゴールで勝ち抜く
オシャレなお母さん方でした。それに美人さん。ダウンのコートが腰のあたりでキュッとしてまして、ちょっとドキッとしました。冷たい灰色の風が吹く日、ひとりのお母さんのルージュに目が釘付けになりました。高校生のお母さんですから、まあ40歳以上50歳未満だと思います。でも、決してそんな風には見えませんでした。
ーーーああ、クサヒガの方ですか。いやあ、おめでとうございます。1口いくらとかあるんですか?
ーーーはあ、あの、一応1口3,000円とかなってるんですけど、もう本当に、お気持ちだけでもご協力いただけたらと思いまして・・・
県予選、決勝の相手は野洲高校でした。
滋賀県の高校が束になってもなかなか乗り越えられなかった野洲高校の壁。その野洲を破りました。
スコアーは4対2。勝ち越しの3点目は10番山本悠樹君の右足でした。募金集めに来られたお母さん方によりますと、1年生のときからクサヒガの10番を背負っているそうです。
振り向きざま、ミドルレンジからの一発でした。野洲の監督が「防げなかったのは3点目だけ。あとは防げたはずの失点」とコメントしていました。それくらいのスーパーゴールだったのです。
ーーーしかし、なんですねえ、この寒いのにお金集めでたいへんですねえ。子供がレギュラーやったらええけど、控え選手やったらアホみたいですね。
何も深く考えずに言ってしまったのですが、「いや、私達がちょうどそれで」とお母さん方。
ーーーそしたら、レギュラーたちに言っておいてください。1回戦で負けたら承知せんぞ。
千円しか出してないのに偉そうに言っております。
31日の1回戦まであと1週間を切った日、草津東のサッカー場では実践形式の練習が行われていました。「ユーキ、前へ!」とか「ユーキそのまま!」と、チームメートから山本悠樹君への指示がよく飛んでいます。彼を中心にしたチームであることがよく分かりました。
営業所長の代わりにテレビ出演していた頃
私は、2012年まで帝人におりました。帝人はサッカーボール用の人工皮革を作っていますから、全国高等学校選手権大会のスポンサーをずっと続けています。
で、帝人の人工皮革を使ったモルテンの練習用ボール1ダースを持って各県の代表校に届けるという仕事がありました。青森県で青森山田高校に2回、秋田県で西目高校に1回、京都で福知山成美に1回、届ける光栄に授かりました。
これが、けっこう大きなイベントです。仕切るのは帝人でもなければ代表校でもない。この選手権を独占中継する日テレ系列の地元テレビ局です。細かい日程調整など、何度もテレビ局から連絡を受けます。
ボール贈呈当日はそのテレビ局の撮影クルーが学校までVTR収録に来たり、私と代表校主将が夕方の生活情報番組みたいな放映枠に生出演したりで、ただボールを学校に置いて帰るだけではありませんでした。
青森山田の校長室は、ありとあらゆるスポーツ競技の優勝旗やカップであふれかえっていました。どうせ持って帰るんだからずっと置かしておいてくれなんて冗談を県高体連が言うと、当時の校長先生がおっしゃってました。
この仕事、本当は各地営業所所長の役目なんですが、私の場合、テレビに出るのは緊張しすぎると言い出す所長の代役でした。代役には所長になっていてもおかしくない年格好の奴が適任ですから、私くらいしかいませんでした。
あのとき、思いました。テレビ出演でしくじっては会社の恥だと、そういう風に謙虚に緊張しまくるくらいでないと、所長になれないんでしょうね。社風にもよりますが、人選にはそういう気構えが尊重されます。言い換えれば慎重さとか責任感です。私にはそれがないから、テレビに出るのはいっこうに平気。でも、所長の資質に欠ける。
いや、たしかに、慎重さとか責任感はだいじです。でも、そのプレッシャーを乗り超える胆力がないと、石橋を叩いて渡らないだけになる。乗り超えられないまま人の上に立っている人って、わりとたくさんいますよね。
それはさておき、テレビカメラの前で励ましの言葉をチーム主将に伝えます。ボールを渡してからアナウンサーとのやりとりもあります。3年めにはアナウンサーとの息も合いまして、「コメントの腕上げましたねえ」と褒められました。サッカー大好きな私ですから、あの仕事がどれだけ嬉しくてどれだけ誇らしかったことか。
だから、クサヒガに対する思いも人一倍です。
1回戦は遠野高校(岩手県)。似たもの同士の好勝負
さて、クサヒガの初戦は遠野高校(岩手県)です。12月31日正午のキックオフ。琵琶湖放送でテレビ中継されます。
クサヒガと遠野高校は似たもの同士の対戦です。
滋賀も岩手も、サッカーの伝統校といえば公立校です。クサヒガ、遠野、共に公立です。
歴代の代表校を見ましても、滋賀と岩手は公立校の独壇場です。そして両県の公立校は、全国の強豪校相手に何試合かを勝ち上がっていくだけのレベルにあり、全国優勝・準優勝の実績も残しています。
岩手のほうは、代表常連校である盛岡商業が第85回大会で全国優勝しました。遠野は第36回大会で全国準優勝です。
滋賀のほうは、野洲が第85回大会で初出場・初優勝。これまでの高校サッカー界の常識を野洲のセクシーフットボールが破ったと大賞賛されました。
このときに活躍したのが、いまはドイツ・ブンデスリーガのアイントラハト・フランクフルトに所属する乾貴士選手です。鹿児島相手の決勝戦、勝利のゴールは乾選手のヒールパスから生まれました。
クサヒガは第79回大会の準優勝校。この大会の準々決勝でクサヒガは遠野と対戦しました。ですから、今回はその組み合わせの再来です。
あの試合に2-1で勝ったクサヒガは、準決勝で青森山田を2-0で下しました。しかし、決勝戦の相手は、大久保嘉人を擁する国見でした。大久保が2得点を上げ、クサヒガは3-0で破れています。
野洲やクサヒガだけではありません。水口、守山、守山北など、滋賀県代表はすべて公立校です。守山北はベスト4に残ったことがあります。野球では比叡山、近江、滋賀学園など私立ばかりが甲子園に出ていきますが、サッカーの場合、去年になってやっと私立の綾羽が出場した程度です。
公立校が強いのはいいことですね。
小中の時期は地元少年サッカークラブで技術やセンスを磨き、高校進学時に地元校を選んで全国大会を目指す。公立校が強いから、身近な進路選択がそのまま全国につながります。それによって優秀な選手の県外流出が減ることにもなりますし、優秀な選手が地元に残れば全国の強豪と互角に戦えます。
そして、それをまた地元のサッカー少年たちがテレビ観戦しています。ボクも野洲だ、クサヒガだ、守北だ、水口だと、地元で強い選手を目指す夢が膨らむ好循環です。
勝利を信じて
相手が遠野なら勝てるでしょうと気楽なカオで言う私に対して、お母さん方は「さあ・・・」と戸惑い気味でした。
たしかに、こと細かに調べてみますと、決して楽な相手ではありません。全国大会の出場回数は遠野のほうが上ですし、出場大会での戦績を比べると、遠野のほうが安定しています。
滋賀県では野洲の1強時代がずっと続き、他校に全国大会出場の機会がまったく回ってきませんでした。クサヒガは10年ぶりくらいになります。
いっぽう遠野は、盛岡商と2強の座を分け合ってきました。今大会は2年連続出場です。
ここ10年間の戦績は、岩手県はすべて初戦敗退、滋賀県は初戦敗退4回、2回戦敗退5回、優勝1回。勢いは明らかに滋賀です。
う~ん、分からない。勝利を信じるとしか言えません。
私が自宅を出て大阪に向かう時間帯、クサヒガの人工芝練習場では選手たちが練習準備に入っています。頑張ってくれよと心のなかで声をかけて通り過ぎています。
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