福知山市から福井市まで、仕事のドライブ。
おー、町の名前を見れば、福から福ではありませんか。
国道27号線。眠くて眠くてたまらなくなったとき、「ここいろ」という案内表示板を見つけました。
コーヒーくらいなら飲める店でしょう。
あれではないかと見当をつけて車を進めました。
【ためらいが杞憂に】
店の前に立ってみれば、遠目に見る印象よりも店の造りが凝ってあります。
私はためらいました。
このような過疎の土地でこういう店に出会うケースでは、オーナーがエセ文化人であるとか、商売というよりも趣味でやってるとか、なにかと客を選ぶ店であることが少なくありません。
私は私で、好き嫌いが人一倍強いほうです。バンダナを頭に巻いて作務衣を着た男がヒゲを生やしてでもいようものなら、もうそれだけで生理的に受け付けません。
けれども、実際に足を踏み入れれば、入店前のためらいが杞憂に終わりました。感じのいい空気が流れていました。
店の表半分では、古着をリフォームして生まれた衣類や雑貨を売っていました。
【次から次へとおばさんが】
それよりも、次から次へとおばさんが出てくるではありませんか。
「いらっしゃいませ」で顔を出したおばさんが奥に引っ込んだら、まったく別のおばさんが注文を聞きにきてくれました。
そのおばさんが奥に引っ込んだら、さらに新たなおばさんがコーヒーを運んできてくれました。
のみならず、またもや初顔のおばさんが出てきまして、「カワムラさんは、あれ、まだか?」と言って奥に引っ込みました。
まるで手品を見ている気分でした。いったい何人のおばさんを用意してあるのでしょうか。
いや、話をおもしろくするためにおばさんと言っていますが、実は決して所帯じみた女性たちではありません。
文芸、手芸、陶芸といったように、なにか一芸に秀でたような雰囲気を感じさせる方ばかりです。曲芸だけは無理だと思いますが。
町の小さな芸術家たちとでもいえばいいのでしょうか。
コーヒーカップだって、お茶飲み茶碗スタイルで、なかなかシャレてますでしょ。飲みやすい上にとても軽いカップでした。
【カワムラさんはいずこに?】
人気のある店のようです。ちょうどランチタイムでした。
奥の部屋では数人のグループがすでに昼ご飯を食べていました。
私と同時に、乳児を連れた夫婦が入ってきました。
「赤ちゃんがご一緒でしたら畳の部屋がいいですね」と、もういっぽうの奥の部屋へ案内されていました。
私がコーヒーを待っているうちにも、新たな女性二人連れが入ってきました。
お金を払って店を出ようとしていたら、さらに別の女性二人連れが来ました。
忙しいのは、「カワムラさん、まだ?」のおばさんです。どうやらこの方がオーナーではないかとお見受けしました。
新しいお客の気配がするたびに奥から出てきて、「カワムラさんですか?」と尋ねます。
けれども、誰一人としてカワムラさんではありません。
「あら、そうでしたか。カワムラさん、どうしたのかな」と言って、再び奥に引っ込んでいきます。
どうやらカワムラさんというのが昼ご飯を予約しているようです。
窓際のいい席(下の写真)を予約済にして待っているのに、そのカワムラさんがなかなか現われない。
しかたないから、お客が入ってくるたびにカワムラさんかどうかを確かめるしかありません。
予約済の席に座ろうとする二人連れがいました。
「あ、カワムラさんですね。お待ちしてました」
「いえ、ちがいますけど」
カワムラさん、早いこと来てやれよ。お~い、カワムラさ~ん!
カワムラさん、もしこのブログをお読みなら、いまからでも遅くないから行って下さいね。
【心を残しつつも福井へ出発】
カワムラさんが現われるまで店にいようかと思いましたが、なにせ福知山から福井ですから、その時間がありません。
あれからカワムラさんはちゃんと来たのでしょうか。
店を出たら、気になる神社がありました。延喜式内恵比寿大神。
行っておいたほうがいい神社というのは、「おいで、おいで」パワーを漂わせているものです。
このときもその吸引力を存分に感じ取りました。しかし、なにせ福知山から福井です。時間がありません。
移動する町の名前だけでも十分に福から福ですし、お参りはまたにしましょう。
おおまかな姿を確かめるにとどめ、早漏気味に去ってきました。
0 件のコメント:
コメントを投稿