2012-02-25

ソレイユ(福知山市) 日本一のカキはいまだ幻

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 冬が楽しみなソレイユの牡蠣。兵庫県の赤穂産です。メニューにはシェフ河村さんからこんなメッセージが。

カキは海のミルクと呼ばれる完全栄養食品です。又、この赤穂のカキ(松本水産)は安全で、その味は他のものと違い、日本一だと思います。手間をかけたこのカキ、生産者の情熱を、是非一度御賞味ください。シェフより

 まずは迷うことなく殻つき生牡蠣です。殻つきシシリア風活かきのマリネ。1個400円。

 ソレイユはこのドレッシングがめちゃうまです。LAST TANGO IN 丹後が扱うエリアのなかでいちばんだと思っています。

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 このドレッシングには、シシリア産Exオリーブオイルと白ワインビネガー、細かく刻んだオニオンが使ってあります。ソムリエの友次さんによりますと、フランス風のレシピに近いそうです。フランス風は、ワインビネガーが赤になり、オニオンがエシャロットになるといいます。

 で、さっきからずっとメニューを見ていまして、どうしても気になっているのが、日本一のカキだとか、日本一の味だとかのフレーズです。牡蠣の味わいの違いを迷うことなく言い当てるのはなかなか難しいことだけに、「ほんまやろか?」の気持ちでいました。

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 気になることはネットに聞け。それを実践したら、実にいい情報に当たりました。日本一のカキがこれから決まろうとしているところでした。

 日本オイスター協会(JOA)が、<第壱回かき日本一決定戦 日本一旨い「殻付き生牡蠣」を決める大会>というのを2012年2月26日に予定しているというではありませんか。しかも、開催決定ではなくて、開祭決定と書いてある。祭りっすか。

 おもしろそう!

 ところが、さらに調べていきますと、2012年1月26日、JOAからの最新のお知らせは、この大会を延期せざるをえなくなったと告げています。

 あれ、ま!

 なぜ、日本一決定戦が延期されるのか。もしあなたが牡蠣大好き人間、とくに殻つき生牡蠣がいちばん好きというのなら、下の画像をクリックしてJOAの記事を読んでみてくださいね。

 大会が延期された理由をひとことに要約しますと、殻つき生牡蠣で競う企画に無理があったということになります。

 なんでやねん?

 JOAによりますと、万が一競技会中に食中毒が発生した場合、会場となった飲食店(今回の場合はマイモン銀座店)が営業停止に追い込まれるからだそうです。生産段階や流通段階における衛生管理に問題があった場合でも、カキの提供を受け持った飲食店がすべて責任を負わされてしまう。

 飲食店だけが責任を負わされるのは、生産段階や流通段階での衛生管理を把握するための仕組みがないからだそうです。消費される前段階で食中毒発生を予防する手立てがない。ゆえに、行政は生牡蠣の需要拡大を抑えようとする。これが日本の生牡蠣を取り巻く現実だと、JOAはいいます。

 もちろん、そんなことを百も承知のJOAです。競技会のときは食中毒の責任をJOAがすべて負うと誓約書を書くつもりでいたそうです。しかし、それでもなおかつ、保健所によるマイモン銀座店の営業停止処分は免れないことがわかるに至り、競技会を実現に導くための万策が尽きた様相です。

 日本一決定戦のみならず、JOAはオイスターワールドカップも計画しています。しかし、このような行政方針下では、生牡蠣で戦う競技会の開催は困難です。こんなことでは日本の牡蠣市場はいつまで経っても剥き身と加熱品が主体のまま。殻つき生牡蠣の市場が育たない。世界の主流は殻つき生牡蠣なのに日本のおいしい牡蠣で世界市場に打って出る素地が整わない。日本一決定戦の仕掛け人佐藤言也さんは、そう嘆いています。

 JOAにとって目下の大きな課題は、東日本大震災で壊滅的な打撃をこうむった東北地方の牡蠣養殖業の早期復興だといいます。この課題解決をスピードアップせんものと、佐藤言也さんは世界市場への切り込み、具体的には中国を第一ターゲットに据えた売り込みを図ろうとしています。その第一ステップが日本一決定戦だったはずなのですが、行政の壁は厚く高かったということになりますね。

 海水温の低い冬場の牡蠣にはノロウイルスのリスクが高いことから、時期を4月~5月にずらして食中毒のリスクを減らし、その上で日本一決定戦を開催できないものか、佐藤言也さんはいま模索しているところだそうです。

 ソレイユのメニューで目に入った日本一のカキという短いフレーズから、日本オイスター協会のジレンマにまでたどり着いてしまいました。そして、佐藤言也さんという人物の憤りを知るに至り、ますます殻つき生牡蠣のファンになってしまいました。

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