2012-02-11
おばあちゃんを竜宮城へ⑪ 介護はある日突然に
こういう車を見ますと、「おっ!」と思うようになりました。どこかの介護施設がデイサービスのお年寄りを運ぶ車です。
いやいや、はたらく自動車が好きになったんじゃないです。はたらく自動車が大好きなのは孫の聖太郎です。私のほうは介護関連の何かを見ると関心をもたずにはいられないわけでして、人は変われば変わるもんですね。
介護の現実はいきなりやってきました。
日本のお年寄りが要介護状態になってしまう原因をみてみます。「要介護」とは、介護保険上の要介護認定カテゴリー「要介護1~5」を指しています。
これらの原因のうち、高齢による衰弱、認知症、関節疾患は徐々に進行します。いっぽう、脳血管疾患と骨折・転倒はある日突然やってきます。このふたつを合わせますと33%になります。3割強の人は、ある日いきなり要介護の現実をつきつけられる。「さあ、どうしよう」が始まる。事変ですね。
うちのおじいちゃんも例外ではありませんでした。転倒し、骨折し、入院し、退院後は以前にも増して身体が不自由になって・・・
老夫婦がこのまま静かに余生を過ごすのかと思っていたのですが、去年10月の骨折が事態を大きく変えました。退院後のおじいちゃんはさらに自立度が落ちる見込みでした。自宅で暮らすのはきわめて困難だと思わなくてはなりませんでした。あわてて介護施設の入居申し込みに走りました。
下に並べた笑顔の写真を順に見比べてください。怪我が老いを加速させます。エネルギーだのパワーだのと呼ぶに値する何かが、骨折ごとに消えていきます。
おじいちゃんの入院続きにもかかわらず、おばあちゃんは老け込みませんねえ。アリナミンVを飲んでますからねえ。あんたも飲めといわれて妻お龍も一本。
おじいちゃん、おばあちゃんは、年金のおかげで助かりました。二人ともが小学校の教師でしたから、公務員共済の年金をけっこうもらっています。だから、有料老人ホームの一種であるCアミーユを選択肢に加えることができました。公共の介護施設は、どこも200人~300人が順番待ちでした。おじいちゃんが割りこめる可能性はかぎりなくゼロでした。
「特養が先か、棺桶が先か」とよく言われます。そう言っておくほうがおもしろいというのではなくて、それくらいに厳しい現実がたしかに存在しています。
いま二人が自宅暮らしだったらたいへんでした。家の中で歩行器ゴロゴロです。おじいちゃんが下痢でもしながら歩いた日には、オムツのすき間から床に落ちたウンコが航跡を描きます。引いてしまいますよねえ。
引いていられないのはおばあちゃん。ヘルパーさんが来てくれる火曜日までそのままというわけにはいきません。ウンコは極端な例だとしても、おじいちゃんの世話を繰り返しているうちに、世話をするおばあちゃんのほうが身体をこわしていたことでしょう。
滋賀県の嘉田知事、滋賀県は老人ホームに弱いでしょ。橋下みたいな奴にシッポふってないで、少しは足下を見ましょう。橋下より足下です。
「統計でみる都道府県のすがた2012 総務省統計局」で滋賀県をみますと、65歳以上人口10万人あたりの老人ホーム数では、全国平均42.8軒に対して33.8軒と大きく遅れをとっています。しかも、どの老人ホームもキャパが小さいのか、1軒あたりの在所者数が全国平均より4人くらい少ない状況です。大型豪華客船を琵琶湖に浮かべてそこを老人ホームにしたらどないでしょうか。船の名は老いたニック号。
老人ホーム入居の順番待ちはどの自治体にも共通の問題点ですから、入居の公平性を図るべく、それぞれが独自の入所基準ルールを定めています。滋賀県の場合は、入居希望者ごとに以下のような評価項目で入居の緊急度合いを点数化します。点数が高いほど優先されます(クリックしてPDFページへ)。
この優先基準評価項目は75点満点になっています。75点に達してしまう入居申し込み者はいくらでもいます。そういう人から入居していきます。入る時点ですでに75点までいってしまっているお年寄りですし、75点のなかでもとりわけ独居老人優先ですから、誰かがまた自宅に戻るなんてことはまず望めません。入ったらだいたいが死ぬまでです。急に空きが出るとすれば、長期入院者が出るか死亡者が出るか。あ、でも、どこかの施設でインフルエンザ流行れなんて、祈ったらいけませんよ(自戒)。
「おばあちゃんを竜宮城へ」の宴たけなわではございますが、本日はちょっと違う色合いで中締めしてみました。
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おばあちゃんを竜宮城へ
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