2012-04-25

丹後由良 ゆらゆらと多重人格 ②みかん

KTR奈具海岸

  丹後由良手前の奈具海岸。山肌を鉄路の幅に削っただけの敷設。走る列車はTANGO遊悠号。
 どういう景色が見えるのか。海を見下ろしてみましょうか。

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KTRの沿線中、ほんまに海の近くを走るのは、宮津と西舞鶴を結ぶ宮津線の、この栗田~丹後由良の区間だけ。TANGO遊悠号に乗車しますと、いちばん眺めのいいこの場所に来たら、しばし列車を止めてくれます。写真はトンネル前で停止中の遊悠号。

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 このあたりを奈具海岸といい、国道178号線に「安寿ロマン海道」というニックネームがつけられています。誰も安寿ロマン海道とは呼びませんが。
 大江山の鬼のときも同じようなことを言いましたが、安寿と厨子王の物語が丹後由良であってもなくても、99%の人たちにはどうでもいいことなのです。

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 さて、丹後由良の特徴、その②はみかんです、みかん。

 2.由良みかん---飾り気のない味ながら


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 風が運ぶシトラスの香り。いや、うそやないです。由良の道を歩いていますと、ときどき柑橘系のフレーバーを感じます。
 お寺の庭にすら、ほれ、この通り。
 線路のそばにも、ほれ、この通り。
 どこを歩いても、当たり前みたいに柑橘類が植えてあります。

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 立派なお屋敷の塀に沿って歩いていきましたら、こんな看板がありました。米・ハッサク他販売してます。米とハッサクの区切りは「・」です。米とハッサク、戸惑うことなしに同類扱い。

 こんな大きなお屋敷のどこでどんな風に米・ハッサクを売っているのでしょうか。
 入ってみたら、重厚な玄関戸の前で、無人販売になっていました。並んでいるのは、夏みかん、ハッサク、きよみ、イヨカン。大きさによってサイズ分けされています。値段は500円と1000円。
 イヨカンの500円とハッサクの500円を選んで、料金箱に千円札を入れました。

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写真を撮っていたら、液晶画面に自転車を押すおばあさんが入りました。この家のおばあさんでした。腰が曲がって、自転車とどっこいどっこいの背丈です。それでも毎日畑仕事をなさっているとのこと。お達者です。

 いまハッサクとイヨカンを買いましたと伝えたら、オマケに夏みかんはどうですかと、ありがたいお言葉。
 昨年まではおじいさんがご存命で、柑橘類の栽培をおばあさんも手伝っておられたそうです。いまは息子さんご夫婦に任せているとのことでした。無人販売を思いついたのは息子さんご夫妻です。

  昼間は二人とも出とりますので。

 無人販売では申し訳ないと、昔気質のおばあさんはそう思っておられるご様子でした。

 ハッサクをおあげしたいんですが、息子たちがどこにやったか私にはわからんで。夏みかんばっかりですけど。

 プラスチックのコンテナに詰め込まれた夏みかん。上に新聞紙が被せてあるのは、素朴で金のかからない追熟法でしょう。その新聞紙を持ち上げ、おいしそうな顔つきをしたのを、おばあさんは右手にひとつ、左手にひとつ。特選夏みかんがふたつずつ、上がりかまちに並べられていきます。
 もし酸っぱければ許して下さいと、おばあさんからそこまで言ってもらって、私はとても恐縮です。
 「いまは雑柑ばかりです」とおばあさんがおっしゃいました。みかん以外を雑柑と呼ぶそうでして、その区分を初めて知りました。

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みかん農家

 おばあさん、ありがとうございました。うちのヨメお龍が、「おいしいよ、これ。夏みかんがとくにおいしいよ」と申しております。
 「そうか?ちょっと苦くないか、これ?」と、私は失礼にも言ってしまいました。「なに言ってるのよ、そこ
が夏みかんの味なのよ。それに甘いよ。こういうのないよ」と、お龍に諭されました。
 どうか、自転車でこけないようにしてくださいね。こけたらおしまいと、老人ホームの入居者たちが口々に言ってましたから。


 スーパーに並ぶ愛媛、和歌山、静岡などのミカンに慣らされている私は、ここ由良や、その対岸にある瀬崎のミカンがいまいち不得手です。糖度が酸度に勝るミカンでないとおいしいと思えません。由良や瀬崎のミカンは、味の濃さと同時に酸っぱさを感じます。

 由良のミカン直売所のなかには酸っぱくて食べられない商品を並べている店が混じります。それは別にして、妻お龍が言うところの「実に柑橘類らしい香りと味わい。味も濃い」というのが、私の味覚ではおいしさに変換されません。

 由良の柑橘畑を眺めていると、放任主義という言葉が浮かんできます。落ちたいように実は落ちていますし、来たいように鳥は来ていますし。みかんで勝負しているといった気迫を感じません。
 もちろんこれはうわべの印象だけですので、間違っていたら由良のミカン農家の方々に申し訳ないことです。

 でも、私は、それくらいゆるゆる栽培のほうが由良みかんらしいのではないかと思っています。全国に名だたる産地になってやろうとか、大規模にやってみようとか、そういう野心を感じさせないところが由良みかんのおいしさではないのかと、お龍の講釈を拝聴しながら思い始めました。


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