「体験」と称するにふさわしいカレー。
おいしさも辛さも、私には大きなサプライズでした。
大阪市西区。真っ黄色に色づいたイチョウ並木のなにわ筋からほどない場所、このカレー店「バンブルビー」があります。
ホットであればあるだけ食べたくなる方は、ぜひ一度。
キーマカレーです。
ホールスパイスを深く焙煎。キーマ(ミンチ肉)は、京鴨、牛肉、マトンの3種類。私はマトンを選びました。
辛さはどうしますか?という質問はありませんでした。キーマカレーと確かめたマスターは、そのままキッチンにこもってしまいました。店内に漂うスパイスの香りだけで、私は目の周りが汗ばんでいました。えらいとこに来てしもた・・・
ひと口目から私はぶっ飛びました。平常心を失いました。
辛いのが平気な人は「まだまだこれしき」と言うのでしょうが、私の場合、食った途端、違う世界へ連れて行かれた気分でした。超ド級とブログに書こうと決めました。
ーーーすごいスパイスや。自家焙煎? へえ。すごいわ、これ。こんなん初めてですわ。味は、旨いと辛いのふたつだけですやんか。
インドカレーを名乗っていますが、インド人やネパール人がやっているカレーでもここまでスパイシーにはしません。
もちろん、ホテルの高級カレーとも、うどん屋やそば屋の出汁が利いたカレーとも、高速サービスエリアの名物カレーとも異なります。
とにかくスパイス。スパイスでどこまでおいしく変身できるかを追及しているような一途さを感じます。
口の粘膜、痺れまくってます。うわっ、トンガラシ、4cmくらい、赤いまま入っとるわ。
それでも、舌はえらいやつです。負けませんね。辛さのすき間からちゃんとおいしさを探し当ててきます。本当においしい。たぶん、こんなにホットな味付けにするまでもなくおいしいカレーなんだと思います。でも、おいしいだけでは、おもしろさがありません。
容赦、妥協、迎合、打算、いっさいなし。店主の好きなようにスパイスを利かせまくってます。あかん人は絶対にあかんでしょうね。食べログにはボロカス気味の口コミもあります。
けれども、よく味わえば、スパイスにも持ち味があると分かります。ただヒーハーだけではなくて、ヒーハーにしか出せないコクがあることも分かります。スパイスには素材の味を引き出す役目があります。そこから生まれるおいしさを狙っているのでしょう。気に入った人ならクセになります。
汗が吹き出ます。紙ナプキンで拭いたら、おでこにくっついたまま離れません。拭き続けていたら、汗を吸いすぎて破れてしまいました。
毎日新聞で「おいしさ求めて」という連載コラムを担当している門上武士さんが、この店を訪れていました。
決してベタ褒めせず、おいしいカレーのひとつとして紹介していますが、スパイスに徹底してこだわるユニークな姿勢については、高く評価していました。スパイスを焙煎する時間が必要だから11時~16時という短い営業時間にせざるを得ないそうです。
これだけユニークですと、テレビも放っておきません。番組で訪れた芸人たちのサインがあちこちに飾られています。関西テレビの「よーいドン!」で「隣の人間国宝さん」をやってる円広志さんも来ていました。
円広志さんのサインの隣には、ミドー楽器主催のロック・ミュージック・コンテストの表彰状。マスターはロック・ミュージシャンでもあるようです。
店には真空管のアンプが2台。大きな音で流れ始めたのは、久保田真琴。
カレー屋で大きな音で久保田真琴。ええ感じのズレ方。こういうのは好きですねえ。委細かまわぬこの奔放さが、カレーのユニークな味とリンクしています。
食べてから10分ほど経っていたでしょうか、胃までビックリしてることに気づきました。
熱い。胃の中が熱い。粘膜をめちゃくちゃ刺激されています。
胃に炎と書いて胃炎。まさにこれだ!と気づきました。
アホほど辛いカレーを好んで食べるのは、私の後を引き継いで北陸三県を担当している美女。どの店に行っても「この最高よりもっと辛いのありますか?」と尋ねます。敦賀のインド人がびっくりしてました。
そんな彼女は胃が熱くて困ったことがないのでしょうか?
電話しました。
ーーーなに言ってるんですか。その熱さがいいんでしょ。だから激辛を食べるんじゃないですか。え、吐きそうなんですか?そんな、もったいない。そういうときは、飲むヨーグルトです。熱いのがすぐに消えます。
本当でした。飲むヨーグルト。一発で胃の熱さが収まりました。
胃の熱さが収まったいま、明日のケツの穴が心配になってきました。
ところで、バンブルビーとはbumblebeeのことで、日本の学名はマルハナバチです。
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