2013-05-23

タブリエ(金沢市) 木倉町通りでおいしいイタリアンに出会った

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 金沢の夜、出歩かないではおられない。
 酒飲みでなくて助かった。酒飲みならば、あの店、この店とはしごしまくって、金がすぐになくなりそうです。

 金沢の繁華街と言えば、ご存じのように片町・香林坊です。私が住んでいた35年前に比べると、帰宅を忘れた酔客の群れがずいぶん減った印象ですが、それでもやっぱり、数多くの飲食店・飲み屋が頑張り続けています。

 出張の夜をしっかり彩ってくれる点で、クラシカルなよさを保ち続けるのが金沢の町だなあと、いつも思います。


 「金沢イタリアンシェフ・オーナーズ・クラブ」というのがあります。
 「自ら厨房に立ち、イタリア料理店を経営するオーナーシェフ有志が集まった団体(公式サイトの自己紹介文)」ということだそうです。金沢市を中心とした8つの店のシェフたちが集まっています。

 このクラブの一員である「ピッツエリア・サリーナ」で食べたナポリタン・ピザがおいしくて、「これなら、イタリアンシェフ・オーナーズ・クラブはどの店もよさそう。8店全部行ってみたいぞ」の気持ちになりました。

 この夜は、ホテルからの徒歩圏内、片町にある「欧風料理タブリエ」にしました。シェフは安井一博さんです。飲食店が集中するあの一帯をひとことで片町と言い慣わしてはいますが、もう少しきちんと言えば、タブリエが位置するのは木倉町通りです。

 超人気店だとネットには書いてありました。電話してみたら、「いくらでも空いてますよ」との返事です。「空いててよかった」と私は思ったけれど、シェフにしてみたら「空いててよかった」では済みませんよね。

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 ほんまに空いていた店内は、カウンターとテーブルを合わせて20人程度のキャパシティーでした。さらに2階にも場所がありました。昇る階段にはハンガーがいくつもぶら下がっていました。あれだけのハンガーが用意されていることから考えて、2階はおそらく歓送迎会などの団体専用席なのでしょう。

 4人組の客がいました。仲間同士で大いに飲んでいます。携帯でさらに仲間を呼んでいます。「あんたも来まっしま」の電話が終わるたびに、ひとりずつ増えていきます。10分とたたずにやってくるところを見ると、呼ばれたほうもどこか近くで飲んでいたのでしょう。

 イタリアンの店だとはいえ、ここは片町です。ノミニュケーションの場所にも使ってもらえないと繁盛しません。カウンターを見ただけでも、むしろちょっとした酒場のようにボトルが並んでいます。シェフ自ら、彼らのテーブルへ酒を運ぶために往復していました。

 イタリアンの店は、いまここの光景のように、陽気で少しやかましいほうが、私は好きです。それに、陽気でやかましくなるのは、客たちの心が和んでいるからで、その裏には出てくる食い物や飲み物のおいしさがあると思います。

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 白身魚のカルパッチョを頼みました。
 私にしては珍しくビールを飲んでいます。イタリアのビールはどんなものかとの好奇心に誘われて、小さいやつを1本だけ。

 自分で何かと料理するようになってから、シェフの工夫を知るのが楽しみになっています。今夜のカルパッチョは勉強になりました。

 よし、今度トライするぞと思ったのが、アンチョビとニンニクを一体化させた味付けです。これがめちゃうまい。
 ニンニクみじん切りとアンチョビを炒めて、それを小さな刺身大の魚にのせてあります。塩っ気と香ばしさで食べるカルパッチョがあることを知りました。

 葉っぱはルッコラだと思ったのですが、バジルなど芳香の強いハーブを使うよりも和食テイストに近づいていました。とはいえ湯むきトマトの小さな切片から甘みがしっかり引き出されているあたり、やはりこれはイタリアンです。
 

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 こちらは、前菜3品(って、4品ありますけど)。
 どれが何という料理かを聞かなかったのですが、なんでもなさそうで実はいずれもおいしい。
 いま写真を見ているだけでも、鮮やかな色を保ちながらクタっと柔らかくなったパプリカの甘酸っぱさがなつかしいくらいです。

 食べてからすでに1日半が過ぎてしまって、しかも昨日の仕事で緊張を強いられたこともあり、書こうと思っていたおいしさ表現を忘れてしまいました。たしかいい表現だったと思うのですが・・・

 ひとつ頭にしっかり残っているのは、タコかイカかわかりませんけど、一夜干しのように旨みが凝縮されていたこと。それをオイルベースのドレッシングで食べる。「能登だ!」と思いました。実際には能登半島産かどうか知りませんが、イメージは間違いなく能登です。

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 プロシュートとルッコラを使ったサラダです。
 早くも飲み物がペリエに変わっている。酒をいくらでも飲める人がうらやましくてしょうがありません。

 ネット通販などはプロシュートのおいしさを強調しまくります。でも、実際に買ってみても、プロシュート単体でおいしいと感じたことがありません。この前、京都駅の伊勢丹で買ってみても五十歩百歩でした。

 プロシュートと何を組み合わせればおいしいのかなと思ってましたので、このサラダも勉強になりました。ドレッシングの酸っぱさ具合などもあってそっくりそのままプロの真似ができるはずもないのですが、ルッコラと組み合わせたら双方が引き立てあうことだけは少なくとも学びました。

 福知山市JA三和の産直売り場に80円のルッコラが並び始める季節です。行かねば。あそこのルッコラは、80円とは思えない量と、80円でいいのですかというくらいの味の濃さです。

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 さあ、いよいよこのステーキのことが書けます。といっても、おいしさに対して私のボキャブラリー不足。めちゃうまかったとしか言えないのですが。

 正式名称は「牛ロース肉のタリアータ(イタリア風薄切りステーキ)」となっています。薄切りといっても、薄く切ってから焼いてあるとは思えません。焼け具合がロースト・ビーフのようでしたので、焼いてから薄く切ったはずです。
 タリアータは「切った」という意味のイタリア語だそうで、こなれた日本語に訳すなら「牛肉のたたき」がいいのかもしれません。

 とにかくソースの味わい深さに感嘆しました。
 フライパンに残った肉汁をベースに、バルサミコも煮詰めたでしょうし、赤ワインも煮詰めたでしょう。でも、酸っぱさは何か。香辛料的辛さがあったので粒マスタードのような気もするし、ソースのなかにつぶれた形で残っている小さな破片が何かベリー類のような気もするし・・・

 そのおいしくてたまらないソースが、空になった白い皿にまだ残っていました。どうするの?
 糖質制限ダイエット中でなければ即座にパンをもらって拭い取りつつ食べるところです。洗わなくてもいいくらいまできれいにする。パスタやピザを注文していないのは、糖質制限ダイエットゆえです。

 で、残ったソース、どうするねん?
 パンはなくとも舌がある。

 と、そのとき思い出しました。「お父さん、どこかのお店でお皿を舐めるのだけはやめてね。見られてないようで見られてるのよ」と、妻お龍が言ってました。わずか二日か三日前のことです。あれがなかったら、他人の目を盗み盗みでやっていたことでしょう。

 店を出てからお龍にすぐ電話しました。あんなおいしいステーキを食べたことがないと告げると、うらやましがらせるために話を作っているのだろうと信じてもらえませんでした。信じないのならそれでいい。ここは金沢。滋賀県にいるおまえはどうせ食えないのだ。

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 糖質制限ダイエット中とはいうものの、ドルチェもいってしまいました。リンゴのタルトです。
 糖質制限の身に嬉しかったのは、余計な甘さがどこにもなかったことでした。それでいておいしい。そりゃ多少はグラニュー糖も入っているでしょうが、最低限に抑えてあります。

 でも、シェフは、このタルト以外にはデザートの種類を用意していない様子でした。「シェフ特製のドルチェはドルチェのメニューからお選びください」と書いてあるのに、メニューはなかった。何があるかをシェフに尋ねたのですが、リンゴのタルトの他には何も言いませんでしたからねえ。

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 香林坊あたりをふらつきながら、満腹・満足と大書されたような腹をさすっていました。

 けれども・・・これだけ飲食店数の多い金沢市で、しかも片町で、イタリアンの店を続けていくのはけっこう苦労が多いんでしょうねえ。着だおれ・食いだおれの金沢市民ですが、ここまで服飾店と飲食店がありますと、すべての店を守るだけの余裕はないと思えます。
 思い出してみたら、何度もルッコラが出てきたし、ブロッコリーが出てきたし、キヌサヤが出てきたし。同じ素材を何度も口にしました。値段を高くしたらすぐに客が減る条件下で食材の種類をむやみに増やすこともできず、仕入れ内容を絞りに絞っているのでしょう。。
 そのかわり、安井シェフにはウデがあるというものです。バラエティー豊かな食材を使っておいしくないものばかり出すよりは、同じ食材の繰り返しでもおいしいものを出したほうが客は喜びます。

 ホテルへ帰るには、香林坊から武蔵方面へと進み、尾崎神社の見える交差点まで来たら右に曲がります。そして、ほどなく、音響が自慢のジャズスポット穆念。

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 この夜は、私のブログをよく読んでいただいている女性がひとりでワインを飲んでいました。ちょっと前が誕生日だったとかで、そのお祝いだそうです。勝沼醸造のアルガブランカ・イセハラ2012年をひとりで1本空けてしまったそうで、ロレツが回っていません。

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 ふすま1枚ほどもあるJBLの大型スピーカーから、ド迫力のドラムスが響いていました。マスターとも親交のある嶋津健一トリオの「All kinds of ballads」というアルバムでした。

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 夜も次第に老けて団体客の帰った穆念のテーブル席。庭に向かって開け放たれた入り口ドアーが、夏へと移りゆく季節の到来を告げていました。

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