おおい町のホテルうみんぴあに泊まった夜、晩ご飯は小浜まで足を伸ばすのが楽しそうでした。
ホテルのカウンターで尋ねたら、オススメは「ごえん」か「雅」とのことでした。
店に入りますと、まずは日本酒と焼酎がお出迎え。若狭の地酒も並んでいました。ちょっと飲んで代行で帰ろうかと考えましたが、ポケットのお札を出してみたら7千円しか入っていませんでした。
日曜の夜8時、店は満員でした。カウンターにはオジサンたち、奥の小上がりには家族連れ。つまり地元の常連さんたちにそれだけ人気の店だということになります。ホテルうみんぴあのオススメに間違いはありません。
こういう居酒屋系の店が日曜の夜に家族連れで混んでいるのは、福知山や舞鶴ではあまり見かけない光景です。ファミレスやラーメン屋があまりないのか、それとも小浜市民は食べることが好きなのか。そんなことを思いつつ、ほぼ30分。やっと席が空きました。
海に春が訪れています。
いさざの玉子とじ、メバルの煮付けを注文しました。
「メバルは、おひとりで召し上がるのならあまり大きくないのにしておきましょう」と女将さんが言ってました。実際にテーブルにやってきたのは、充分に大きなメバルでした。
今年の春はイサザが遅れているといいます。このあたりですと、獲れ始めるのは舞鶴がいちばん早くて、そこから3日~4日後に小浜でも獲れ始めるそうです。今年はまだ小浜の川にイサザがこないから、舞鶴のイサザを使っている。女将さんからそう聞きました。
春のメバルはイサザを食べます。イサザを食べたメバルをヒトが食べます。食物連鎖というのか、無理やりの春というのか。
メバルを食べました。ちがうな。しゃぶりました。
箸で身をむしって食べるだけではなくて、骨を指でつまんで細かい身をしゃぶります。最後は頭をペロペロなめて、皿に残った煮汁を飲み干す。
ぐっと濃い目の味付けです。煮汁で咳き込みました。県をまたぐだけで味がいきなり濃くなるもんなんですね。
イサザの鍋がクツクツと音を立て始めたら、女将さんが玉子を加えにきてくれます。
半熟がよろしければ早いめに火を消してください、固いのがお好きなら自然と火が消えるまで待ってくださいとのことでした。
私は半熟がよかったのですが、火の消し方がわからなくて、食べていくうちになんぼでも固くなってしまいました。
魚の春は人の春。隣の家族連れの会話が、お姉ちゃんの学習机を買う話に変わっていました。
小浜といえば、へしこです。
いやいや、丹後といえばへしこです、宮津といえばへしこです、伊根といえばへしこです、舞鶴といえばへしこです。
私の行き先は「へしこです」に不自由しません。
それでも今夜は小浜ですから、へしこといえば小浜です。
へしこのお茶漬けです。
かりっと焼き上げたへしこが、なんとブロックでのっています。こんなへしこの切り方は見たことありません。普通は薄い。ブロックだということは、自らのかじり方で辛さを調節するんでしょうね。
いまこの写真を見ながら、いますぐもういっぺん食べたくなりました。おいしかった。あれはどういうお茶だったのか。
へしこは、丹後以上の塩辛さです。丹後のへしこは、塩辛さのなかにも鯖の旨味成分を引き出すへしこですが、この日のへしこは保存度優先のような塩加減でした。
保存度優先は都まで鯖を運んだ歴史ゆえかと、勝手な想像。
野菜のてんぷらも注文しました。これは、東寿司やわきもとのほうがはるかにおいしい。
コロモちがう、野菜ちがう、タレがちがう、風味がちがう~、ゴメンね~。アッ、アッ、ア~、イーミテーションゴールド。
気配りの行き届いた女将さんでした。
揚げ出し豆腐を頼んだ家族連れがいたら、「みんな、生姜は大丈夫かなあ?」と子供たちに尋ねる。子供が首を横に振るから、「それなら生姜だけは別の皿にしておきますね」と解決してしまう。
おにぎりの注文があったら、「梅干、酸っぱくない?食べられる?」と子供に尋ねる。子供はやっぱり首を横に振る。「そうか、それなら梅干を昆布に変えとくね」と、これまた解決。
「お飲み物は私でいいんですが、お料理のご注文は女将さんが来ますから」と店のスタッフが言います。少しでも客の事情に合わせたいという女将さんの気遣いが見えるようです。
印象的だったのは、塩味の濃さでした。おいしいんですが、しょっぱい。塩加減を間違えているしょっぱさではなくて、塩辛さを好む土地柄ゆえのしょっぱさです。
大飯原発から同じ半径30kmの範囲内でも、西側の丹後と東側の小浜でこれだけ塩辛さが違うのかと、小さな驚きでした。
ウーロン茶2杯を含む勘定です。
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