金沢。加賀百万石時代の武家屋敷跡が居並ぶ長町界隈です。
「大野庄用水」と呼ばれる疎水の流れ、そして延々と続く土塀。土塀の内側に建つ屋敷。その屋敷の庭園。
医薬品のMRになりたての頃、はるか36年前のことですが、金沢聖霊病院というキリスト教系の病院を訪問するために、この長町界隈の狭い路地を運転していました。
【お龍は食器に目がなくて】
「あの暖簾は何かしら?行ってみたい」と、私の妻お龍が言いました。細い路地の奥でわずかに揺れる暖簾。人も出入りしています。
暖簾が近づくにつれて、なにか九谷焼に関係する店でありそうなことがわかってきました。
暖簾の前まで来てみれば、「金沢九谷ミュージアム」と名付けられた陶器店でした。
古い日本家屋の内部を店舗向けに改装した空間に、九谷焼の商品が美しくディスプレーされています。九谷焼ですから、どちらを見渡しましても陳列棚が華やか。食器たちが歌っています。
庭を眺めながらの喫茶スペースも用意されていて、長町らしさがよく活かされています。
ミュージアムというくらいですから、300万円、100万円、50万円といった品物もありました。けれども、品揃えの9割までは数百円から数万円の実用食器です。
お龍は食器を買うのが大好きです。
xxxxxだからこういうのが欲しいなと思っていたの。うちにあるのは○○○○○だし。
そのニーズは、キッチン段階ですでに生じていたものなのか。店に入ってから形を成したものなのか。
お龍は急須を買いました。九谷らしい絵柄を選んで、「2310円には見えないでしょ」と上機嫌でした。
【お菓子をくれる人はいい人だ】
こんなところに俵屋があったかしら?
お龍が言うように、私たちが金沢に住んでいた頃、長町に俵屋はありませんでした。俵屋の水飴を買いたいときは、小橋町の本店まで行っていました。
長町を散策するついでに俵屋の水飴が買えるのですから、観光客には便利なことです。商品の前に並ぶ客の姿がガラス戸越しに見えました。
お龍はお菓子にも目がありません。そんな母親に育てられた娘の基子は、お菓子をくれる人はいい人だという判断基準のまま成長しました。
お龍が入ったのは、茶菓工房たろうでした。地続きの隣が、見学可能な武家屋敷跡として知られる野村家です。野村家の交差点が観光パンフ写真によく使われます。
お龍に商品説明をしてくれた女性が、金沢美人の美貌のみならず、商売上手な方でした。もりの音、地の香、カカオ味のようかん。この店の人気商品を試食つきで説明してくれます。
お菓子をくれる人はいい人だ。そんな顔をしたお龍が、差し出されるままに試食を重ねています。商品説明に聞き入っています。
もりの音の小さなパッケージ、347円のだけを買うつもりだったのに、カカオ味のようかんもおいしくて、欲しくなったそうです。
基子が好きだと思うの。送ってあげようと思って。
そうです。母娘そろって、お菓子をくれる人はいい人なんです。
小京都ともいわれる金沢は、夏の暑さも小京都。京都のように不快な蒸し暑さがありません。それでも、真夏の長町界隈なら、午後4時以降のほうが涼しくて歩きやすいと思います。
鏑木商舗 金沢九谷焼ミュージアム
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