富山県富山市八尾町。越中おわら風の盆。
8月20日から30日までが、前夜祭期間です。
前夜祭期間の踊りは、毎夜午後8時から10時まで。
各町内が日替わりで担当します。
そして、9月1日~3日が、本番の輪踊りと町流しです。
今日は砺波市で最後の仕事を終えたので、そのまま八尾へと足を延ばしました。
八尾から奥は山です。
かつて富山に住んでいた頃、八尾の奥へとヤマメ、イワナを釣りに出かけました。
あの頃、風の盆を控えた八尾はうら寂しかったもんです。涼しさが忍びこみ始めると、いわれもなく感傷的な気分になりました。
今年はまだ暑くて、踊り手さんたちもたいへんでしょう。
八尾という地名は、飛騨から越中へ伸びる八つの尾根のことだといいます。
尾根が八つあれば谷も八つある理屈です。八つの谷川を八つに分かれた尾にたとえて八尾だと聞いたこともあります。
深い山のなかを流れてきた渓流は八尾の町で一本にまとまり、井田川となります。
八尾は坂の町といわれます。坂の多い地形は、ちょうど平野と山間地の境に位置するゆえです。
前夜祭の踊りを見ることができる町筋まで、ぼんぼりに照らし出される階段を登りました。
今夜、前夜祭の踊りを担当するのは今町でした。
八尾各町内のなかでもいちばん踊り手の数が少ない町内だと聞いていましたが、なんの、なんの。
女性の踊り手はみんな若い人揃い。
指細い。かいな細い。肩細い。うなじ細い。腰細い。
初秋のススキが風に揺れるようでもあり、水の流れが撚れながら向きを変えるようでもあり。
首を傾ける所作がときおり入って、その小さなが動きが笠で増幅されます。首をかたげる動作まで入るなんて、盆踊りを超えて舞踊ですよねえ。
踊りはゆっくりゆっくり進みます。普通に歩けば5分とかからない距離を30分ほどかけて、一歩一尺くらいの歩幅です。
来年までずっと目に焼き付けておきたい姿でした。おっさん、めっちゃ幸せでした。
人ごみのなかには、北九州からの団体客もいました。
地元の人が、「どこから来られたが?」だったか、「どこからおいでたが?」だったか、尋ねました。「北九州」という答を聞いて、「心配ないっちゃ、同じ日本や。うちの嫁もあれやで、沖縄からきとる」。
かと思えば、「この踊りの仕草にはひとつひとつ意味がある」と教わっている女性が、「フラダンスもそうですよ」。
それひとまず置いとけやと思いましたけどね。
その会話を続けて聞いていますと、風の盆の踊りには農作業にまつわる所作がいろいろ含まれているそうです。
子供たちの踊りもあどけなくて、かわいかった。
男の踊り手もいます。
先頭のこの男性は手練れでした。手首の曲げ伸ばしだけをとってもびしっときまっていました(男に関する記述は短い)。
自分も写真を撮影しておきながらこんなことを言うのは変ですが、写真撮影を禁止にしてもいいと思います。風の盆の目的は写真撮影会ではないし。
昨夜も道端の見物客は運動会のパパ、ママ状態です。
周囲への気遣いに満ちたカメラマンがいる反面、自分がいい写真を撮るために風の盆があるくらいのカメラマンも多くて、そういう人たちの動きすぎが行事の雰囲気を壊していました。そんなバタバタするなよ、風の盆に似合わない。
カメラマンといってますが、携帯、コンパクトデジカメ、デジカメ一眼、ビデオカメラ、それぞれがちょっとずつ撮影に夢中になった結果として、戦々恐々の見物席になってしまうのですが、とくに写真を本格趣味にしていそうな人たちに動きすぎが目立ちます。
行事の雰囲気をこわした結果がいい写真だったとしても、それが本当にその行事のいい写真か?
いい写真のことしか頭にない者は自問すべきです。
踊りの後を、三味がいきます、太鼓がいきます。そして、胡弓もいきます。
テンポがきちんとありながらも、ゆったりと静かで切ない旋律。
風の盆と、いったい誰が呼び始めたんでしょうねえ。
おわら風の盆の公式サイトです。
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