2010-09-27

野間 シリーズの1 京丹後市 弥栄町 そば 「野間亭と田渕夫妻」

そば屋の野間亭

 海もいい。山もいい。
 これが丹後だ。
 うちの支店長や所長は、丹後に来たらこう言う。
 「あんたのエリアに来ると仕事を忘れそうやな」
 わかってくれてありがとう。
 俺は丹後を担当した初日から仕事を忘れたよ。

野間川。鮎の川。野間では、何もかもが川沿いにある。人家、農地、寺、墓、学校、郵便局・・・

  弥栄町の山村、野間に、「野間亭」というそば屋がある。docomoの電波が届くぎりぎりの場所にある。
 表からみたかぎりではやっているのかやっていないのかわかりにくいが、火曜日以外はやっている。

看板は手作り

日にすっかり焼けたのれん。これも手作り

野間の忠犬ハチ公
 私と同い年の田渕さん。少し年下の奥さん。二人の店だ。
 表にハチという名前の柴犬がいる。ハチといえば忠犬ハチ公だが、このハチは常連客をなかなか覚えない。私が行く度にまずは咆える。「また忘れたか、おまえは」と奥さんから言われる。



 田渕さん夫妻は網野に大きな家を持っている。ところが、その家には酒を飲んで寝るために帰るだけ。二人の生活の軸は野間亭だ。
 以前は田渕さんも会社勤めをしていた。しかし、大病を患った。健康はすっかり回復したが、その回復を機に自ら職場を去った。そして、奥さんの郷里である野間で空き家を買った。そば屋を始めた。いうまでもなく自家製そばだ。

ワサビは山から採ってくる。出汁には魚ダシも使う。

店の薪ストーブ。晩秋から冬には大活躍
 一日に何人の客が来るのだろう。雪の日は、雪が降るのを眺めているだけで一日が終わる。

 繁盛しないからいろいろなことができる。
 蕎麦を打つ。畑で野菜を作る。自前のソバ畑の世話をする。山にワサビを採りに行く。農機具の手入れをする。薪を割る。家の修繕をする。客と世間話をする。鮎を追って川で遊ぶ。今年からは一反くらいの米作りも始めた。

 山村暮らしに伴うさまざまな不便を、田渕さん夫妻は自力で解消する。しんどそうな顔つきを見たことがない。笑っている。いつも笑っている。
 野間亭、田渕さん夫妻、野間という山村。
 何回かに分けて書くことになるが、どうかお付き合い願いたい。







座敷もあるから客を受け入れるキャパは充分

この日、田渕さんは外壁の板を新しくしていた

田渕さん夫妻とハチはいつも一緒

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