高校の同級生たちがうちにやってきました。
仲間のひとりが脳出血で倒れましたが、予測外に早く退院できまして、彼を励ますための集まりでした。
よっしゃ、イタリアンメニューは俺に任せてくれと、料理担当を買って出たのです。
写真は、スモークサーモンとアスパラを、2種類のオリーブオイル(ガーリック風味とデイル風味)で和えて、小皿に見立てたチコリに盛りました。チコリごと食べても、チコリは食べなくても、どっちも美味でした。
テレビドラマ「dinner」は主役の江崎究料理長がカッコよかった。本場仕込みのスゴ腕シェフです。私が真似できるのは食材の買い物で金を使いすぎることだけですが、気分はすっかり江崎究です。
喉をいたわれ、大僧正
実家の寺を継いだ同級生はみんなから大僧正と呼ばれています。
大僧正といえば、いま話題は朝鮮総連ビルを45億円で競り落とした最福寺恵観さんですから、同級生の顔も恵観さんにしておきました。我々の同級生は話題にもならない大僧正ですけれども、私たちの間では話題にしてもらっています。
というのも、お経で喉を酷使したがために声が出にくくなってしまいました。長きに渡って高校教師をやっていて、授業でも声を使いまくってきました。彼の声帯は読経に耐えられるだけの余力を残していなかったのでしょう。とはいえ、なんとかしないことには檀家に迷惑をかけます。
彼は耳鼻科に行きました。喉をいたわれ、声をあまり使うなということで、常にマイクとスピーカーを持ち歩くようにとの指示を受けました。
「おまえは常時記者会見か」みたいなことですが、ここまでやりますと、さすがに小さな声でも周囲にはちゃんと聞こえます。そのようにして声を温存するくらいしか策がありません。
彼の前に置かれているのがスピーカーです。そして、いつも喉の近くにマイクを差しています。彼が小さな声でお経を唱えても檀家さんには問題なく聞こえる仕組みになっています。
女性の同級生は、「そんなん、魚屋さんや」と言います。スーパーの鮮魚コーナーでは、魚屋さんも胸にマイクを差しているそうです。声が周囲の雑音にかき消されがちということもあり、こういうので「へい、いらっしゃい」とか言うそうです。
気泡を封じ込めたシャンパンジュレ
シャンパンのジュレを、女性たちからほめてもらいました。そんなにほめられたら、次はドンペリで作ろかと思うてしまうやないですか。
酒がさほど強くないから乾杯にはソフトドリンクで付き合うという人がいますよね。そういう人たちにも抵抗なくと思いまして、いちばん初めに出しました。酒に弱い人向けの食前酒です。
手順はそんなに込み入っていません。
グラニュー糖を溶かし込んだ熱湯と、氷水でふやかしておいたゼラチンを一緒にして、粗熱がとれた頃を見計らってシャンパンを注ぐだけです。
ただひとつ大切なのは、気泡を封じ込めるためのひと手間です。このコツを教えてくれたのが白亜館という洋菓子屋さんのサイトです。(http://hakuakan.blog134.fc2.com/blog-entry-330.html)
そのコツですが、注ぎ入れたシャンパンがシュワーッと泡立ってきた瞬間を逃すことなく、下の写真のように、ラップで液面を覆ってしまいます。そしてこのまま固めます。このようにしますと、気泡が抜けませんから、食べたときにもシュワっとした食感が残っています。
下の写真が冷蔵庫で固めた状態です。泡がそのまま固まっています。
思いますに、シャンパンの注ぎ方やラップで覆うタイミング次第では、もっと細かい気泡を封じ込めることができるのではないでしょうか。
私独自の工夫で、ドライフルーツのワイン漬けをまず下に敷いてからシャンパンジュレをのせました。
ドライフルーツ数種のサイコロカットがワンパックになっているのをスーパーで買って来まして、白ワインに漬け込んで1時間ほどふやかしておきました。
ワインを吸い込んで柔らかくなったドライフルーツがおいしく変身しましたし、ドライフルーツの甘みがワインに溶け出していますので、それがシャンパンジュレのシロップ代わりにもなってくれました。
タコのカルパッチョ
いきなりローズマリーから食べ始めた奴がいました。見れば指で何かをつまんで口から引きずり出しています。魚の骨でも出しているのかなと思ってましたら、いやいやもっと長い。ズルズルズルズル。
おまえ、何食うてるねん?
いや、おまえらはこれ食わへんのか。
唇から出てきたのは、葉っぱだけなくなったローズマリーの芯でした。
脳出血から退院してきた仲間はタコと呼ばれています。女性たちはタコさんと呼びますがさんづけしたからいいというもんではない、どちらにせよタコと呼んでることに変わりはありません。
ドレッシングがめちゃおいしいと言ってもらえましたが、そのおいしさ、実は富士酢の「すのもの酢」のおかげです。すのもの酢に、オリーブオイル、セロリのみじん切り、ニンニクのすりおろし、塩、醤油を加えて冷蔵庫でひと晩寝かせただけのことです。
生ハムとカマンベールのプチオードブル
手がかからないから楽だと思ってやってみました。結果的に分かったことですが、両者は食べたときの弾力感が似てるんですね、そして塩を用いて旨味を引き出している点も共通です。相性いいことを知りました。
調理の手は何もかからないのですが、真空パックの生ハムを一枚ずつはがすのがけっこう難しいですね。
京都市北白川に「マイケル」というスーパーがあります。北白川といえば金持ち地区です。買い物に来るおばちゃんたちがベンツAクラスを乗り回してます。軽代わりといった感じです。
その地区特性を反映して、高いかわりに珍しくておいしい食材が置いてある店でして、カマンベールも生ハムもそこで買いました。食べてみたら、やっぱおばちゃんたちがAクラスに乗ってるだけのことありますわ。
桂川バジルのカプレーゼ
ペンネとカプレーゼを一緒に食べるとおいしいことを知りました。
ただ、やっぱり、この季節のトマトでやるもんじゃないですね。バジルとモッツアレラチーズのクオリティーに助けてもらった気がします。
桂川沿いの農作物を売る産直市場で元気のいいバジルを見つけたこと、面倒くさがらずに水牛モッツアレラを探したこと。このふたつがよかったと思います。
スモークサーモンとアスパラガスのオリーブオイル和え
何よりもの工夫は、椿の花を切ってきたこと。マンションの階段を下りたところに咲いていたのを、一本だけ、黙って。
前出のマイケルに、デイル入りオリーブオイルでマリネしたスモークサーモンが売っていました。肉厚です。
そのサーモンと茹でたアスパラをボウルに入れて、ガーリック風味のオリーブオイルを垂らしてから素手でグチャグチャと和えました。
海老・アボガド・トマトにレモン&バジルのジュレを添えて
「ハウスのっけてジュレ」のレモン&バジルでやろうと思ってました。ところが、のっけてジュレはえらい人気なんですね。売り切れてます。
しかたありませんので自作です。コンソメとレモン汁とゼラチンを一緒にしまして、さらにレモンの皮のすり下ろし、バジルのみじん切りを入れました。
たいして期待もしていなかったのですが、ひと晩たったら、なんとも複雑な味わいに変わっていました。その複雑さが、どこやらプロめいていました。
実は、クリームチーズと生クリームを練り合わせたのを準備していたのですが、その盛り付けを忘れたまま食卓に出してしまいました。
生産者の顔が見える野菜のサラダ
このサニーレタスを育てたのは、写真に写っている夫妻です。まさに生産者の顔が見えています。顔を見せたいのですが、亭主の上司が上司だけに、武士の情けで顔を隠しておきます。
この夫妻は同級生どうしの結婚です。彼らの家は肥沃な土地に建っていて、農作物が実によく育ちます。試しに金の成る木を植えてみたらどうでしょうか。
春告魚(めばる)のアクアパッツア
魚一尾丸ごとはやっぱり迫力があります。テーブルで蓋をあけた途端、「わあ」という声が広がりました。
草津駅前のA-squareには個人商店の魚屋さんも入っています。そこでメバルの丸ごとを見つけて、即座に買いました。旬ですからねえ。塩焼きか煮付けにしたらどれだけ美味いだろうと思いながら、です。
100℃の水が泡となって湧き上がります。
味は食材が出してくれました。メバル、アサリ、シシリアントマト、オリーブ、ケッパー、ローリエ、タイム。塩すら不要でした。ワインを入れるのを忘れまして、本来の作り方を大きく外れてしまいました。
トマトとオレンジのジュレ
ジュレ完成後の写真を撮り忘れました。この私が写真を忘れるなんて、よほど調理の疲れが出ていたんでしょうねえ。
材料にはJA津軽みらいの「トマとろジュース」を使いました。濃厚・高糖度(8度)がウリ。100%原材料のみです。ピューレ状ですので料理にもってこいのジュースです。京都市内では、北白川のマイケルが常に在庫しています。
マイケルのレジ女性が言うに、「うちの子、このトマトジュースだけは嫌がらんと飲むんです」。
オレンジジュースのほうも、やはりマイケルで買いました。愛媛県か和歌山県か、そういうみかん名産地のみかんジュースでした。紙パックを捨ててしまって、写真もありません。
インターネットで見たレシピ通りに、オレンジ2:トマト1の比率でブレンドしただけですが、材料のおいしさゆえに色も味もきれいなジュレになってくれました。
食べる前にコアントローをかけてみたら、手をかけたような味わいに変わりました。
嶋屋のいちご大福
女性の同級生が持ってきてくれました。特大サイズのいちごが入っています。イチゴの大きさを伝えるためにどう言えばいいのか。玉突きの玉をほうばっているみたいで分かりますでしょうか。口を思い切り大きく開かないと食べられません。
堅田まで行ったんよとその同級生が言うように、このいちご大福は大津市堅田「嶋屋」の名物です。店は堅田高校のグランド近くにあります。小さな和菓子店の大きな大きないちご大福、季節限定だから今春はそろそろおしまいです。
バターたっぷりのチョコレートケーキ
女性の同級生が焼いてきてくれました。彼女の場合、不意の来客に備えて普段から焼いておくくらいですから、すっかりお手のものです。
ところが、上手の手からも水で、今日はバター80gでいいところを間違って120g使ってしまったそうです。「あかんやろ、おいしくないやろ」と焼いた本人は心配していましたが、いつもに比べてチョコレートが少し奥に引っ込んだ印象がある程度で、みんなも「いや、心配いらんで、おいしいで」と喜んでいました。
大津の地酒と和食向きアルザスワイン
創業万治元年(1658年)という大津市の平井酒造醸の地酒を、大僧正が持ってきてくれました。
原料米である滋賀県渡船6号の名前そのままに「渡船」と名付けられています。幻の酒造米であった渡船を、地元酒造会社とJAグリーン近江が復活させたのが平成17年。それ以降、酒米としての優秀さが見直されるに連れて生産も拡大しているそうです。
味については、日本酒好き大僧正の手土産ですから、おいしさを疑う余地はありません。渡船6号を原料にした近江の地酒が数あるなか、大津市平井酒造の銘柄をチョイスしてくれました。純米生原酒・無圧無濾過で、製造年月は25年4月。できたばかりの酒でした。
和食にはリースリングがよく合うことを京丹後市の縄屋で教わりました。マイケルで「Gyotaku」という名前のリースリングを見つけて、60歳の同級生向け薄味イタリアンにちょうどよさそうな予感がしました。
買ってからネットで調べますと、リースリング、ゲヴュルツトラミネール、ミュスカ、ピノ・グリ、ピノ・ブランの5品種のブレンドだと書いてあります。醸造家Marc Mittnachtの奥さんが日本人で、赤坂の寿司屋でシェフを務めていたこともある方だそうです。いわば和食のプロです。奥さんの意見を大いに取り入れたというだけあって、端麗な日本酒のように口当たりが爽やか、それを追いかける香りの広がり方は芳醇な日本酒のようでした。
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