2010-12-04

夜久野(福知山市) 夜久野蕎麦のふるさと


 わきもとで食べた蕎麦がおいしかったから、その産地である夜久野へもう一度行きたくなった。
 夜久野。「やくの」と読む。
 2006年の市町村合併で福知山市の一部になった。福知山市の中心部から国道9号線を西へ25km。兵庫県朝来市に隣接する町だ、いや山村かな。
 なかでも上夜久野は山にすっぽり囲まれている。正午のチャイムが四方の山々に反響する。行政区分がどうあれ、ここの雰囲気は決して福知山市ではない。もっと美しい何かがある。




 私は夜久野の民家が好きだ。民家の間の細い坂道を歩いていると、よく晴れた元旦のようなすがすがしさと、一度どこかで歩いたようななつかしさを感じる。立ち止まったままずっとそこに居続けたくなる。




 農地のなかの道、お婆さんがカートに乗ってこちらへやってくる。

 「すみません、1枚写真、いいですか?」

 どうして写真が撮りたいのかとおばあさんはけげんな顔。

 「景色がきれいです。おばあさんがいるともっときれいですから」

 ニコリとおばあさんは笑った。過ぎ去り小さくなるカートをずっと眺め続けていたら、このあたりでただ1軒の診療所へ入っていった。膝に注射でもしてもらうのだろうか。それとも骨の薬をもらうのだろうか。かすかに目覚めた商売っ気も冬の青空に消えた。


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