夜のわきもと。蕎麦と酒を楽しむグループが奥の座敷に見える |
夜久野の道の駅で食べた新蕎麦。黒かった |
この前、夜久野の道の駅で、十割夜久野地場産の新蕎麦ちゅうのを食べたんやけどな、蕎麦の色がえらい黒いねん。
大将とこの新蕎麦は色がもっと白いし緑色っぽいやんか。
あんなに黒いの、あれでも新蕎麦かなあと思うて・・・新蕎麦でも黒いのがあるの?」
「ありますよ、黒い新蕎麦は。夜久野は色が黒いんです。いや、ラッキーですよ、今夜お越しになったのは。蒜山、北海道、そしてもうひとつ。みっつの産地で新蕎麦を食べ比べていただきましょう」
「もうひとつって、どこ?」
「夜久野ですよ」
「え?夜久野、入ったの?」
「入りましたよ」
なんだか、おさちゅんブログも「美味しんぼ」めいてきたぞ。
とはいえ、いつもこのような美味しんぼ的趣向を楽しめるわけではない。
蕎麦の食べ比べは「昼のコース(1800円)」と「夜のコース(3000円)」のためだけに用意された特典メニューだ。いずれのコースも予約が必要で昼1組、夜1組の限定になっている。1組に限定されるのは、コース用の座敷を相席にできないからだ。
運がいいことに、今夜は「夜のコース」の客がいた。すでに座敷で酒と蕎麦を楽しんでいた。その5~6人のグループ客がいてくれたおかげで、カウンターの私までが新蕎麦食べ比べの機会に恵まれたのだ。
大将は、茹でる前の蕎麦を並べて見せてくれた。写真、左から蒜山産、夜久野産、北海道産だ。
たしかに、真ん中の夜久野産は色が黒い。色の違いは挽き方の違いだという。北海道産と蒜山産は石臼で挽いてある。 夜久野産はローラーで挽いてある。ローラーで挽けば外殻も混じるために黒い蕎麦粉になるのだという。
もうひとつの写真は茹で上がってザルに盛られた状態。茹でたら夜久野産はさらに黒さが目立つ。反面、蒜山産(右)と北海道産(左)は色調がさらに明るくなる。
「つけ汁の前に、まず大根だけで食べてみてください」
大将が、水気をよく絞った大根おろしを出してくれた。
「えらい、うまい。大根うまいな。ちょっと辛いし」
「そうでしょう。大根がうまいでしょう。これは辛味大根なんですけどね、冬場は糖度が13度。ミカンと同じくらい甘くなります」
京田辺の農家から直に買っている辛味大根だそうだ。京都市内鷹峯産の種をベースに交配を重ねてこの味になっているという。
「大根だけやと蕎麦どうしの違いがようわかるわ。夜久野は濃いな。けっこう男っぽいな。蒜山はやさしいな」
「そうですね、夜久野はしっかりしてますね。蒜山はたしかにやさしいです」
北海道は、なにやら当たり前の味で、あまり感想がなかった。
「夜久野、けっこうやるやんか。見直したなあ。道の駅で食べたときは、つけ汁なしやとカルキの臭いがしたよ」
「それは水がわるいんですね」
だし巻定食950円のだし巻。薄味でうまい。皿もいい |
「それは十割かどうかわかりませんね。十割ですとそうツルツルしませんよ」
夜久野の道の駅にある夜久野マルシェでは、夜久野地場産と銘打ち、新蕎麦と銘打ち、十割と銘打つ。客の期待はいやでも高まる。おいしく食べさせれば夜久野の蕎麦の評判が上がる。その努力を怠れば評判が一気に落ちる。
地元の夜久野で夜久野の蕎麦がいまいちだと落胆し、福知山市内のわきもとで夜久野の蕎麦の実力を見直した。
またひとり、カウンターに客が来た。ダブルのスーツ。マフラーをとるひまもなく椅子に座った。
「寒いな。今夜は家で飯を食べることになってるから、ビールだけ。いや、そばがきも食べてみるか。ワサビでそばがき食べてみるか」
「ワサビで召し上がるなら、三重産の蕎麦粉にしましょう」
大将がカウンターにビールを出す。
「お待たせしました。はい、YEBISU」
ちょっと、待てぇ~。なんかできすぎやないか。はい、YEBISUかよ。マジっすか?夜のわきもと、なかなかよろしい。
「大将、また来るわ。今度はコースの予約してまた食べ比べするわ」
「次は4種類になってるかもしれませんよ。茨城産の新蕎麦が入ってきたら」
またまた、大将。商売が上手い。客に来店を促すつなぎの入れ方は二八どころではない。
わきもとを出たら向かいの民家に電飾がともっていた |
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