季節が冬の練習をしている。
今日の宮津は、氷雨が降るし、ときおりひょうがフロントガラスにばちばち当たってくるし、強風が落ち葉を舞い上げるし、陽が差せば海に虹がかかるし、自己コントロールを失った誰かさんのような天候だった。大江山は初冠雪だという。
新製品のセールス・ポイントはいつも空回りするものらしい。会社が想定するほどに特長がすんなりと受け入れられるものではない。仕事が思うようにはかどらない。メールには新製品以外にも困難な要請が入る。どうしたものか。こんなときはおいしいものでも食べて、しばしイライラを置き去りにするのがいい。
ということで、「花の」だ。茶六別館のなかにある和食処。「花のご膳」が3種類あるなかの「菜の花膳」。取材費奮発、3150円。自分へのごほうびとしてちょっと贅沢なランチを食べたと女性なら言いたがるだろう。新製品がイマイチの私は、自分へのおしおきとして素敵なランチを食べちゃいました。
いわずもがなだが、花のはひとりで入るような店ではない。気の合った誰かとやって来て、料理を目で味わい舌でも味わい、よく手入れされた庭にも視線をやりながら、抑え気味の会話で時間を過ごす。そういう雰囲気の店だ。
会話が途切れてもべつに気まずさもないくらいの相手ならよりいい。なにせわさわさした店ではない。静かだ。そんな店に、単身で昼食敢行。1時を回って、他に客はいない。
菜の花膳がやってきたのはいいが、その一角が空っぽだ。天ぷらが入るはずの空きなのだが、天ぷらだけは遅れて持ってきますという。では食べるべき料理が全員集合してから写真にしようと待っていてもなかなか天ぷらが現れない。かたや、鯛のアラ煮は熱いうちに召し上がってくださいと言われてるし、もうあきらめて箸をつけた。
鯛のアラ煮はおいしかった。いっぽう、カニはだめだった。季節だから入ってますくらいのカニで真剣味のないカニだった。あとの料理は、正直、わからない。お龍とかビビアンとか、料理や器についてけっこうそれらしいことを言う相手が必要だった。
それはそれとして、それぞれのテーブルごとに違った花が飾られていることや、料理や食器を際だたせるための小さな心遣いなどは、客を個人としてとらえ、ひとりずつに舌があり目があることを強く意識している点で、やっぱり花のだと思った。新製品を売るのもこれと似たところがある。
カメラを向けてわかったことだが、写り方もいい。色合いがくっきりしている。自分へのおしおきとして、なかなかいいお膳だった。
花のへはこの建物がランドマーク |
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