一度見たら忘れない。国道9号線沿い、この独特の風貌の建物。必ず人の視線をとらえ、そして記憶に残る。
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アクの強そうな店だと思っていた。立川談志みたいなオーナーが居座る店かと思っていた。そいつが文化人気取りかと想像していた。
ところが大間違い。ものごしのやわらかい女性二人が私を迎えてくれた。入った途端に居心地のよさが伝わってきた。夫婦で来たお客さん。それがふた組。なんだかやわらかな空気。
アラスカかカナダ、どこかサーモン釣りで有名な田舎町。釣り師たちの信頼を集める小さな宿。その宿のダイニングに迷い込んだような気もした。
ピアノジャズ曲が流れている。
「ごはん食べたいんですけど」とカウンター内の女性に告げて席に着くと、木製の表紙でできたメニューを持ってきてくれた。
Cafeといいながら食べるメニューが揃っている。ハンバーグ、ピラフ、ドライカレー、パスタ、ピザ。
コーヒーを本格的に淹れるカウンターの裏にクッキング機能のしっかりしたキッチン。ここはそういう店だとわかった。
少し古そうなアップライトピアノが置いてある。毎月第3土曜の夜にはジャズのライブ演奏があるという。
「このピアノ、現役ですよね?ライブやるくらいだから」
「ええ、そうですよ。調律も定期的にしてますよ」
「誰がライブやるんですか?プロの人?」
「いいえ、アマチュアです。だから入場料とかありません。コーヒー飲みに来たらジャズをやってたみたいな感じで」
ライブのある第3土曜だけは夜も商売するが、普段は午後6時で店を閉める。
このピアノ、どんな音がするのかな。小回りがきいて歯切れのいい音かな。誰かが弾いているのを聞いてみたいな。
窓越しの風景は、氷雨が降ったり、かと思えば少し晴れたり。今日のサーモン釣りの服装を決めかねる。そんな天候だ。ガブっとコーヒーカップを空にしてエイッと外に出ようか。
エイっと外に出た瞬間にサーモン釣り師に変身していたらおもしろいだろうなあ。
営業用のトヨタがレンジローバーに変身していたらもう元に戻って欲しくないなあ。
そんな物語、どこかにあったなあ。そうかシンデレラか。
実は、年末に気に食わないことがあって、しんきくさい気分を新年にまで持ち越した。少しうつ状態。自分がここから逃げたがっている。
Good Luck To Myself! 日本語に訳すと、「しっかりせえ、アホ」になる。
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