11月18日、同窓会で伊勢神宮へ行ってきました。
パワースポット巡りの人気ゆえか、若い女性の参拝客が目立ちます。
五十鈴川の流れに指先で触れる女性。絵になっていたのでこっそり撮影しました。
初恋の人は来なかった
郷里の中学校の同窓会を「たつみ会」といいます。
1968年(昭和53年)3月に卒業した者の集まりでして、1952年生まれと1953年の早生まれが同窓会メンバーということになります。
したがって、みんなそろって、来年の3月末までには60歳を迎えます。そこで今年は伊勢神宮へお詣りに行こうと、こういうわけです。
今回の同窓会に初恋の人は不参加でした。
観光バスの集合場所。出発時刻が近づいてきても、初恋の人の姿がない。気になって仕方ないのですが、だからといって、すぐに「○○ちゃんは?欠席?」と尋ねるのもあさましいことですしねえ。10分くらい我慢していました。
けれども、さすがに残り3分を切ったところで幹事に確かめました。
「ああ、義理のお母さんが調子わるいねん。看病、看病で同窓会どころやないぞ」
天気晴朗なれど心は雨降り。そうかあ・・・
会費1万円を捨ててもいい。いや、追加で3万円払ってもいいからドタキャンさせてもらいたいくらいでした。
今回、文章も写真も気合不足なのは、そのせいです。
さて、伊勢神宮。
お詣りという割には、参詣に割り当てられたのはたった1時間でした。その短い時間で戻ってこい、観光バスの出発に遅れるなというのですから、かなり無理があります。
伊勢神宮の敷地は広く、参道は長い。行ったことのある方ならご存知かと思います。
まず、拝殿まで歩いて15分ほどかかります。ところがその拝殿を前にして参詣客が列をなして渋滞しています。1時間という制限時間ですから渋滞の列に加わっている余裕はありません。階段下に立って遠くの神殿に手を合わせ、拝んだつもりになって戻ってくる。これが精一杯でした。
お詣りをしない連中は、土産物店が居並ぶ「おかげ横丁(下の写真)」へ入っていきました。ここは神社と違ってとても狭い。その狭い通りが買い物客でごった返していたそうです。
「1時間では無理や~。人がいっぱいで歩けへぇ~ん」と言いながら戻ってきました。
現役の海女さんが焼いてくれるイセエビやサザエ
昼ごはんは、鳥羽市畦蛸(あだこ)にある「畦蛸かまど」という店、いや店ではなくて”海女小屋”でした。
現役の海女さんと触れ合いながら野趣あふれる炭火焼で磯の魚介を食べようというのです。
海女小屋というのは、海女さんたちが身体を休めるための小屋です。トタンぶきの粗末な小屋です。海女さんたちがそこに集まって冷えた身体を暖めるために火を炊いたそうです。
何人かで火を囲めば話も弾んだでしょうし、その火は調理にも使われたでしょう。海女さんたちの調理法には残酷焼きという名前がついているくらいです。生きたままの魚介類を直火にのせたことからの命名です。
その海女小屋を使っての観光業が鳥羽市で盛んになっています。
海女小屋に一般人を入れて、現役の海女さんたちが接客にあたり、サザエ、アワビ、ハマグリ、カキ、イセエビなどを炭焼きで食べさせる。この飲食サービスは「海女小屋体験」と名付けられています。
テレビで取り上げられてからは以前よりも有名になってきました。
海女さんたちは苦労人です。けれども明るい。この持ち味があってこそ海女小屋体験の観光が成り立ちます。
酔っ払い相手のバカっ話にとことん付き合ってくれるかと思えば、しみじみと身の上話を聞かせてくれたりする。
一説によりますと、海女さんたちは火を囲んでとにかくよくしゃべったそうです。しゃべっていないと冷えた体をごまかすことができないからだと聞きます。そんななかで話術がおのずと達者になっていくということでした。
この日も、会話で私たちを喜ばせながら、手では絶えずサザエやアワビの焼き加減を調節していました。
私の座ったテーブルを受け持ってくれたのは久子さんでした。
聞けば77歳。いまだ現役で海に潜っています。齢をとってからは夏場だけ潜っているそうです。
久子さんが身に着けているのは磯着といわれる潜水用衣装です。いまではウェットスーツが海女さんにも普及しているそうですが、昔はこの磯着に水中メガネで日に何度も海に潜りました。
小屋が魚焼きグリルになってしまう
思わず「おおっ!」と声の上がる食材ぞろいです。
まあ、正直なところ、的矢牡蠣以外、地元のわりにおいしくなかったのですが、久子さんという接客と話術の名手にリードされて、趣向の楽しさが何よりものご馳走です。
でも、これだけの魚介類を、炭火で焼くんですからね。
当然のことながら煙はもくもく、小屋の中はあっという間に魚焼きグリル状態です。
窓を開けないことにはいられません。
服に魚焼きの臭いが染み付いてたいへんでした。
個別の料理は、釜飯、お造り、煮魚、茶碗蒸し、味噌汁、ひじき、そしてデザートです。
「これでひとりあたりの予算はいくら?」と幹事に尋ねたら「6千円にしとこか」と曖昧な返答をしていました。
思い出しました。この男、算数があまり得意ではありませんでした。
ふるさとは遠くにありて思うもの?
初恋の人が来なくて落胆から始まった同窓会でした。
けれども、そのせいだけではなくて、なんだかなあの1日でした。
今回は、郷里を離れてよそ出て行った仲間が来ませんでした。子供時代から還暦を迎えた現在に至るまで、郷里の町で暮らし続けてきた仲間ばかりです。
ここまで年齢を経ますと、そんな彼らとの生活感覚の隔たりはますます大きくなって、入っていけない面が多々ありました。私は二度とあの町には住めませんねえ。
大切にしているものが違いすぎると思いました。
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