2011-07-03

番外編:菓歩菓歩(京丹波町) 毛玉しろみの紹介で

 ただの田舎じゃない。京丹波町の和知を通るたびにそう思います。これを説明し始めると長くなって皆さんに読んでもらえなくなるでしょう。
 さて、今回の菓歩菓歩(capo capo)も和知にあります。山野草や苔の園芸技術を学ぶ施設「山野草の森」の隣に位置しています。菓歩菓歩はお菓子作りの食材にこだわりを見せる自然食派の菓子工房。そのポリシーほかはホームページをご覧ください。


(Bio Sweets capo capohttp://www.capocapo.com/)




DSC06457DSC06459DSC06469DSC06470



 この店はかすみ草さんから紹介されました。かすみ草さんは「子猫を助けて」の記事に登場していただいた女性です。


 世の中には小さな志を実践しながら生きている人がいます。ボランティア活動家だったり、自然保護活動家だったり、おじいさんのくせに髪を後ろで束ねている人だったり。かすみ草さんの人脈はそうした人たちに広がっています。
 菓歩菓歩もそんな人脈のひとつだと思っていましたら、実はかすみ草さん自身は一度も行ったことがないという。それを知ったのは後になってからです。菓歩菓歩とかすみ草さんの間には人脈があると思い込んで店に入りました。

 こんにちわ。知り合いから聞いてきたんですが、この店でいいのかどうかわからなくて・・・毛玉さんという人から聞いてきました。
 はっ?毛玉さんですか?毛玉さんという方からですか? 
 ええ、綾部の毛玉さんという人なんですが、ご存知ではないですか?山野草の森の近くで、ぜひ行ってみてくださいと薦めてもらいまして。この店かなあと思いまして・・・

 毛玉さんというのは、かすみ草さんの苗字です。本名を出してしまいますと個人情報になりますから、毛玉さんにしときます。ま、本名は当たらずとも遠からじです。「毛玉さんですね。ちょっとお待ちください」と、応対に出てくれた女性は事務所に入っていきました。経営者を呼びに行ったのでしょうか。
 待つこと数秒。背の高い女性が事務所から出てきました。ものごしから経営者だとわかります。

 毛玉さん、ですか?毛玉なにさん、下のお名前もおわかりですか? 
 しろみです。毛玉しろみ。綾部の人なんですが・・・
 毛玉しろみさん。綾部の方ですか? 
 綾部でお寺の奥さんなんですよ。 
 お寺の奥さんですか?なんていうお寺でしょう? 
 練乳寺っていうんですけどねえ。 
 綾部の練乳寺の奥さんで毛玉しろみさんですねえ・・・あんた練乳寺ってわかる?わからない。そう。ちょっと待ってください。ちょっと、○○ちゃんを呼んできて。あのこなら綾部の知り合いあるかも、だし。

 経営者とおぼしき女性は、さきほどの女性にそう命じました。命じられた女性がお菓子の工房に入っていきまして、新しい従業員の人を連れてきました。工房用の帽子を脱ぎながら、その女性が私に会釈しました。


 「あの、こちらの方が、綾部の練乳寺の奥さんで毛玉しろみさんっていう方からうちの店を聞いてこられたそうなんだけど、○○ちゃん、どう、知り合いじゃない?」と経営者の女性がことの要点を口早に伝えました。
 質問を受けた従業員は帽子を胸にあてたままで、「さあ・・・?」といった表情です。
 そりゃ、そうでしょう。毛玉しろみさんはこの店に来たことすらない。私の勝手な思い込みのために、いまそこで、三人の女性がしきりに首をかしげて、まだ出会ったこともない毛玉しろみをなんとか思い出そうとしています。しかし、思い出せるわけがない。もともと知らないんだから。


 なにかヒントになることを伝えなければいけないと、私は考えました。

 あ、そうだ。毛玉さんは山登りが大好きなんです。 
 山登りですか?あんた山登り・・・しないよねえ。○○さんは?山登りした?してない?なんか似たことしてなかった? 
 ネコが好きな方っておられませんか?毛玉さんは、ついこのまえ、ネコを助けたんですよ。綾部市民新聞か両丹日日の記事になってたと思いますけど。 
 ネコですか?助けられたんですか、その方が。ネコはねえ、捨てる人がいますからねえ。そのつながりで誰かうちにいたかしら?毛玉さんって、背の高さはどれくらいですか? 
 その黒い服を着ておられる方くらいです。歳は45歳くらいだと思います。綾部、練乳寺の奥さん、山登り大好き。ネコを助けた。どうでしょうねえ? 
 そうですねえ・・・ あんた、ちょっと行って、○○さんに出てきてもらって。

 ということで、ひとりがわからなければ次の人、次の人。新しい従業員の人が次から次へと出てきてくれます。
 いま私の目の前には6人か7人くらいの女性が集まっています。
 みんながなにかをつぶやきつつ、宙をにらんだり、顔を見合わせたりしながら、まだ会ったこともない毛玉しろみについて思い出すきっかけを探ろうとしています。もう一度工房に戻って別の誰かに毛玉しろみを確かめてくれる人もいます。
 新しい人が現れるたびに、毛玉しろみ、綾部、練乳寺の奥さん、山登り大好き、ネコ助けた。私は繰り返しました。
 そのせいで、誰ひとりとして毛玉しろみを知らないのに、「毛玉しろみ、綾部、練乳寺の奥さん、山登り大好き、ネコ助けた」だけは菓歩菓歩の人たちの間に次から次へと広がっていきます。毛玉しろみという人物、いまや菓歩菓歩のなかでは「知られざる有名人」に昇格してしまいました。


 ほら、名前とか何も知らなくても、顔を見たら「あら~、しばらく~」とか、そうい知り合いってあるでしょ。毛玉しろみさんもきっとそれよ。

 そうだ、そうだ、それにちがいないと、みんなが納得するところとなりました。といいますか、そういう風にでもしなければ場がおさまりません。
 綾部に戻ってこの話を毛玉しろみさんに伝えました。毛玉さんは「うわー、恥ずかしィ~」と言っていました。



DSC06449
平飼い地鶏卵のプディング。まさに自然派

DSC06464
味のある木製椅子でくつろげます

DSC06462
毛玉しろみへの土産にはシフォンケーキとタルト

DSC06468
天気さえよければ由良川を見下ろすオープン席で

関連ランキング:カフェ | 和知駅

0 件のコメント:

コメントを投稿