2011-08-16
番外編:鼻をつまんで肉屋に電話
お盆です。滋賀県の実家に帰りました。左から父、母、そして母の妹(私のおばちゃん)です。
滋賀県の嘉田由紀子知事が近江牛の全頭検査を決めました。実施は11月から。「抽出した肉の一部に放射性セシウムが1キロ当たり250ベクレル以上含まれていないかを調べる」というものです。
この3人は揃って心配性です。心配"性"というよりも心配"症"と呼んだほうがい。あんたらを全頭検査したろかというくらいです。
当然のことながら、近江牛の放射能汚染が気にかかってしかたありません。
うちの父母に彦根の「いろは」から牛肉が送られてきました。うちの母はかつて小学校教員でした。その時代の教え子のおひとりが送ってくださいました。
父はすぐ「いろは」に電話しました。
「いろは」さんのお肉は放射能の心配せんでもよろしいやろか?
店は、産地厳選の近江牛であることはもちろん、飼料の稲ワラの生産場所まできちんと確認を怠っていない旨、父に説明しました。
おばちゃんは「岡喜」に電話しました。竜王町に本店を構える創業天保十年の老舗です。
すべて直営の岡喜牧場で育てた牛であり、稲わらに関しても細心の注意を払っている。
店はおばちゃんにそう説明しました。
もう、ほんまによ、いま食べてもなんか出てくるのは30年後やで。そしたらだいたい120歳やんか。このお母さんどこまで生きるつもりやと思うわ。
と、おばちゃんの娘(写真)。
それでも「いろは」や「岡喜」は遠い肉屋さんです。自分が進物に使うか、誰かからもらうか。しょっちゅう買う肉ではありません。
3人がもっとも気にかかりますのは「山村」の肉。近所です。つきあいも長い。何十年間、肉といえば「山村」です。逆に、それだけに尋ねにくい。「あそこの奥さん、うちの肉を心配してはるねん。なんちゅう人や」と言われないか。心配症の3人には、他人からどう思われるかも放射能同様に心配なのです。
とはいえ、なにせ知事が全頭検査を決めたくらいです。おばちゃんは「山村」に確認したくてしたくてしょうがない。
そやさかいに、うち、電話したで。鼻つまんで。鼻つまんで電話したら知らん人やと思わはるやんか。「もしもし、ちょっとセシウムのことをお尋ねしたいんですけど、山村さんとこのお肉は」て、鼻つまんで言うてな、「こちらは一消費者ですが」て言おうと思てたらな、「あ、山中さんですね。毎度おおきに。ちょっと待ってくださいや。いま奥さんにかわりますわ」。うちやてわかってしもうてん。
そりゃわかるでしょう。何十年間のつきあいです。鼻をつまんだくらいで他人になりすませるわけありません。
「うちの肉はなんにも心配してもらわんかて大丈夫」と「山村」の奥さんは答えていたそうです。
しかし、まあ、滋賀県屈指の近江牛の店3軒を相手に、このおじいちゃん、おばあちゃんは・・・
陸前高田の松を大文字に使うなの電話、まさかしてないでしょうね。滋賀県民のくせに。鼻つまんで。
父の昔の浮気を語る母。渋い表情の父。
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