山形県庄内町主催の日本一おいしい米コンテスト。420種の新米が審査対象です。その420種を食べ比べる消費者審査員の数は450名。1人の審査員に5種類の新米が送られてきます。
私のところに送られてきた新米は、169番、198番、216番、293番、330番でした。
まず炊きたてを食べ比べて、次に冷めたご飯の食べ比べをやってみました。
冷めたご飯の比較については、冷まし方をふた通りにしました。
①握ってから冷ます
②タッパウェアに移し替えて冷ます
のふた通りです。
【美人アナと女優】
私たち夫婦が選んだ最優秀米は、216番でした。
しかし、これもですねえ、どれがいちばんかなんて、ほんまに難しかった。どれくらい難しかったかをわかっていただくために、こういう写真を用意しました。各局美人アナに混じって、女優の松嶋奈々子さん。みなさん、このなかでイチバンは?
☆炊きたてご飯の比較:5人とも化粧をして服を着て登場
☆握って冷ましたご飯の比較:5人とも顔と脚を隠している
☆タッパーで冷ましたご飯の比較:5人ともスッピン・水着姿
こういう審査をやれといわれてるみたいなもんです。
ほんま、違いがめちゃ明確だったのは、タッパーで冷ましたご飯のときだけでした。握って冷ましたご飯の比較のときはおいしさの順位を決めかねました。
タッパーで冷ましたご飯は、実家にも持っていきました。うちの母親、母親の妹の美代子おばちゃん、美代子おばちゃんの娘で宏美、宏美の娘で高校二年生のトモちゃん。この4人にも食べ比べてもらいました。ここに私たち夫婦も加わり、6人で審査です。
216番が頭抜けている。明らかにおいしい。食卓を囲んだ6人中5人までがこの見解で一致しました。
ただひとり、高校二年生のトモちゃんのみ、「私だけおかずがビフカツやから、違いがわからへん」と言いました。
【審査員のしあわせ】
いま、上の5人の美女たちからイチバンを決めろっていわれるだけでも、みなさんけっこう楽しい気持ちじゃないでしょうか。
日本一おいしい米コンテストの消費者審査員というのも、実にそんな感じでして、おいしさに順番をつけるのは難しいけれど、でも楽しいし、おもしろいし、なんといえばいいのか、しあわせになれる作業でした。
審査対象の新米5種を、いつも以上によく噛みしめて、よく味わって食べました。ここまで丁寧に米を食べたことはない。
で、よく噛みしめよく味わうほど、おいしいものをいただいているという満足感や幸福感に満たされていきます。本来の目的であったはずの審査が段々どうでもよくなっていきます。生産農家へのありがとうの気持ちがおのずと生まれてきます。
お米を大切にしろって教わってきたじゃない。私、これから本当に大切にしようという気持ちになったわ。ひと粒、ひと粒、大切にしなくちゃって思うよねえ。
お龍がそう言いました。
「おいしさ」という言葉しか日本語にはないから不便です。そのあたりなんとかならんのかいと呻吟した末に行き着いたのが、「世界にひとつだけの花」でした。「ナンバーワンにならなくてもいい、もともと特別なオンリーワン」という歌ですね。
5種類の米の食べ比べを通じて私たち夫婦が出会ったのは、5種類のOnly one flowerでした。216番がいちばんおいしいと思いましたが、216番だけを食べてもここまでの満足感・幸福感はなかったと思います。この幸福感・満足感は、それぞれのOnly one flowerが口の中で花開いたからこそではないのか。そう思えてなりません。
いろいろなお米があるからいいんだーーー日本一おいしい米コンテストが教えてくれたのは、意外にもコンテストらしからぬ事実でした。
【消費者審査員の感想がこのコンテストの命】
日本一おいしい米コンテストは、真の競技会だとは決していえません。食べ比べを実施する際の条件に統一性がなく、あなた任せだからです。
株式会社アスクのサイトには、食味官能評価の精度を上げるための留意点が書かれていました。(http://www.okomeno-tawaragura-ask.jp/index.html)
官能検査による評価:
炊飯米を試料として、10~24名の試験者(パネラー)が、総合・外観・香り・味・硬さ・粘りの項目について基準米との比較で評点をつけます。その結果を集計・統計処理することで、試料の食味、試料間の差異を評価します。
炊飯米を試料として、10~24名の試験者(パネラー)が、総合・外観・香り・味・硬さ・粘りの項目について基準米との比較で評点をつけます。その結果を集計・統計処理することで、試料の食味、試料間の差異を評価します。
ご飯の美味しさ、まずさは実際に食べて評価することから、官能検査法が食味評価のもっとも基準的な方法といえます。反面、600g程度の試料量と20名程度のパネラーを必要とし労力と時間がかかること、パネラーの嗜好や地域などで結果が変動しやすいいなど問題があります。
このため、官能検査では、精米や洗米などの前処理条件、加水量や浸漬時間、炊飯器やむらしの条件、パネラーの選定(年齢・性別)、試食環境、試食順序などに留意して、できるだけ再現性の高い、科学的な試験を行うことが大切です。
このため、官能検査では、精米や洗米などの前処理条件、加水量や浸漬時間、炊飯器やむらしの条件、パネラーの選定(年齢・性別)、試食環境、試食順序などに留意して、できるだけ再現性の高い、科学的な試験を行うことが大切です。
たとえば、私の姉夫妻は、送られてきた新米5種を毎日1種類ずつ炊いて夕飯で食べました。私の会社の事務員さん宅では、審査結果提出日直前でもまだ食べ比べを終えていませんでした。
私の周囲だけでも食べ比べの中味がこんなにバラつくのですから、450人の消費者審査員の間ではもっとバラつきます。炊き方も食べ方も熱意もばらばらです。審査結果といえば聞こえがよくてもっともらしいけど、内実は450通りの我流条件に基づく印象表現以上のものではありません。
そのような審査過程ながらも、決勝大会に進む30種の米が抽出されます。決勝大会でどんなに厳正な審査が行われようが、その前段階の審査過程が厳正ではありません。最優秀米といえども、コンテスト行事を終えんがための便宜的最優秀米にすぎないとそしられるリスクを負っています。
それならば、日本一おいしい米コンテストの価値はなにもないのか?私はそうは思いません。
審査員になって新米を食べ比べるというノリ、いちばんおいしい米を決めるというノリ。こういうノリを推進力にもつイベントでなければ生み出しえないメリットがいくつもあると思うからです。
そのなかでも、いずれの生産者にとっても共通の直接的メリットだと思えるのは、審査結果記入用紙を介した生産者と消費者の交流です。
私たち消費者審査員は、食べた感想を審査結果記入用紙に書き込みます。それが出品者の生産農家にフィードバックされます。
炊き方もばらばら、副菜のおかずもばらばら、年齢も性別も地域もばらばらの素人が書き込む好き勝手な感想ですが、食卓からのありのままの声が生産者に届きます。流行の言葉で言うなら、見える化。消費者の気持ちの見える化です。
私たち医薬品業界でもそうです。お医者さんや薬剤師さんや患者さんの生の評価を知らなくては、その薬のほんとうの長所・短所を知ることができません。現場の声が本当に役立ちます。
現場の声に触れる価値は米の生産農家の場合も大きく変わらないだろうと思うのです。
このコンテストの主催者である庄内町は、もっと積極的な感想記入を消費者審査委員に求めています。「感想が少なくて淋しい」という出品者側からの指摘があるからだそうです。
消費者審査員は庄内町からの呼びかけに応えるべきですし、庄内町自身も感想の収集にもっと気合を入れて取り組むべきだと、私は思います。消費者審査員の感想がこのコンテストの命だといっても過言ではないからです。
こんな役立たずのコンテストを相手にしていられるか。そんな思いから生産者の出品動機が萎えていってはよくありません。尻すぼみ状態をいまから防ぐためにも、審査結果用紙を介した生産農家と消費者審査員の交流を貧相化させてはならないと思います。
【第1回から第4回の結果】
今年で第5回目を迎えたこのコンテストですが、第1回から第4回の上位入賞米は以下のようになっています(庄内町提供Komekon.pdfから抜粋・作表。このpdfファイルwww.town.shonai.lg.jp/ct/other000008200/komekon.pdfはすでに削除されて閲覧できません)。
上位入賞を果たしている米の値段をみますと、5kgで3000円台~8000円とさまざまです。ちなみに、何度も上位に進出している岐阜県の「いのちの壱」ですと、5000円くらいです。
ただ、今回、まじめにお米を食べ比べてみて、おいしいというだけで値段が高くなる必然性はどこにもないという気がしました。これは、理屈抜きの実感、裸の実感です。
第1回 | |||
最優秀賞 | 岐阜 | 小林 達樹 | いのちの壱 |
優秀賞 | 神奈川 | 金子 正昭 | ミルキークイーン |
新潟 | 斉藤 潔 | コシヒカリBL | |
新潟 | 中村 寛美 | ミルキークイーン | |
優良賞 | 山形 | 坂野 雄一 | コシヒカリ |
広島 | 沼田 辰雄 | コシヒカリ | |
第2回 | |||
最優秀賞 | 岐阜 | 和仁 一博 | いのちの壱 |
優秀賞 | 北海道 | 黒川 利光 | おぼろづき |
山形 | 佐藤 良平 | ミルキークイーン | |
優良賞 | 岐阜 | 小林 達樹 | いのちの壱 |
長野 | 細井 正博 | コシヒカリ | |
兵庫 | 山田 俊行 | ヒノヒカリ | |
第3回 | |||
最優秀賞 | 宮城 | 遊佐 守 | ゆきむすび |
優秀賞 | 静岡 | 鈴木 勝 | いのちの壱 |
宮城 | 齊藤 武康 | たきたて | |
優良賞 | 山形 | 坂野 雄一 | コシヒカリ |
高知 | 下元 利文 | にこまる | |
新潟 | 久保 豊範 | いのちの壱 | |
第4回 | |||
最優秀賞 | 岐阜 | 小林 達樹 | いのちの壱 |
優秀賞 | 岐阜 | 今井 登志雄 | いのちの壱 |
岐阜 | 吉岡 博明 | いのちの壱 | |
優良賞 | 茨城 | 渡邉 榮 | ミルキークイーン |
高知 | 嶋岡 克年 | にこまる | |
岐阜 | 曽我 康弘 | いのちの壱 |
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日本一おいしい米コンテスト過去の入賞米
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