黄も赤も見事ですが、この家の主は不在です。
丹波・丹後の山間部では、主なき紅葉、主なき柿の実が散見されます。
京丹波和知インターから綾部安国寺インターまでの高速道路は、高い橋桁と高い橋桁を結びつつ、空中を通っています。”If I were a bird, I could fly”なんて気持ちになった日は、この高速道路を走ってみてください。
その高速道路の高さから、鳥の目の高さから、山村の美しい秋景色。どうしても誘惑に勝てません。いま見えるあの景色のもっと近くに行ってみたい。
高速道路から眺めた場所へたどり着くのは、思ったよりも難しいものです。地元の方に景色を説明して行き方を教わろうとしましても、地元の方は高速道路をあまり走りません。高速道路から見える景色を知っているのはよそ者です。
高速道路の向こう側へ行くことのできる道は3本しかないとだけ教わって、その3本すべてを走ってみました。その1本で、いつも気になっていたこの景色を目の当たりにすることができました。
黄と赤のコンビネーションが際立つこの家の主は遠い町に移り住んでしまったとのことでした。定期的に戻っていると近所の方から聞きましたが、この美しいイチョウとモミジを見ている回数は、おそらく私のほうが多いでしょう。
この集落は、さほど奥深くありません。Uターンの余裕すらない行き止まりで、このような古い空き家に出会いました。
友達がよひょうを演じた「夕鶴」の舞台セットを思い出しました。
つうはええのう、なんべんも都さ行けて。
置き去りにされた耕運機が雄弁です。主不在の年月を錆に換えています。
この空き家のすぐそばで、隠れた紅葉を見つけました。
紅葉、紅葉と、物見遊山は私ばかりです。紅葉が美しい中山間地ほど紅葉に心惹かれてはいられない。「限界集落」という用語は、たしかここ綾部が発祥ではなかったでしょうか。
秋の数だけ主なき紅葉が生まれそうです。
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